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恋する乙女は

五月晴れの僕の部屋。

 

 佑夏は、まだ、ぽん太のお腹をこちょこちょしたり、このデブ猫を高い高いしたりして、楽しげな笑い声を上げている。


 ん~?氣のせいか、いつもより、居てくれる時間が長いように感じるが?潮崎さんと、ケンカでもしたのかな?


「ねえ、中原くん♪教育実習に行ったら、何したい?」


 ぽん太を両手で掲げたまま、今度は視線を僕に向ける姫。


「そりゃ、真面目に授業するよ。」


「それだけ?」


 何の変哲も無い、僕の答えに、佑夏はよくやるように、イタズラっぽく、クスクス笑う。

 柔らかい笑顔、“さあ、一緒にアイデア出そう!“と誘っているようだ。


 いつも、感じることだが、この子は何を言っても、押し付けがましくない。

 相手の氣持ちを汲んで、心を前向きにしてくれる。


「いやさ、変にウケとか狙ったら、逆に生徒にバカにされそうな氣がしてさ。普通にやるのが、一番いいかな?って。」


 これは、ここ数日、考えていたことだ。


「あ~、そーだね。授業の最初に大きな謎をかけて、一時間かけて解くようにすれば、いいんじゃない?

 そうすれば、生徒達(みんな)、飽きないで、集中してくるんじゃないかな?」


「ああ、そうか!ありがとう、佑夏ちゃん。」


 相変わらず、旺盛な姫のサービス精神。


 最愛の、この子を潮崎氏に奪われた僕の悔しさは、東京ドーム10杯分と形容しても、まだ足りないくらいだが、彼と付き合い始めてからの佑夏は、以前にも増して、より美しくなっている。


 あのサーファー兼音楽家と交際する前の佑夏は、美女とはいっても、どこか子供っぽさが抜けず、まだ女子高生の延長といった印象だった。


 それが、今や、天の世界からやって来た女神のような、優雅で、華麗で、落ち着きを持ち、周囲を優しく包み込むような包容力さえ備えた存在に、変貌を遂げているのだ。


 女性は恋をすると綺麗になる、という話は聞いたことくらいはある。

 こういった劇的な変化は、女性特有の物で、男には起こらないのだという。


 身体が子を産み、母親になる為のホルモンを分泌し始めることから、発生するらしい。


 佑夏の場合、まず、サラサラの黒髪と、雪の結晶のよりも白い肌の、色艶と輝きが以前とは段違いに増している。


 髪の状態は光の反射で、いわゆる、輝く「天使の輪」ができるくらいで、しっとりした潤いのある質感が触れなくても、感じられる。


 透明感で、透き通るにように光る白肌の煌めきといったら、まるで、シルクのようである。


 この人、いや、天界からの使いと恋人?


 心底、潮崎さんが羨ましい。

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