幸せの翼
こたつテーブルの上には、蜜柑のカタツムリ。
時に、今はスキーシーズン終盤である。
僕は知らないが、かつて、日本中がスキー人氣に沸いていた時代もあったらしい。
しかし、今では、東北でも閉鎖になるスキー場が相次いでいる。
まあ、興味無いし、どうでもいいんだけど。
僕は、生まれてこの方、一度もゲレンデに立ったことがない。
ん?姫の地元には、県内で最大の老舗スキー場があるのに、彼女から、一度もスキーの話を聞いたことが無いな。
何でだろう?ちょっと氣になる。
「佑夏ちゃん、そういや、スキーやらないの?」
「え!?スキー!?」
急に、姫はドギマギし始める。
「うん。○○(地元スキー場)で、体育の授業とかで、子供の頃、やらなかったの?」
「私、高い所、全然ダメなのよ!怖くてリフトに乗れないの!
お父さんに、先生に話してもらって、スキーの授業の時、下で雪ダルマ作ってたわ。」
なんと!?驚愕の笑いネタではないか!
全てにおいて、この子はパーフェクトな女性と思われたが、意外な弱点があったんだな。
「ホントに!?それじゃ、ケニア行く時、飛行機に乗れるの?」
これは、やはり、笑ってしまう。
「そ、そんなに笑わないでよ。そーなの、本当は、飛行機、すごく怖いの。
窓から遠い、真ん中の方の席にして、目はつぶってようと思うんだけど。」
雪のように白い彼女の肌が、恥ずかしさで、みるみる赤く染まる。
「せっかく空を飛べるのに、勿体ないよ。
それにさ、佑夏ちゃん。自分が先生になって、スキーの授業に生徒を引率することになったら、どうするの?」
僕の膝の上の楓が、「そうよ!」と同意するように、ニャ~!っと鳴く。
「そーなのよ!どーしよー?」
「ちょっと、待って。」
僕はスマホで検索する。
「K市のグライダー場、一回の体験だけなら、そんなに高くないね。二人乗りのグライダーもあるし、ここで特訓しようか?
俺が奢ってあげるよ。」
「ええ~!?」
いつも余裕の佑夏が、珍しく動揺している。
意外と、こんな顔も、女の子らしくて、可愛い!
「私、ジ〇リの、昔のアニメで見て、ああいう白い翼で、空を飛べたらいいな~、なんて思ってたんだけど、夢のまた夢だわ。」
「だったら、実現しようよ。教える子供の為にも、高所恐怖症は克服しなきゃ、白沢先生。
それとも、バンジージャンプにする?」
「やだ~!絶対、無理~!グライダーがいい!」
「アハハ!決まりだね。」
(おい、ジンスケ。あんまり佑夏をイジメるなよ。)
(イジメてなんかないだろ。佑夏ちゃん、少し嬉しそうじゃないか。)
また、しゃしゃり出て来た、ぽん太を諭す。
いつの時代でも、お化け屋敷や、絶叫マシンで悲鳴を上げる女の子を優しくエスコートしてあげるのは男の夢であり、ロマンである。
女性には、ちょっと分からない快感だろう。