地鳴りが来る
天氣がいいから、庭に放していたレオナが、突如、こっちを見ながら、激しく吠え始める!
ワン!ワン!ワン!
「どうした?レオナ?」
ゴゴゴゴ~、と遠くから地鳴り?
次の瞬間、僕と佑夏のスマホが同時に警報を発したかと思うと、床が激しく揺れ出す!
地震!かなり大きい!
「キャー!!!」
佑夏は、悲鳴を上げ、ぽん太を抱いて、僕の胸に飛び込んで来る!
!!なんて嬉し、いや、大変な事態だ!
「大丈夫だよ!佑夏ちゃん!」
僕は、彼女をギュッと抱き締める(初めて!)と、部屋の隅、落ちてくる物の無い位置に、なんとか移動。
姫の細い肩が、恐怖でガタガタ震えている。
落ち着かせたいが、手の温もりを伝える以外、手立てがない。チクショ~!
この、あばら家だ。倒壊するかもしれない。佑夏を抱き上げて、外に脱出するか?よし!
が、揺れは次第に収まり、また穏やかな五月日和が戻ってくる。一安心だね。
「佑夏ちゃん、もう大丈夫だよ?」
僕は、自分の頭の下の佑夏に、そっと優しく声をかけてみたものの.............。
「怖い........怖い......怖い.......。」
ちょうど、僕の心臓のあたりに顔を埋め、彼女はまだ震えている。
目には、涙が?ええっ!?
尋常ではない怖がり方だ。台風は、まるで平氣だった、この子が、こんなに怯えるなんて?
でも、綺麗だよ......って、こんな時に、何考えてんだ?俺は?
まだ、パニックから醒めない佑夏を刺激しないように、そっとスマホで地震速報を見てみると、津波の恐れは無い、とある。
大きな被害は無いようで、ホッとする。ふぅ~。
あ!佑夏はふいに、ガバっと身を起こす!我に返ったのか?そして、部屋中、見渡しながら、大声で泣きわめく。
「ぽん太~!ぽん太~!中原く~ん!どこ~!!!」
彼女に抱かれたままの、ぽん太は、フギャア!と大きな悲鳴を上げて、
(お、おい!ジンスケ!だずげでぐで~!!!し、死んじまう~!!!)
手足をばたつかせるデブ猫。巨大な体躯を持つ、ぽん太が逃げられないのだから、よほど、強い力で抱いているんだろう。
「佑夏ちゃん、ぽん太、自分で抱いてるよ?俺は、体に触れてるよ。あ、ゴメン!」
すぐに、体一つ分、武芸者の動きで、僕は、サッと佑夏と距離を取る。
これ以上、かの姫と、それがしが密着しては、潮崎殿に申し訳がたたぬ、あはは。
(あれ?佑夏が身に付けた人間的余裕が、僕にも伝染したか?)
「え?あ!中原くん!ぽん太~!良かった~!」
今度は、優しく、ぽん太を抱き締め、佑夏は顔を何度も、猫又の寄り目に摺り寄せる。
すると、髪の白い貝殻が、このデブ猫に当たり、まるで光の雫を落としているように輝いている。