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転生悪役令嬢おじさん、舞踏会のダンスを全部スクワットに変える件

王都で大舞踏会が開かれる夜。

煌びやかなシャンデリアの下、音楽隊の演奏が響き渡り、貴族たちが次々と入場してきた。


「ここで挽回しますわ!」

新ヒロインは華やかなドレスを翻し、王子の腕に絡みついた。

「殿下、今宵こそわたくしたちの輝きを……!」


王子も鼻高々に言い放つ。

「婚約破棄された令嬢など相手ではない! 我らが真の主役だ!」


……と、思ってるのは本人たちだけだ。

会場の視線は明らかに俺に集まっていた。


「基礎代謝の女神だ……!」

「今日も輝いてる……!」

「悪役令嬢おじさんが来たぞ!」



やがて始まったダンスタイム。

王子と新ヒロインが優雅にステップを踏み始めた――その瞬間。


「ステップだぁ? 違ぇよ、それはスクワットだ」


「……は?」


俺はドレスの裾を軽やかに捌き、ダンスホールの中央に躍り出る。

「下半身が安定してなきゃ、ダンスも崩れる! 全員、腰を落とせ!」


「えっ!? きゃあああ!!」

「わ、私たちまで!?」



観客もダンサーも一斉にスクワット状態。

ドレスがひらめき、燕尾服の男たちが悲鳴を上げながら腰を落とす。


「うぉぉぉ……! 太ももが燃える……!」

「でも、不思議とリズムが取りやすい……!」

「スクワットとダンスが融合している……!」


演奏隊までもがリズムに合わせてテンポを速め、

舞踏会は次第にスクワット・リズム・フェスティバルと化していった。



王子が顔を真っ赤にして叫ぶ。

「やめろぉぉぉ! これは舞踏会だ! 筋肉を競う場ではない!」


「ならやってみろ、王子。ワイドスタンススクワット・ターンだ!」


「な、なんだそれはぁぁぁ!!」


王子は必死にスクワット姿勢でターンを試み、見事にバランスを崩して派手に転倒した。


会場「「「ぷはははははは!!!!」」」


新ヒロインは必死に助け起こしながら叫ぶ。

「ち、違いますのよ! 殿下は本当はもっと優雅に……!」


だが観客はもう聞いていなかった。

「悪役令嬢おじさんこそ真の舞踏会の主役だ!」

「下半身強化こそ華やかさの源!」



俺は深く腰を落とし、締めの一言を放った。

「……覚えとけ。舞踏会の美は、太ももからだ」


こうしてその夜、王都の舞踏会はスクワット大会として歴史に刻まれてしまった。


……いやだから、婚約破棄の件はどこ行ったんだよ。


舞踏会はもはやダンスではなかった。

煌びやかなホールの中、ドレスの裾を押さえながら必死にスクワットする令嬢たち。

燕尾服姿の貴族が歯を食いしばりながら腰を落とし、汗だくになっていた。


「ふんぬぅぅぅ!!」

「太ももが……燃える……!」

「でも音楽と合う! 気持ちいい……!!」


演奏隊はノリノリでテンポを速め、バイオリンがロック調に。

舞踏会というより、完全にフィットネスフェスティバルだった。



そこへ現れたのは、各国から集まった使節団。

「な、なんだこれは!? 人間の舞踏会は……筋肉儀式なのか!?」

「スクワットで国交を結ぶとは……恐ろしい文明だ……!」


俺は汗を拭い、彼らに向かって堂々と宣言した。

「そうだ。舞踏は外交だ。そして外交の根幹は下半身だ!」


「な、なるほど……!」

「確かに腰を落とすほど、心も開かれる……!」


各国の使節団までもがスクワットを始め、ホール全体がさらに揺れだした。



王子は必死に叫んだ。

「やめろぉぉぉ!! 舞踏会を返せぇぇぇ!!!」


だが誰も聞いちゃいなかった。

新ヒロインですら息を切らしながらスクワットに加わっていた。

「はぁ……はぁ……これが……真の……淑女の美しさ……?」


「そうだ、それだ! 膝を外に開け! 腰を落とせ! そのままターンだ!」

俺の指導に合わせて、新ヒロインは涙目でフォームを整えた。


「ひぃぃぃぃ!! でも、でも……踊れてる!?」



観客の喝采が爆発する。

「見ろ! あのフォーム! 完璧だ!」

「婚約破棄された令嬢が……舞踏会の主役だ!」

「筋肉が全てを救う……!!」


俺は深く腰を落としながら、汗だくの令嬢たちに言い放った。

「お前ら……今日からは“スクワット貴族”だ!」


「「「おぉぉぉぉぉ!!!!」」」


こうしてその夜、王都の舞踏会は――

正式に「スクワット舞踏祭」として記録されることになった。

舞踏会をスクワット大会にしてしまいましたが、せっかくなのでスクワットの基本と種類について解説しておきます。

•ハイバースクワット

 バーを肩甲骨を寄せて僧帽筋の上に担ぐ。

 膝を深く曲げる必要があり、大腿四頭筋メインの刺激。

 その分、膝への負担は強め。膝に不安がある人にはあまりおすすめできない。

•ローバースクワット

 バーを僧帽筋と肩の溝あたりに低めに担ぐ。

 膝への負担は少なく、代わりに大臀筋・ハムストリングスを強く動員できる。

 フォーム的に前傾が入りやすく、より高重量を扱えることが多い。

•フォームの応用

 ハイバーとローバーの中間くらいにバーを担ぐ特殊なフォームも存在するが、習得は難しい。

•バリエーション

 ランジスクワット、ブルガリアンスクワットなど片足系のスクワットでは、脚を内側に寄せる動きが入りやすく、大臀筋上部もよくストレッチされる。

 また、バランスを取るために多くの協働筋も働き、安定性を鍛えられる。

•注意点

 どのスクワットでも共通するのは、腰背部を丸めないこと。

 無理な重量を避け、フォームを守って行うことでケガを防ぎ、長く続けられる。


スクワットは「キング・オブ・エクササイズ」と呼ばれる通り、正しく続ければ一生モノの下半身を手に入れられます。

――舞踏会であろうと、ジムであろうと、結局はスクワットに帰ってくるんですね。

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