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偉大なるサーファーの旅路

潮崎氏の演奏に、佑夏の美声が響き合い、黒人男性とミユちゃんの声も相まって、幻想的な音の世界を紡ぎ出していく。


 だが、何と言っても僕の姫のクリアボイスだ。

 潮崎氏の楽器に音色にピッタリ!まるで、この二人、まるで長年、夫婦でずっと演奏活動をしてきたかのように、息が合っている。


 本っっっ当に悔しいが、何てお似合いなんだ!!!!!


 佑夏の真骨頂は、踊り以上に歌にあると分かり、観客席はすっかり熱狂の渦と化している。

「綺麗な声~!」なんて歓声が、そこかしこから上がっている。

 もう、学生だろうが、何だろうが、上手けりゃいいんだろう、そりゃそうだ。


 この入場料で、これだけの演奏とコーラスは安過ぎだ。

 大学生二人を含もうが、金返せコールなど、起きるはずもない。


 何曲か、コーラスナンバーが続いた後、興奮冷めやらぬといった観衆だが、ここで一息、潮崎一馬のトークタイムになる。

 質問もOKなのだという。


 佑夏達にも、椅子が用意され、彼女らも壇上で潮崎氏を囲んで座る。


 まず、簡単に、彼はルオースクールまで辿り着いた経緯を話す。


 幼い頃に、父親を亡くし、苦労しながらも、大学まで行ったこと。

 貧しかった由に、塾にも通ったことはなく、家庭教師も付けてもらった経験もない、それでも独学で頑張ったと。


 僕と翠はもちろん、観客の誰もが、潮崎氏は〇大ストレートと知っているから、どよめきが上がるのも仕方ない。


 同じように、幼年期に父親を亡くしているのが僕だ。

 父がいなくなったことで、ふてくされてしまいそうな、嫌なことが数え切れないくらいあった。


 そういう辛い目に、この人も遭っているはずだが、少しも腐った様子がなく、独学で〇大現役合格!何か人間的にも僕は負けている氣がする。


 〇大・大学院を卒業後、すぐには就職せず、父親の形見のサーフボードを片手に、世界中のビーチを歩いて周り、ちょっとした縁で、ルオースクールを訪れた。


 貧しいスラムの子供達と寝食を共にし、勉強を教えてあげると、不幸に沈んでいた彼らの目が輝き、笑ってくれる。

 それが、自分にとっても、この上ない喜びだったと。

 思わぬ幸福を、アフリカの地に見出し、留まることにしたのだという。


 現在、ハーバード大学留学を考えているが、ルオーの子供達が離してくれず、困っている、と彼は笑う。


 カッコイイ~!素敵~!男らしいね~!

 そんな声で、会場はざわめき返っている。


 彼の隣に座っている佑夏も、やはり、そんな紅潮した表情で、潮崎氏を熱く見つめている。ああ!

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