転生悪役令嬢おじさん、魔法の授業を全部腹筋に変える件
新学期二日目、最初の授業は「基礎魔法学」だった。
黒板に魔法陣が描かれ、教師が厳かに言う。
「よいか、生徒諸君。魔法の根幹は“詠唱”だ。呼吸を整え、言霊を乗せて……」
「呼吸? なら腹式呼吸だな」
「……え?」
俺は机を叩き、立ち上がった。
「お前ら! 腹から声出せ! まずは腹筋30回だ!」
「ひぃぃぃ!!!」
「お腹つるぅぅぅ!!」
「でも……声が出やすい……!」
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新ヒロインが必死に手を挙げた。
「ま、待ってください! 魔法は知性と感性ですわ! 筋肉とは無縁のはず!」
「違ぇよ! 詠唱はリズムだ! リズムは呼吸! 呼吸は横隔膜! 横隔膜は筋肉だ!!」
「理屈が強引すぎますわぁぁ!!!」
だが教師は真顔で頷いていた。
「……確かに、発声が安定すれば詠唱の暴発も防げる……」
「ほら見ろ! だから全員、プランク1分耐久詠唱練習だ!!」
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クラス中が床に這いつくばり、震える声で呪文を唱える。
「ふ、ふぁいあぁぁ……ぼぉぉる……!」
「腹が……ぷるぷるする……でも魔力が安定してる気がする!」
教師「素晴らしい! これが本当の基礎魔法学だ!」
新ヒロイン「な、なんでみんな納得してるのぉぉぉ!!?」
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こうして学園の魔法の授業は、正式に筋トレ科目へと変貌してしまったのだった。
床に這いつくばった生徒たちは、汗だくでプランクを続けながら詠唱していた。
「ふぁい……あぁ……ぼぉぉる……」
「く、苦しい……でも魔力の制御が安定してる気がする!」
俺は腕を組んで頷いた。
「そうだ。震える腹筋こそ魔力の土台だ」
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王子が立ち上がり、必死に抗議する。
「ふざけるな! 魔法はもっと高貴で洗練されたものだ! 筋肉など必要ない!」
「じゃあやってみろ」
俺は魔法陣を指差した。
「腹式呼吸なしでファイアボールを詠唱してみろ」
王子は胸を張り、堂々と叫ぶ。
「ファイア――ボォォル!!」
……ボフッ。
情けない小さな火の玉がしゅるりと飛び出し、ろうそくをちょっと焦がしただけだった。
教室「しょっぼ!!!」
「な、なぜだぁぁぁ!!!」
「お前は肺活量が足りねぇんだよ。腹筋やれ」
「ぐぬぬぬ……!」
王子は真っ赤になって、結局プランクに戻った。
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新ヒロインも負けじと立ち上がる。
「わ、わたくしこそ! 女の感性で華麗に魔法を!」
彼女は華やかに腕を振り、詠唱を始めた。
「アイスラン――」
「背中丸まってるぞ」
「ひっ!?」
「その猫背じゃ肺が膨らまねぇ。肩甲骨を寄せろ! 胸を開け! 姿勢を正せ!」
「な、なにを……! こ、こうですの……!?」
「そうだ! それだ! そのまま詠唱!」
「ア、アイスラン……ス!!」
ドォン!!
氷の槍が正確に放たれ、教室の壁に突き刺さった。
「な、なんですのこれ!? いつもより威力が……!」
「姿勢矯正の効果だ」
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観客が一斉に叫んだ。
「悪役令嬢おじさんすげぇぇ!!」
「筋肉は魔法をも強化するのか!」
「女神万歳!」
新ヒロイン「やめろぉぉぉ!! わたくしの見せ場がぁぁぁ!!!」
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こうして魔法の授業は完全に「腹筋・呼吸・姿勢改善トレーニング」へと改造され、
学院史に残る“魔力安定黄金時代”が幕を開けたのであった。
……いやだから、婚約破棄の件はどこいったんだよ。
「おーっほっほ! 本日のテーマは“呼吸”ですわ!」
魔法詠唱も演説も筋トレも――すべては呼吸から始まりますの。
正しい呼吸こそが、力と心を安定させる最強の基礎ですわよ!
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◆ 呼吸と体の関係
・腹式呼吸 → 横隔膜が上下し、酸素を深く取り込める。
・酸素が増えると → 集中力UP・自律神経安定・魔力(比喩的に)も安定!
・逆に浅い胸式呼吸 → 疲れやすく、イライラや不安の原因。
◆ 実用の呼吸法
1.鼻から吸う(4秒)
2.お腹を膨らませるように息を入れる
3.ゆっくり口から吐く(6〜8秒)
→ これを数回繰り返すだけで、血圧や心拍が落ち着きますわ。
◆ プラスα
・姿勢を正せば肺が広がり、呼吸がもっと深くなる。
・緊張する場面や試験前にやると、頭が冴えやすい。
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「つまり――呼吸を制する者は、筋肉も魔法も制する!
おーっほっほ!」




