幸せのシュタイナー
わずか三泊四日の日程である。
せっかくの、この北海道旅行、少しでも時間を大事にしたい。
シュタイナー教育では、授業は詩で始まり、絵から導かれる文字、リズム体験による算数など、イメージ豊かなお話や歌、教科全てを通して、子どもたちが生き生きと世界と関わることができる芸術を主眼においた授業をする。
ペーパーテスト完結ではないんだね。
また、教育内容は、生徒は勿論、教員や親の人生に対する姿勢は子どもに深い影響を与える、とされており、教育は、大人を創造していく芸術でもあるのだそうだ。
東大卒の、有名なグルメ漫画の原作者の人がオーストラリア在住で、子供達は全員、現地のシュタイナー学校を卒業している。
子供達を卒業させての感想は「楽しかった」。
途中、何度「日本に帰ろう」と言っても、その度に子供達と奥さんに大反対された、とコメントしている。
ひかりの村にチェックインすると、現在、常駐のスタッフは五人。
佑夏は、「みんな、感じ良くて、素敵な人達ね~!」と言う。
構内にシュタイナー幼稚園があり、伊達市内から、何人か園児が通って来ている。
さらに、ここで、シュタイナー学校の教員になる為の、一年課程の講座を受講している人達が六人いて、僕達は短期で彼らの授業にお邪魔させてもらうのである。
その一人は、この三月に、広島の教育大を卒業したばかりという女性で、この同じ教育大の二年先輩と、佑夏は大いに氣があったらしく、斎藤ミユちゃん共々、色々と質問を。
須藤は、てっきり彼女と二人だけで過ごすものと思ったが、彼女の方が佑夏達と一緒にいて、他の女子大生達と彼も集団行動してくれる。
本州では見られない、なだらかな丘の上にあり、北海道らしい草原で、内浦湾の穏やかな海を見下ろせる、ひかりの村のロケーションは感動的なくらい、素晴らしい!かすかに、函館まで見える。
ちょうど、洞爺湖に続く道路の途中にあるのも便利だ。
木造の、童話に出て来そうな建物が、何棟かで構成されていて、海を見ながらウッドデッキで昼寝すると、時間を忘れてしまいそうになるくらい、心地いい。
北海道の風は湿気を含んでおらず、いくらあたっても、身体が冷えたりしないのである。
佑夏と一緒に来れたのが、テーマパークでなく、ここで本当に良かったと思う。
(てゆうか、テーマパークなんか行くから、みんな簡単に別れたりするんじゃ?)
隼君は、シュタイナー思想に基づいた、工作や絵画のレッスンに目を輝かせていたな。
農園部には専門のスタッフが二人。
馬が三頭いて、僕はみんなに乗り方をレクチャーする。
天体との関係を考えた独自の農法も、興味深い。
帰りは、やはり大沼公園が見たくて、函館経由で。
今回は時間が無くて無理だったが、次はここで、カヌーにも挑戦したいと思う。
こうして、僕達の北海道旅行は、大学生活最高の思い出になったのである。
教員採用試験がダメだったら、佑夏には、こっちに進む道もあり、むしろ向いていそうだ。