表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
186/280

怪猫、ライバルを讃える

入口付近に、ケニア人らしい黒人女性がいる。

 スタッフではなさそうだ。この町に住んでいるのだろうか?


 スマホをいじっている彼女の脇をすり抜け、僕と翠は、地下へと下っていく。


 受付は、支援団体のスタッフ証をつけた日本人の中年男性、眼鏡をかけた穏やかそうな人だな。

 チケットは既に、購入済である。


 今日、家を出る前、怪猫ぽん太が僕を煽る煽る。


(一馬は県教大(ケンキョー)のお坊ちゃん共とは、訳が違うぜ。

 父親もいねえのに、大学まで行って頑張ってんのは、ジンスケ(おまえ)だけの専売特許じゃねえってこった。

 オマケに日本一いい大学とは、てえしたもんだ!もう、諦めて、負けを認めたらどうだ?)


(佑夏ちゃんの口から、はっきり“潮崎さんが好き“って聞くまでは、諦められるか。)


(ニャハハ!そうか。しかし、よりにもよって、一馬の歌、聴きに行くたぁな。

 佑夏も踊りで出演(でる)んだろ?もう、デキてんじゃねえのか?)


(ぽん太、お前、佑夏ちゃんの心読んで、分かってんだよな?ずいぶん、楽しそうじゃないか。

 いいから、俺に確かめさせろ。)


(ああ、好きにしな。せっかく、オレが忠告してやってんのによ。

 どうなっても、知らねえぜ。ニャハハハハハハー!)


 そんな訳で、今こうして、ライブハウスの座席に、翠と並んで座っている。


 用意されている座席は60~70人分くらいか?

 今回は、全て事前予約制だから、この人数分の客が来るのだろう。


「ちょっと、くどいがよ、今日は、ミユだって出演(でる)んだぞ?そんな顔すんなよ。」


 また、翠に釘を刺される。不安が顔に出ていたか?


「ああ、そうだな。佑夏ちゃん達、どこにいるのかな?もう、俺達が来たって分かってんのか?」


 既に、十数人の客が席に着いている。


「控室で、それどころじゃないだろ。衣装も、ケニアの民族衣装で、バッチリ決めるって言ってたぞ。

 中原、早く見たいんじゃないのか?」


 翠は、珍しく、女の子っぽく、クスクス笑う。


「ハハハ、そうだな。それに、ケニア音楽は俺も興味あるよ。」


 少しずつ、客席が埋まっていく、開演の時間も、近づいて来る。


「でも、なんで佑夏ちゃん達が出るんだ?ルオーのスタッフの人達じゃなくて?10日くらいしか、練習してないだろ?」


 翠に、こんなこと言っても仕方ないと思ったが、意外にも、彼女は知っている。


「ケニアからダンサー、大勢連れて来るのは、金がかかりすぎるんだってよ。潮崎さん一人で来るんじゃないみたいだけどな。

 それと、日本(こっち)の支援団体の人達はオッサンばっかりで、踊りで出すには華が無いらしい。」


 その時、


「お待たせいたしました。間もなく、開演です。」


 翠のいう、「オッサン」のスタッフの声が、厳かに響く。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ