転生悪役令嬢おじさん、学園に復帰するもホームルームが筋トレになる件
婚約破棄からしばらく――。
俺はなぜか再び学園に呼び戻されていた。
「悪役令嬢でありながら、国の和平に貢献した功績を認め……特例で復学を許す」
そう告げたのは学院長。
……いや、筋肉外交で復学ってどういう理屈だよ。
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久々の教室。
令嬢や若い貴族たちがひそひそと囁いている。
「アレが……婚約破棄された令嬢?」
「でも魔族を筋肉で黙らせたんでしょ?」
「基礎代謝の女神だって噂よ」
……もう何もかも間違ってる。
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ホームルーム開始。
教師が前に立ち、咳払いをした。
「では今日は新学期恒例の自己紹介から――」
「その前に筋トレだ」
「は?」
「自己紹介よりも、まず体幹を鍛えろ! 体幹がなきゃ声も出ねぇ!」
気づいたら俺は立ち上がっていた。
「みんな椅子をどけろ! プランク30秒! せーの!」
「ちょっ……な、何を……」
「うわ、苦しい……!」
「でも確かに声が通るような……!」
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あっという間に教室はジム状態。
教師まで「……確かに悪くない」とプランクに参加。
そのとき教室の扉が勢いよく開いた。
「ここにいたのね!」
王子と新ヒロインが現れた。
「お前は婚約破棄された身! なぜここにいる!」
「この学園はわたくしたちの舞台なのですわ!」
俺は腕立て伏せを続けながら答えた。
「復学だよ。あとお前らもやれ。腕立ては平等だ」
「ふざけるなぁぁぁぁ!!!」
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こうして俺の「学園再デビュー」は、自己紹介そっちのけで筋トレ地獄のホームルームとなったのだった。
王子が机を叩きながら叫んだ。
「やめろ! ここは学び舎だ! 筋肉を鍛える場所ではない!」
俺は冷静に言い返した。
「違ぇよ。筋肉こそが人生の基礎教養だ」
「な……っ!」
「文字を学ぶ前に正しい姿勢が必要だろ? 魔法を放つにも体幹が要る。剣を振るなら握力と握り込みだ。つまり――学問の土台は筋肉だ」
生徒たちがざわめいた。
「……言われてみればそうかも」
「剣術の授業、いつも腰痛くなるし……」
「腹筋足りないからか?」
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新ヒロインが涙目で叫んだ。
「ち、違いますわ! 学園はもっと優雅で華やかな場所ですの!」
「優雅? ならなおさら背筋伸ばせ!」
俺はバシッと指差した。
「その猫背、ドレスが台無しだぞ!」
「ひっ……!」
新ヒロインは慌てて姿勢を正す。
クラス全体が笑いに包まれ、拍手が起きた。
「やっぱり基礎代謝の女神だ!」
「悪役令嬢さん、最高!」
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教師がため息をつきつつ手帳に書き込んだ。
「……では今日の出席簿に、“プランク30秒達成”と記録しておこう」
「正式に授業に組み込むんですか!?」
「仕方ない。説得力がありすぎる」
こうして学園の新学期初日――自己紹介は一切行われず、全員の筋肉測定で幕を閉じた。
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帰り際、王子は悔しさに歯を食いしばった。
「なぜだ……なぜいつも彼女ばかり……!」
「殿下、筋肉が足りませんのよ……」
新ヒロインの言葉に、王子はその場でスクワットを始めた。
「ぐぬぬぬ……!!」
「そうだ! その調子だ王子!」
「うるさぁぁぁい!!」
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俺はドレスの裾を翻しながら小さく呟いた。
「……いやほんと、婚約破棄どこいったんだ」
「おーっほっほ! 本日のテーマは“姿勢”ですわ!」
学園での学びも舞踏会でのドレスも――結局は姿勢次第。
猫背では声も出ず、集中力も下がり、美しさも半減してしまいますのよ!
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◆ 姿勢が与える影響
・呼吸が浅くなる → 集中力・持久力の低下。
・内臓が圧迫される → 消化不良や便秘の原因。
・見た目の印象が悪化 → 自信まで失われますわ。
◆ 良い姿勢のポイント
・耳・肩・腰・膝・くるぶしを一直線に。
・椅子に座るときは骨盤を立て、背もたれにダラっと寄りかからない。
・肩の力を抜き、胸を開くことで声も通りやすくなりますの。
◆ 実用の工夫
・授業中は30分ごとに軽く伸びを。
・腹筋・背筋をバランスよく鍛えることで自然と姿勢が整う。
・鏡や窓に映る自分を意識して“軸”を確認。
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「つまり――学園で輝く真のレディは、血筋でもドレスでもなく姿勢で決まる!
おーっほっほ! 悪役令嬢おじさん、次回は“朝ごはんこそ一日の魔力源”を語りますわ!」




