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幸せの本

「キャー!中原くん!この本、見て見てー!!」


「ど、どうしたの!?佑夏ちゃん!?」


 大学二年の冬も、もう年の瀬、12月。早いね~。


 いつものように、ぽん太の世話にやって来た彼女が、開口一番と共に、一冊の本を差し出す。


 あ!


 表紙には、一年前、去年の冬、佑夏と一緒にコンサートに行った、イギリス人男性アーティストの姿が!


 題名は、「熱帯雨林保護を訴えるアーティスト」+彼の名前。


 真新しい帯には、「児童学習書」、「小学校高学年向き」との文字がある。


「児童書なのよ!コレ!すっっごく面白かった!絶対、教育実習に持っていくわ~!

 ゛先生、この人のコンサートに行ったのよ~!“ってね。

 ホントに連れてってくれて、ありがと~!」


 教育実習か。まだまだ先だと思ってたけど、いよいよ近くなって来たな。


「ま、まあ、上がってよ。」


「うん、ありがと。お~い!ぽん太~!元氣~?」


 今日の佑夏は、冬に合うブラウンカラーでまとめている。

 ウールタッチの暖かそうなコート、セーター、ロングスカート。

 しかし、今さらだが何着ても似合う人だ。


 決して高価な衣服は着ない姿勢が、余計、品位を尊く上げている印象を受ける。


「それじゃ、中原くん、一緒に見よーか。」


 恒例となっている、猫二匹を膝の上に乗せながらの語らい。楓を抱いた僕に、ぽん太を抱いた佑夏が膝を寄せて来る。

 本を二人で見る為、いつになく距離が近い。


 彼女の髪と肌の甘い香りが至近距離で、鼻から入ってくる。心地良くて、脳がトロけそうだ。


(おい、ジンスケ。氣持ち良さそうにしてるがよ、この子(ゆうか)と一緒に居られるのは、オレのおかげだぜ、邪魔だなんて、思うなよ。)


(だから、誰もそんなこと言ってないだろ、被害妄想すんなって。)


 にゃああ~ん!ぽん太は、また佑夏には甘ったるい声を出している。似合わないんだっつーの。


「ねえ、この人、小学校の先生だったんだって!知ってた?中原くん?

 私と、不思議なシンクロよね、偶然と思えなくて、何だか嬉しいよ。」


「え?小学校?教師やってたのは知ってたけど、”高校教諭”って曲があるから、ずっと高校の先生だと思ってたよ。

 あ、あと”シンクロパレス”って曲もある、確かに、偶然とは思えないね。」


「ん~、運命だったのかな?アハハ!

 それでね、ほら、ここ!子供達に、文学や音楽の手ほどきをするのは、とってもやりがいのあるお仕事だったんだって。

 ミュージシャンになりたい生徒には、感謝されるくらい、自信を付けさせてあげたお話も、素敵よね~!」

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