転生悪役令嬢おじさん、社交界お茶会を健康討論会に変える件
王都の中央広場に面した大広間――
そこでは社交界最大の催し、季節のお茶会が開かれていた。
豪奢なテーブルには色とりどりのケーキ、砂糖漬けの果実、煌めくシャンパン。
貴族の婦人や令嬢たちが優雅に扇を揺らしながら集い、笑みを交わす。
……だが今日だけは違った。
「伝統派」VS「健康派」――。
お茶会はすでに、対立の舞台へと変貌していた。
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「ふふ……本日のお茶会、殿下とわたくしが仕切らせていただきますわ」
リリアーナ=ベルトラム。新ヒロインが笑みを浮かべ、テーブルの中央に立った。
王子が横に並び、声を張り上げる。
「皆の者! 本日のケーキは最高の砂糖とバターを使った逸品!
これこそ王国の伝統、甘美なる高貴さの象徴である!」
歓声と拍手が湧く。
銀の皿に乗ったケーキは一口で倒れそうなほど甘く、脂肪分たっぷり。
「ほら見なさい悪役令嬢。これが真の淑女と王族の嗜みですわ!」
リリアーナが勝ち誇ったように笑った。
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俺はゆっくりと立ち上がり、腕を組む。
「……そのケーキ、一切れで糖質70gはあるな」
「な、何ですって?」
「つまり血糖値スパイク直行便。午後は全員眠くなるぞ」
会場がざわめいた。
「血糖値……?」
「そういえば最近眠気が……」
「砂糖ってそんなに……」
王子は慌てて声を上げる。
「馬鹿な! 糖分こそ活力の源!」
「それは“短期的”だ。長期的には血管にダメージ、インスリン過剰分泌。
――つまり“ドレスが入らなくなる未来”が待っている」
婦人たちが一斉に青ざめ、互いに顔を見合わせた。
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リリアーナが必死に声を張る。
「で、ですが! 甘味なくしてお茶会など……!」
「なら俺が提案しよう」
俺は袖から取り出したのは、謎のタッパー。
「本日ご用意したのは――高タンパク・低GI・低脂肪スイーツだ」
蓋を開けると、見た目は普通のティラミス。
だが材料はギリシャヨーグルト、オートミール粉、カカオパウダーに人工甘味料少々。
「えっ……見た目は普通のケーキ……」
「けど香りがすごく上品……!」
「カロリーは?」
「1切れで約150kcal、タンパク質12g」
会場が揺れた。
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「ば、馬鹿な! そんなものが美味しいわけが……!」
王子が鼻で笑い、一口。
……次の瞬間、固まった。
「……こ、これは……!」
リリアーナが慌ててかじる。
「お、美味しい!? でも……罪悪感がない……!?」
貴族婦人たちが次々と群がり、奪い合うように食べ始める。
「お腹に重くないわ!」
「午後の裁縫もはかどりそう!」
「健康的で淑女的ですわ!」
もはやお茶会はパニック状態。
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セバスが耳元にささやく。
「お嬢様、“おじさん”口調になっております。“ですわ”をお忘れなく」
「……あ、そうだったな。
――おーっほっほ! このわたくしが提案するのは、健康こそ最上の美ですわ!」
会場「おぉぉぉぉぉっ!!」
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気づけばお茶会は完全に「健康派公開討論会」と化していた。
婦人たちは次々と伝統派を見限り、健康派の輪に加わっていく。
王子は震える声で叫んだ。
「なぜだ! なぜいつもお前ばかり……!」
リリアーナは涙目で王子に寄り添う。
「で、殿下ぁぁ! わたくしがいますわ……!」
だがその姿に目を向ける者は、もう誰一人いなかった。
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こうして社交界は――
伝統の甘味を捨て去り、健康スイーツの虜となった。
「見なさい、これが“健康派”の力ですわ!」
俺はティラミスもどきを高らかに掲げた。
会場の奥で、伝統派の老侯爵が立ち上がる。
「戯言だ! 貴族とは血統と伝統を守る者!
砂糖とバターこそ王家の象徴! 健康など平民の妄言にすぎん!」
その声に、一部の貴族たちが頷く。
「そうだ、甘味こそ贅沢!」
「苦労なく育つのが貴族だ!」
場の空気が一瞬揺れ戻る――だが俺は静かに一歩前へ出た。
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「……老侯爵、あなた糖尿予備軍ですわね?」
「な、なにぃ!?」
会場「ざわぁぁっ!!」
「最近、宴会のあとに夜中トイレ行く回数が増えてませんか?
視界がかすむこともあるでしょう。
――それ、血糖値スパイクの典型的な兆候ですわ」
老侯爵は口をパクパクさせ、真っ青に。
周囲の夫人たちが一斉に扇を口元に当てた。
「まあ……!」「本当なら恐ろしいわ……!」
「ま、待て! 証拠はあるのか!」
「ここにありますわ」
俺は懐から――血糖値測定器を取り出した。
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「さあ、測りましょう」
「や、やめ――!」
パチン。数値が浮かぶ。
……結果、明らかに基準値超え。
「侯爵閣下、これは見過ごせませんわね」
「ぐ、ぐぬぬ……」
一瞬にして、伝統派の大黒柱が沈黙した。
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王子は必死に声を張る。
「やめろ! 健康など枝葉末節だ! 王家の威信は魔力にある!」
「魔力? ならお茶会で証明してみせろ」
俺はテーブルを指差した。
「魔力でこの紅茶を温めてみろ。正しい温度は80度前後。
――だが熱しすぎればポリフェノールが壊れる」
「な、なんだその細かい数値は!」
「おーっほっほ! 魔力より数値こそ正義ですわ!」
会場大爆笑。
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セバスが横で小声で添える。
「お嬢様、“ですわ”を忘れず……いや今回は完璧です」
「当然ですわ! ――数値で見ろ、それが淑女の務めですわ!」
婦人たちが総立ちになり、拍手が鳴り止まない。
「健康派万歳!」
「もう甘味は控えるわ!」
「次はぜひレシピを教えて!」
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王子は顔を真っ赤にし、テーブルを叩く。
「ふざけるな! これはお茶会だぞ! 議会ではない!」
「いいえ、これは“公開討論会”ですわ」
俺は胸を張り、宣言した。
「ここにいる全ての貴族が――健康か不健康か、未来を決めるのです!」
⸻
こうして王都最大のお茶会は、
「伝統 vs 健康」の白熱討論の場と化した。
甘味より血糖値。
魔力より栄養バランス。
社交界の秩序は音を立てて崩れていった。
……いやだから婚約破棄どこいったんだよ。
本日のお茶会公開討論会、ご覧いただきありがとうございました!
……さて恒例の“健康タイム”ですわ!
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•学園設定編
本日の体力測定:UA→走力、PV→持久力、ブクマ→心肺機能。皆様の応援が、健康派を勝利に導きます!
おーっほっほ! 健康第一! 数値で見ろ! ですわ!!