幸せの洞爺湖
今回、宿泊するシュタイナー施設は「ひかりの村」という。
伊達市内から、車で15分程度、小高い丘にある。
シュタイナー教育では、テスト、教科書、宿題が無い。
競争を否定している点が、「競争教育は種の滅亡をもたらす」と言っている幸福論の一人、ラッセルと共通している。
ここで、子供達が実際にシュタイナー学校で受けている授業プログラムを、僕達も体験してくるのである。
伊達市は人口三万人程度、「北の湘南」と呼ばれ、北海道の中ではとりわけ気候が温暖で、積雪が少ない。
道内各地から、リタイア後の居住地として人氣があり、本州からの移住者も多いらしい。
町の雰囲気が明るく、札幌や函館だと、駅前にタチの悪そうな連中がうろついていたりするが、ここは治安もいい印象がある。
土地の広大な北海道は、とにかく食べ物も、何でも大きい。
食欲旺盛な佑夏は、猛然と食べる!
回転寿司など、具がシャリからはみ出すくらい大きくて、味がいい上に安いのである。
しかも、コンビニで売っているソフトクリームさえ、本州の物より、ずっと大きくて美味しいのは、どういう訳か?
ラーメンは、何処に行っても、激ウマだ。
「佑夏ちゃん、そんなに食べたら、太るんじゃないの?」
つい、心配になって言ってみると、
「コイツに、そんなこと言っても、無駄だって!」
と、翠に笑われてしまう。
佑夏ちゃん~!太らないでよ!
だが、姫は、
「収穫物を美味しくいただくのは、幸福たる義務で~す!」
などと、訳の分からないことを言って、「爆食い」を止めない。
ここには、海も山も湖も、何でもある。
しかも、治安が良く、食べ物も安くて美味しいとなれば、確かに、ちょっと悪くない。
洞爺湖に向かう道すがら、「蝦夷富士」と呼ばれる、まだ雪を被った羊蹄山と、ニセコスキー場のある、ニセコアンヌプリが目に入る。
五月の連休も過ぎ、さすがにスキーシーズンは終わりだろう。
スキーには興味が無いが、単純に、風景として美しい。
桜の名所である洞爺湖、ちょうど桜が満開!もう、これだけでも最高!で、来たかいがあったというものだ。
これを観る為に、時期を合わせて来た所、見事に当たったようだ。
ちょうど、混雑する連休明けに満開になるあたりが、何か「天からの配慮」を感じる。
サイクリングをしている外国人の姿も多い。
そりゃ、北海道の雄大な自然、美しい湖をバックに、さながら天国のような桜風景。
地球の反対側からだって、観に来たくなるだろう。
日本は「桜の国」として、世界的に有名みたいだし。
僕達は、桜の並木道を、洞爺湖を観ながら、思う存分、歩き回る。
幸福のスケールのデカさが、さすがは北海道である。
ここでは、桜と梅が同時に咲き、お隣の壮瞥町で、洞爺湖を見下ろす斜面いっぱいに咲く梅の花が、また見事だ。