転生悪役令嬢おじさん、国外を巻き込んで健康ブームを輸出する件
国際健康診断サミット――それは歴史に残る前代未聞の会議だった。
血圧、血糖、握力、シャトルラン……
参加した各国代表が一斉に数値を公開し、真顔で健康を語るという地獄絵図。
……その翌日。
王都に駐在する各国の使者たちが、帰国の途についた。
だが彼らの手には外交文書よりも――“健康診断結果表”がしっかりと握られていた。
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数日後、隣国アルデン王国にて。
「第一回・国民健康測定の日」を宣言!
王宮前の広場に血圧計が並び、国王みずから袖をまくって計測する姿が民衆に大受け。
さらに東方の交易都市では、街角に「低GIスイーツ専門店」が乱立。
「悪役令嬢おじさんティラミス」なる怪しい菓子まで出回り、大行列を作っていた。
世界規模で健康ブームが爆発していた。
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一方その頃、ルクセン王国。
王子は執務室で机を叩きつけ、怒りに震えていた。
「ふざけるな……! なぜ外交が健康ごときに支配されねばならんのだ!」
リリアーナが必死に慰める。
「殿下……でも事実、皆健康派に心酔していますわ。
このままでは社交界も、国政までも……」
「ならば魔法で証明する! 健康など迷信、魔力こそが至高であると!」
王子の瞳に不穏な光が宿る。
――彼が動き出す時、健康派と伝統派の最終対決が待っていた。
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その頃、俺は……
「よし、今日も血圧正常。朝飯はオートミールパンケーキ」
のんきに食卓でタンパク質を数えていた。
セバスが眉間に皺を寄せる。
「お嬢様……どうやら王子殿下が“魔力で健康を否定する集会”を開くらしいのです」
「……また面倒な」
俺はパンケーキを頬張りながら、ため息をついた。
「まあいい。ならば次は――“魔法 vs 健康科学”公開討論会ですわ!」
おーっほっほっほっ!!
国外での健康革命は留まるところを知らなかった。
北方の戦士国家では――
「剣を持つ前に血圧を測れ!」
「握力50kg未満は前線に出るな!」
軍隊そのものが数値基準で再編され始める。
南の砂漠商国では――
「水分補給タイムは義務」
「隊商の契約には“休憩とストレッチ”条項を追加せよ」
砂漠を渡るキャラバンが、なぜか健康教室と化していた。
東の魔導学院では――
「火球術の前に糖質制限」
「魔力回復ポーションよりBCAAサプリ」
研究者たちが次々と“栄養学派”へ鞍替えしていく。
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ルクセン王国の社交界。
婦人たちが集まるお茶会では、もはやスイーツが消え、代わりに――
「本日はアーモンドとギリシャヨーグルトを」
「私、最近オートミールにハマってまして」
健康情報交換会と化していた。
リリアーナは真っ青になりながら立ち上がる。
「ど、どうしてですの!? 甘味の社交界が……健康道場に……!」
王子は机を叩いて叫んだ。
「もう我慢ならん! 魔力こそ真理! 健康など凡俗の妄想だ!!」
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こうして王子は、自ら「大魔力公開集会」を開催すると宣言した。
「我が魔力で証明する! 健康など無意味! 人は魔力でこそ生きるのだ!」
集会当日――
広場には王子を支持する伝統派と、健康派の両陣営が大集合。
まさに「魔法 vs 健康科学」の全面対決の幕開けだった。
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俺は壇上に立ち、ドレスの裾を翻して高笑いした。
「おーっほっほ! 今日こそ決着をつけましょう!
――魔力が未来を導くのか、数値が真実を示すのか!」
観衆「おぉぉぉぉぉ!!!」
王子は宝剣を掲げ、凛とした声で叫ぶ。
「さあ、示せ! 婚約破棄令嬢よ! 健康で何が証明できる!!」
俺はゆっくりと血圧計を取り出した。
「まずは落ち着いて――数値を測るところから、ですわ」
観衆「ぎゃはははは!!!」
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……いやだから婚約破棄どこいったんだよ。
王都広場。
壇上の両端に並ぶ二つの旗――片や「魔力至上」の紋章、片や「健康第一」のバナー。
観衆はざわめき、完全に紅白歌合戦みたいなノリになっていた。
「殿下ー! 魔力を信じますわー!」
「悪役令嬢おじさん万歳ーー!」
民衆まで真っ二つに割れている。
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王子が高らかに宣言する。
「まずは魔力で証明しよう! 我が炎は千年の歴史を継ぐ――!」
バシュッ!
巨大な火球が空に舞い上がり、光り輝く。
観衆「おぉぉぉぉぉっ!!」
「これこそ伝統の力! 健康など不要! 魔力があればすべてを制せるのだ!」
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俺は鼻で笑ってみせる。
「ふん。派手なだけですわね。――ならばこちらも実演で証明しましょう」
ドレスの裾をたくし上げ、取り出したのは……なんと健康診断フルセット。
血圧計、心拍計、さらには体組成計まで。
「皆さま、健康なくして魔力の維持もできません。
今ここで“魔法 vs 健康数値”勝負をいたしますわ!」
観衆「ぎゃはははは!!!」
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ルールは単純。
王子は魔法で“派手な技”を披露し、俺は数値で“現実的な健康証明”をする。
どちらがより民衆を納得させるか――それが勝負だ。
第一戦。
王子 → 炎の剣を創造!
俺 → 血圧120/78の理想値を見せてドヤ顔。
観衆 → 「健康だぁぁぁ!!」
第二戦。
王子 → 空に雷を落とす。
俺 → シャトルラン連続100本。
観衆 → 「持久力やべぇぇぇ!!」
第三戦。
王子 → 光の壁を張る。
俺 → 血糖値をベジファーストで安定させる。
観衆 → 「生活習慣こそ至高!!!」
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リリアーナが泣き叫ぶ。
「殿下ぁぁ!! もっと甘味を! 砂糖を見せるのですわ!」
しかし婦人たちはすでにオートミールを掲げていた。
「こっちのほうが低GI!」
「王子様のスイーツ、血糖値が爆上がりですわぁぁぁ!!」
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王子はついに膝をつき、震える声で呟いた。
「なぜだ……なぜ魔力が……健康に負けるのだ……」
俺はゆっくりと歩み寄り、ドレスの裾を翻しながら高笑いした。
「おーっほっほ! 殿下、健康を侮った時点で勝負は決していましたわ!」
観衆「悪役令嬢おじさん万歳ーー!!」
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今日の勝負は「派手な魔法 vs 地味だけど確実な健康習慣」でしたわ!
というわけで、あとがきは“魔力を使わなくてもできる健康Tips”をいくつかご紹介。
食後の血糖値スパイクを防ぐ方法
•食事の最初に野菜やタンパク質を摂る(ベジファースト)
•炭水化物は後回しにすると、血糖値の上昇がなだらかに。
•食後10〜15分の軽い散歩も効果アリ。
睡眠とホルモン
•睡眠不足は食欲ホルモン(グレリン)が増えて、太りやすくなる。
•7時間前後を目安に、寝る直前のスマホ・カフェインは控える。
ストレス管理
•深呼吸や軽い運動で副交感神経を優位に。
•「魔法」より「呼吸」のほうが即効で体を落ち着けることもある。
運動のコツ
•いきなり高強度じゃなくてOK。
•1日15分のウォーキングでも心疾患リスクが下がるという研究も。
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魔法はド派手でも、体を守るのはやっぱり日々の習慣。
……というわけで皆さま、今日から「健康こそ最強のバフ!」ですわ!
おーっほっほっほっ!!




