表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
177/280

ヒルティ様々

「え?幸福論に、そんな話、出てくるの?」


 驚いて、佑夏に聞き返してしまう。

 さすがは、教養深い、我が姫君である。


「うん。そーなの。若過ぎる海外体験は、もっと強い刺激を求めて止まらなくなっちゃって、人生に良くない影響を与えるって。

 だから、中原くんが、今、海外に行く機会が無いからって、少しも氣に病まなくて、いいのよ。

 ねえ、周りの人達を見て、思い当たることない?私は、たくさんあったわ。」


 あ!言われてみれば.......!


「俺の英語の先生、70過ぎの男の人なんだけどさ。

 高校出て、すぐアメリカに渡って、向こうに30年いて、永住権まで取って、一度はあっちでプール付きの豪邸に住んでたんだって。


 でも、今じゃ、日本(こっち)で、小さいアパートで娘さんと二人で暮らしてるよ。

 帰国してから買った家、大きかったらしいんだけど、それも売り払って、日本人の奥さんにも離婚されてるんだ。」


「やっぱり!貴重な体験を生かせてないのね。ひゃー!私、どーしよ?アハハ!」


 と言いつつ、余裕の表情で笑う姫。


「佑夏ちゃんは大丈夫だよ。スラムの子供達の為に行くんだから。


 その人さ、オーストラリアや、ニュージーランドにも住んだんだけど、田舎過ぎて退屈で、ここはジジイになってから住むとこだと思ったんだってさ。


 そう”刺激を求めて”って言ってた!それですぐ、引越して、ニューヨークやロサンゼルスでずっと暮らしてたんだよ。」


「あーそーか。私はスラムとサファリだから、いいのかもね。」


「そうだって!ラスベガスの、カジノとかだったら、ヤバイんじゃない?」


「私、そんなとこ、似合わないよ~!つまみ出されそう!」


 二人で、声を合わせて笑う。

 僕はずっと抱いていた「海外コンプレックス」さえ、彼女に払拭してもらえた。


 この子には、いつも癒されっ放しだ。

 真の教養とは、こうして人を和ませ、正しい道に導く為にあるのだと思う。


 もう一つ、今度は成功例が思い当たって、それも話してみることにする。


「俺の木工の先生は、青森出身で、30歳まで東京でサラリーマンやってて、その後、カナダに一年行って来て、木工覚えて来たんだ。

 帰って来てから、木工品も売れて、奥さんと仲良く暮らしてるよ。


 日本じゃ売ってない木工の機材も、向こう(カナダ)から取り寄せてるって言ってたな。

 海外体験、上手く生かしてるね。」


「何でも、ちょうどいい時期があるのね。中原くん、帰国子女とか、羨むことないわ。

 定年退職してから、タイに移住した人達とか、現地にも溶け込んで、楽しい生活してるから。」


 ああ、この子はケニアでの体験も、浮かれることなく、自分の物に出来るんだろうな。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ