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転生悪役令嬢おじさん、学園を健康診断週間に変える件

武闘大会の翌朝。

学園の廊下には呻き声が響いていた。


「いってぇぇぇ……!」

「階段が地獄……!」

「昨日は床引きすぎた……!」


生徒たちは一様に足を引きずり、まるでゾンビの群れのように歩いていた。

そう、全員が**筋肉痛(DOMS)**で動けなくなっていたのだ。



そこへ登場したのが俺――悪役令嬢おじさんである。

「おいお前ら、ストレッチはしたのか?」


「す、ストレッチ……?」

「すぐ寝た……」


「バカヤロウ! 筋肉痛は戦いの勲章じゃねぇ、炎症だ! アイシングしろ! 水分とれ! タンパク質補給だ!!」


「えぇぇぇぇぇ!?」



俺は教室を占拠し、勝手に机を並べて保健室化した。

「はい、順番に血圧測るぞー!」


「け、血圧……?」

「俺まだ10代だぞ!?」


「甘ぇな。若くても油断したらアウトだ。上が140超えてたら要注意だぞ!」


袖まくりした生徒の腕に布を巻きつけ、俺はなぜか自作の血圧計を取り出した。


「じゃあ次は脈だ。10秒間脈を測って×6倍、60〜100なら正常範囲だな。安静時が120超えてたらオーバートレーニングだから休め!」


「どこの保健の先生だよ!?」



新ヒロインが悲鳴を上げる。

「ま、待ってください! ここは学園ですのよ!? 剣術や魔法を学ぶ場なのですわ!」


「剣も魔法も体が資本だ! お前は自分の基礎代謝量を把握してんのか?」


「き、基礎……代謝……?」


「BMRだよBMR! まずは一日の消費カロリーを知れ! 話はそれからだ!」


「意味がわかりませんのぉぉぉ!!」



王子までやってきて叫んだ。

「やめろぉぉぉ! なぜ学園が健康診断会場になっているんだ!!」


「現実を見ろ王子。お前も血圧測れ」


「ぐっ……や、やめろ! 俺は健康だ!」


「じゃあ計るのが一番早いだろ。逃げるのか? 血圧から」


「血圧から逃げるなぁぁぁ!!」



こうして学園は一週間にわたり、

血圧測定、脈拍チェック、DOMS対策ストレッチ、栄養指導まで行う「健康診断週間」と化した。


生徒たちは筋肉痛に苦しみつつも、次第に姿勢が良くなり、顔色も良くなっていった。


「なんか……前より授業に集中できる……」

「寝起きがすっきりしてる……」

「健康って……すごい……!」



だが王子と新ヒロインだけは青ざめていた。

「なぜだ……! なぜ学園の人気を、筋肉でも魔法でもなく……健康で奪われるのだ……!」


俺は白衣代わりにタオルを羽織り、にやりと笑った。

「覚えとけ。婚約破棄なんかより大事なのは――血圧だ」


こうして今日もまた、婚約破棄令嬢おじさんの伝説に、新たな1ページが刻まれた。


……だから婚約破棄どこいったんだよ。


健康診断週間の二日目。

教室の黒板には、俺が大きくチョークで書いた言葉が並んでいた。


「水分! 睡眠! 塩分控えめ!」


生徒たちは必死にノートをとっている。

「なにこれ……魔法陣じゃなくて生活習慣表……?」

「おじさん令嬢先生……新しい授業が始まってしまった……!」



俺は前に出て手を叩いた。

「はい、次は脈拍チェック! 手首の橈骨動脈を指で触って……10秒数えろ!」


「せ、先生! 90でした!」

「よし、正常範囲! 安心しろ!」


「わ、私は……120……」

「オーバートレーニングだ! 今日は休め! 甘い物よりタンパク質だ!」


教室中が「ひゃー!」「俺大丈夫か!?」と大騒ぎだった。



昼休み。

食堂にまで俺の魔の手は伸びていた。


「お前、そのシチューに塩入れすぎだぞ」

「えっ!? でも美味しくて……」

「薄味に慣れろ! 代わりに香草やレモンで風味をつけろ!」


「えっ、このパンは……」

「うむ、全粒粉だな。食物繊維が豊富で腸内環境にいい」


「なぜ悪役令嬢が栄養士をしているんだ……!?」



王子が憤慨してやってきた。

「やめろぉぉぉ! なぜ我が学園が保健所になっているんだ!」


「現実を見ろ、王子。剣術よりまず睡眠だ。お前、昨日何時間寝た?」


「……三時間」


「ダメだバカタレ! 成長ホルモンが分泌されるのは夜10時〜2時だぞ! 寝ないと背が伸びねぇぞ!」


「ぐ、ぐぬぬぬぬ……!」


新ヒロインも涙目で訴える。

「ど、どうして……どうして健康ばかりが称えられるのですの……!」


だが観客の生徒たちは拳を握りしめて叫んでいた。

「悪役令嬢おじさん万歳!」

「血圧こそ力だ!」

「保健こそ最強の魔法だ!」



こうして学園は完全に「健康週間」の虜となり――

婚約破棄令嬢おじさんは、筋肉から一転、健康管理の権化としてさらに神格化されてしまったのだった。

武闘大会の翌日を健康診断週間にしてしまいましたが、せっかくなので本当に役立つ 血圧測定の基本 と DOMS(遅発性筋肉痛)対策 をまとめておきます。



血圧測定の正しいやり方

•測定タイミング:起床後1時間以内、朝食前・服薬前がベスト。夜は寝る前にもう一度。

•姿勢:背もたれのある椅子に座り、腕は心臓の高さで机に置く。脚は組まない。

•前準備:測定前に1〜2分は安静にする。運動直後や入浴直後は避ける。

•正常値の目安:上(収縮期)120未満、下(拡張期)80未満が理想。140/90を超えると高血圧の可能性。


婚約破棄より先に血圧を管理するのは、令嬢でもおじさんでも大事。



DOMS(遅発性筋肉痛)の正体と対処法

•原因:慣れない運動で筋線維に微細な損傷が起き、炎症物質が出るため。運動の翌日〜2日後にピークになる。

•やってはいけないこと:完全放置でゴロゴロ→回復が遅れる。過度なマッサージも逆効果になることがある。

•おすすめの対処

 - 軽いストレッチやウォーキングで血流を促す

 - 温冷交代浴で循環を良くする

 - 水分・タンパク質・ビタミンCをしっかり摂る

 - 睡眠をしっかり確保する


要するに「無理せず、ちょっと動いて、しっかり食べて寝る」のが最強。



まとめ

•婚約破棄より大事なのは 朝晩の血圧チェック

•決闘より怖いのは DOMSで階段が登れなくなること

•健康は全ての基盤、筋肉の土台。


……だから王子、まずはお前も血圧測れ。


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