続・恋する乙女は
「??どーしたの、中原くん?私のこと、未確認生命体見るみたいな目で見て?」
ぽん太と頬をピッタリ合わせ、顔をスリスリしながら、姫は笑って仰せになる。
潮崎さんにも、こんなこと、してんのか?
おのれ、一馬!許せ~ん!って、もう僕は、何も言えないけどね。
「い、いや~、」
前より綺麗になった、と言いたいけど、他人の彼女だぞ!?口説くような台詞は言えないよ。
だから、二年の冬に、白馬アリエルに佑夏を乗せてから、その後も度々、二人で、時には翠や須藤達も一緒に、あの乗馬クラブには通っていたが、さすがに、潮崎氏と付き合い始めてからは、誘ってない。
グライダーに乗せてあげる話も、そのまま実現せず。なにしろ、もう「人の物」。
彼女の心は、もうサーフィンだしね。
そういや、佑夏ちゃん、目も大きくなったよな~。
瞳も、彼女の好きな星空を映しているように、キラキラしてる。
それに、変化は外見だけでは無い。
若葉寮の子供達との触れあいも、以前は、女子高生が同級生と一緒に騒いでいるようなノリだった。
それが、今ではまさに、翼の生えたエンジェル!
子供達を、より大きな愛で包み、導き、異次元からやって来た、人間より高次の存在といった印象である。
元々、優しい性格は、さらに優しくなり、鬼悪魔でもひれ伏しそうな暖かさだ。
今の彼女には、神々しさすら、感じられ、若葉寮の子供達は、神に導かれた羊の群れに見えてしまう。
錯覚に違いないが、子供と遊んでいる時の佑夏は、淡い光のオーラを身に纏っているかのようだ。
また、人間的にも、以前より深みが出て、懐の大きさ、全てを受け入れる余裕といったものが感じられ、一緒にいると感じる幸福感が、前とは比べ物にならない。
恋人ができると、女性はこんなにも、人格が成長するものなのか?いいな~、潮崎さん。
「あはは♪ねえ、ぽん太。何だか中原くん、佑夏を、ゴリラがバナナ欲しくて、指くわえてるみたいな顔して、見てるね?
ねえ、中原くん、教育実習で、こんなのどうかな?」
ぽん太を抱いたまま、僕に向き直ると、姫は、このデブ猫の寄り目を、見事に真似してみせる。
プッ!!吹き出すなという方が無理な面白さ。
今度は、ぽん太を降ろすと、僕の側ににじり寄り、僕の膝の上にいる楓と鼻を合わせたかと思うと、フワッと羽のように上半身を起こし、両手を組んで頬につけ、首を傾けて、
「ご主人様~♡私、楓で~す♡」
う、上手い!!!!!目が楓ソックリ!!!!!
「ギャハハハハ!」
と、僕は声を出して大笑いしてしまう。
忘れていた。この子は形態模写が得意なのだ。
ギャグのレベルさえ、恋人ができる前より、格段にパワーアップしているとは、プッ!
「佑夏ちゃん、ズルいな。物真似、得意なんだよね。教育実習で、これだけで笑いとれるよ。」
笑いが収まらない僕を見ながら、彼女は再び、ぽん太を抱き上げる。
「ぽん太~。中原くん、やっと笑ってくれたよ!」
そういえば、佑夏の実習先の小学校は、地元の温泉地ではない。
担当するのは、手のかかりそうな、三年生。
沿岸の潮騒市にある、そのまま「潮騒小学校」が、受け入れ先となる。
ここは、ぽん太の生まれた、真白さんの家があった場所。
「佑夏ちゃん?」
「ん?」
僕は、どうして「潮騒市に実習に行くのか?」と言いかける、
だが、その直後.......。