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世界は脆いけど.......

「中原くん、アンコールの一番最後に演った曲。私、自分で訳してみたのよ、ちょっと、見てくれない?」


「うん、分かった。」


 今のところ、これが佑夏と一緒に聞いた、最後の彼の曲となっている。


 中米の国で、貧しい人々の援助の為、水力発電技師として働いていたところ、現地の武装集団に殺害されて、20代の若い命を散らしたアメリカ人男性へのトリビュートとして書かれた曲である。


 911や、パリの同時多発テロでも、歌い継がれている。


 佑夏とは、あれが最後だなんて、思いたくない。

 また、二人で、何度でも生で聴きたい名曲である。


「この曲、アマゾンのジャングルの、インディオさん達のお家に行って、そこでも歌ってるのね。

 中原くんに聞いた、森林保護の為の行動だわ♪」


 インディオまで、さん付けか。

 佑夏はさらに、本を見ながら、絵本の読み聞かせ口調になって、


「インディオの戦士さん達は、羽根の飾りを付けて、川の精霊の踊りを踊った後、彼に”お前の番だ!”と言いました。

 この人は、ちょっとドキドキしましたが、お鍋やお釜を伴奏にして、歌を歌うと、戦士さん達は、とっても喜んでくれたのです。

 

 いいお話よね~!言葉がつうじなくても、分かり合えるんだから。私、こういうの、大好き!」


「ああ、そうだね。俺もだよ。それじゃ、佑夏ちゃんの訳、見せてくれる?」


「は~い!どうかな?」


 佑夏からスマホを受け取るや否や、僕がすぐに「いいね!」と言ってしまうと、


「もぅ~!全然、読んでないじゃない!ちゃんと見てよ!アハハ♪」


 大笑いの姫。

 僕が彼女の書いた物を、悪く言う訳、無いのに。


「教育実習の英語の授業で、生徒(みんな)に訳してもらおうかな?」


「それいいよ!感性は一人一人違うから、面白いと思うよ。」


(おい、ジンスケ。イチャついてるところ悪いがよ。そうやって笑っていられるのも、今の内だぜ。)


(分かってるって。波のナントカだろ?耳ダコだ。)


 ちなみに、これが佑夏の訳である。



 ”たとえ、肉体と鋼が一つになって、血が流れたとしても


 夕陽のような色に乾き、雨は洗い流してくれる。


 だけど、私達の心の中には、ずっと何かが残り続けていく。


 私は思う。

 この最後は、暴力からは、生まれることは無く、どんないい結果を得たりもしないという一生の議論を決定づけるのだと。


 怒れる星。その元に生まれた全ての人達の為に。


 私達がいかに弱く、脆い存在であるかを忘れないように。


 星からの涙のように雨は降り続ける。そして語り続ける。


 私達の弱さと脆さを。”





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