表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
173/280

幸せの北海道

「風薫る 蝦夷地に立ちて 桜舞う」


 と、詠んでいたのは、つい二日前。


 時に、大学三年生になったばかりのGW明け。


 僕と佑夏、翠に斎藤ミユちゃん、須藤と彼の彼女、そして、佑夏の弟、隼君。

 男女七人で、北海道に行ってきたのである。


 中学二年生なりたての隼君は、もう身長で、姉を追い越している。


 目的地は、札幌と函館の中間に位置する伊達市、そして、そこからほど近い洞爺湖。


 伊達市には、「シュタイナー教育」の教員を育成する、国内唯一の施設があり、勿論、隣接してシュタイナー学校がある。


 ここが、今回の宿泊地だ。


 佑夏は、海外のありとあらゆる教育・知育法を徹底的に研究している。


 シュタイナー教育の他にも、モンテッソーリ教育、イエナプラン教育、ピラミッドメソッド幼児教育など、興味の対象は実に多種多様である。


 どちらかというと、こういう教育法を批判的に教え込まれている県教大(ケンキョー)の同級生達とは、今一つソリが合わないのは、致し方無いのかも知れない。


 それでも、県教大(ケンキョー)生である佑夏と、斎藤ミユちゃんは、大学に教育施設の視察という名目で、短期の休学願いを出したところ、簡単に了承されたと言っている。


 僕と翠と須藤は、しょせんは十流学院大(ジューガク)なので、その辺りは適当である。


 飛行機で、千歳空港まで行って、現地でレンタカーを借りるのが、最も手っ取り早い。

 しかしながら、極度の高所恐怖症であられるのが、我が姫君だ。


 彼女の実家のワゴン車を、僕と、須藤の彼女を除く大学生が交代で運転し、青森県の八戸から苫小牧港まではフェリーに乗る。


 車の免許が無いのは、僕と隼君と、須藤の彼女。

 他の四人は、既に、取得済みだ。


 行きの車中、佑夏の弟(はやとくん)による、姉についての「暴露話」は、僕達の爆笑を呼ぶ。


 姫が小六の時、近所の幼稚園児の子が、ジャングルジムのてっぺんに登って下りられなくなり、ジムの鉄棒にしがみついて泣きわめいたと。


 それを見た佑夏は、すぐにジャングルジムに駆け上がり、園児を抱き上げて、下の友達に手渡したまでは良かったのだそうだ。


 しかし、今度は彼女本人が下りられなくなり、園児の再現のように、ジャングルジムにしがみついて大声で泣きわめき、下ろすのに一苦労だったという。


 佑夏の泣き声があまりに大きかったもので、それを聞きつけた人々が、周囲の家からゾロゾロ出て来ると、

 口々に「お嬢ちゃん、大丈夫?」と声をかけて、寄ってたかって助けてくれた、と隼君が語ると、僕達の笑いは最高潮に達する。


「ちょっと!隼~!!!」


 姫は弟を止めようと叫ぶが、この時、ハンドルを握っていたのは彼女本人だったもので、どうしようもない。


 助手席の斎藤ミユちゃんは、「そんな白沢先輩もカワイイ!自分は高い所が怖いのに、子供は助けるのね、優しいわ。」と言いたげな目で、ウットリと佑夏を見つめている。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ