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転生悪役令嬢おじさん、学園を体力測定地獄に変える件

学園中庭。

そこには見慣れた剣や魔法の的ではなく――メジャー、握力計、踏み台昇降台がずらりと並んでいた。


開始の直前、俺の後ろから控えめに声がした。

「お嬢さま……いえ、“おじさま”? この場では令嬢としての体裁も大切かと」


「は? 体裁?」


「悪役令嬢なのですから、令嬢らしい口調を混ぜた方が、より説得力と“キャラ”が立ちますわ。おじさん丸出しでは台無しです」


「……マジかよ。まぁ、確かに“おっさん節”だけだと場が締まらねぇな」


「ですので――“おーっほっほ”と笑いながら健康指導をなさるのがよろしいかと」


「いやそれ完全にネタ枠だろ……。……ま、いっか。乗ってやるよ」



「ふふ……今日から始まるのは、わたくし主催の――体力測定ですわ!」

俺は胸を張り、令嬢らしく高笑いした。

「おーっほっほ! 覚悟なさい、生徒諸君!」


生徒たち「なんで悪役令嬢が握力計持ってんの!?」



まずは握力測定。

王子が木剣を構えるように握力計をガシッと握った。


「見ろ! 王族の威厳を示す数値は――」


ピッ。


「……28kg」


沈黙。


生徒たち「…………え?」

「俺のほうが強いぞ」「いや私でも30ある」


「や、やめろ! 比べるな!!」

王子は顔を真っ赤にした。


俺はニヤリと笑って宣告する。

「28kg? 残念、平民平均以下ですわね。王族の権威も血管と共に弱々しいですわ!」


生徒たち「ギャハハハハ!!」



次は立位体前屈。

新ヒロインがスカートを気にしつつ、恐る恐る前屈する。


「わ、わたくしは淑女ですので、こういうことは……」


ピッ。


「……マイナス3cm」


生徒「床に届いてない!!」


俺は腕を組んで高笑いした。

「おーっほっほ! 新ヒロイン様、背伸びどころか屈伸もできませんのね! 婚約破棄より深刻な柔軟性不足ですわ!」


新ヒロイン「ぐぬぬぬぬ……!」



極めつけはシャトルラン。

生徒たちが次々にバテていく中、俺は令嬢ドレスを翻しながら軽やかに走った。


「はぁ……はぁ……悪役令嬢が……全然止まらない……!」

「ドレスであの持久力!? 化け物か!?」


観客「悪役令嬢おじさん万歳ーー!!」



王子は膝をつき、悔しそうに叫んだ。

「なぜだ……! なぜ婚約破棄されたお前ばかり……!」


俺は白いハンカチで汗を拭き、冷ややかに言い放つ。

「王子。血統も剣術も無意味ですわ。学園を制するのは――体力数値ですの!」


生徒たち「おぉぉぉぉぉ!!」


こうして学園は、剣でも魔法でもなく、握力とシャトルランの点数で序列が決まる世界へと突入したのだった。


……いやだから、婚約破棄どこいったんだよ。


午後のプログラム。

俺はさらにホイッスルを吹き鳴らした。


「はい次! 反復横跳びだぁぁ!!」


生徒たち「えぇぇぇ!? まだやるの!?」



王子が必死に横に飛ぶ。

だが靴音はドタドタと重く、リズムも崩れていた。


「21、22、23……あー、終了! 王子、35回!」


生徒「普通すぎる……」

「むしろ俺の方が速い」


「や、やめろ! 比べるなぁぁ!!」

王子はまた顔を真っ赤にした。


俺は冷ややかに言い放つ。

「35回? 残念、王族の敏捷性は平民並みですわね」



新ヒロインが震える声を上げた。

「わ、わたくしは女性ですので免除を……」


「許しませんわ! 淑女の嗜みは“柔軟性”!」

俺は華麗に指を伸ばして見せた。


「さあ、長座体前屈だ!」


彼女は涙目で前屈する。

「い、痛いですのぉぉぉ!」


結果:マイナス5cm。


観客「ぎゃはははは!!」

「悪役令嬢おじさんの公開処刑タイムだぁぁ!」



最後はシャトルランの延長戦。

「残った者、全員で勝負しろ!」


生徒たち「もう足が動かねぇぇぇ!!」

「やめてくれ悪役令嬢先生ぇぇぇ!!」


それでも俺はホイッスルを鳴らし続ける。

「立て! 走れ! お前らの心肺機能はまだ限界じゃない!」


生徒「うわああああ!!」

完全に地獄絵図だった。



学院長が青ざめてやってくる。

「や、やめるのだ! 学園が倒れるぅぅ!!」


だが俺は胸を張り、高笑いした。

「おーっほっほ! これぞ健康第一の地獄測定! わたくしの美学に従いなさい!」


観客「悪役令嬢おじさん万歳ーー!!」


こうして学園は――

剣術でも魔法でもなく、握力とシャトルランに怯える日々を送ることとなった。


……いやだから、婚約破棄どこいったんだよ。

今回は「体力測定地獄」だったので、現実の 体力測定の項目と意味 を真面目にまとめてみます。

(……いや婚約破棄どこいった)



握力測定

•意味:全身の筋力を反映する「基礎指標」。特に加齢で低下しやすい。

•測り方:握力計を体側にぶら下げ、腕を伸ばしたまま全力で握る。

•目安:

 ・成人男性:40kg前後が平均

 ・成人女性:27kg前後が平均

低すぎるとサルコペニア(筋肉減少症)のリスクに。



立位体前屈

•意味:柔軟性の指標。腰痛や姿勢不良のリスクチェックにも。

•測り方:台に乗り、両手を伸ばして前屈。指先がどこまで届くか測る。

•目安:

 ・指先が台より+5cm以上 → 柔軟性あり

 ・マイナス → 硬い(要ストレッチ)

柔軟性が低いとケガしやすくなる。



シャトルラン(20m往復走)

•意味:心肺持久力の測定。最大酸素摂取量(VO₂max)の推定に使える。

•測り方:20mを往復、音に合わせて走り続ける。音が速くなり、限界まで走る。

•目安:

 ・高校男子:80回前後

 ・高校女子:50回前後

運動不足だと20回くらいで死亡フラグ。



その他おすすめ項目

•反復横跳び:敏捷性

•垂直跳び:瞬発力

•長座体前屈:腰背部柔軟性



まとめ

•握力 → 「全身の基礎パワー」

•前屈 → 「ケガ予防」

•シャトルラン → 「心肺持久力」


つまり王子が28kgで平民女子に負けるのは、理屈的にもあり得る話です。

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