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高原で早起きしよう

ヤマネが空を飛ぶ!


 おそらく、霧ヶ峰(ここ)に来なかったら、一生、聞くことのなかった話。


「カワイイ~!うち、見たいわ~!」


 二文節目にアクセントがある、理夢ちゃんの京都弁も、やっぱり愛らしい。


「アホ。お前、夜の森なんか、怖おしていられへんやろうが。」


 母親のルミ子さんは、せせら笑っている。


 高原の夜も、すっかり更けてきたけど、明日の朝食の予定は八時、余裕がある。


 すると、東山さんが、ディーンフジオカ添乗員と軽く顔を見合わせて、


「皆さん、先ほど我々で話し合ったんですけどね、明日の朝、朝食の前、六時から希望者の方だけ、八島ヶ原湿原を歩くことにします。

 これは、私の発案です。」


「予定に無かったことですし、追加料金はいただきません。また、強制ではありませんから、朝食までお休みになっても、問題ないですよ。」


 と、添乗員が「ツアー概要」を述べる。


「え~!いいんですか~!やった~!」


 利き腕の左で、ちょっと、髪の白い貝殻に触れた後、「今だけ婚約者」の白沢佑夏さんは、両手を叩いて小躍りしている。


 僕も参加確定だ!


 すいません、潮崎さん、あと二日だけ、あなたの彼女をお借りします。

 アフリカの呪術で、呪い殺さないで下さい。


 だけど.......。


 人生が決まる大事な教員採用試験(きょうさい)の合格発表の朝に、朝もやの霧ヶ峰を歩くなんて、男の僕でさえ、とてつもなくロマンチックに思える。


 多分、全国の受験者で、発表の朝にこんなことする人はいないはずだね。


 自分の部屋で、朝からビクビクしてるよりずっといい!佑夏ちゃんらしいな~。

 ああ、こんな素敵な女性に、もう魅力を感じてはいけないのか......。


 山田さんは朝、寝てるかな?と思いきや、全員が喜んで参加表明。

 せっかく、霧ヶ峰に来ているのだから、当然かもしれない。


「それでは、本日の日程は全て終了とさせていただきます。また、明朝、よろしくお願いいたします。」


 ディーンフジオカ添乗員が、締めの一言を述べ、僕達はゾロゾロとラウンジを後にする。


 すると、東山さんも、山小屋(ここ)に泊まるんだろうが、これは予定にあったのか?

 まあ、若い頃に、ここで働いてたんだから、自分の家みたいなものだろうな。


 佑夏と、微笑み合い、手を振って離れ、男一人、二階へと登って行く。


 部屋に戻ると、星空が見たくなり、窓を開けてみると、煌めく満天の星の海。


 下の階じゃ、こんなに綺麗に見えないな、二階(こっち)で良かったかもね。


 明日は早い、もう寝よう。


 氣を遣っているのか、もう寝てしまったのか、ぽん太は思念を送っては来ない。

 ありがとう、我が愛猫よ。


 今は、俺も静かな夜を楽しみたいと思う。

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