予想外のプラン
「仁助さん、ここ!」
スマホの画面で、佑夏が、パークロッヂの公式サイトを見せてくれる。
驚いたのは、彼女の次の一言だ。
「ねえ、明日、パークロッヂで、もう一泊して、観て行こうよ!」
「え!?何言ってんの?佑夏ちゃん!?明日は教員採用試験の合格発表だろ!?
それに、もう、帰りの高速バス、予約してあるし。」
時として、女という生き物は、思い立つと、男より行動が早い。
「おかん、ウチも行きたい~!」
姫につられたか、理夢ちゃんは、ルミ子さんに駄々をこね初める。
「アホ、これ以上、亭主を一人にしとけるか。今度、三人で来る時や」
「しゃあない、分かった。絶対やで。」
にべもなく、却下されてしまう理夢ちゃんだが、吉岡一家はお金には困っていないのだから、いつだって来れるだろう。
ただ、売れっ子で、忙しいご主人のスケジュール調整は大変そうだ。
「理夢ちゃん、ごめ~ん!佑夏、先、越しちゃいま~す!
ねえねえ、仁助さん!お部屋、別々に取るから、いいでしょ?また、出直す方が大変だよ。」
「う、う~ん......。」
まだ、決心がつかず、迷って変な声を出してしまう。
宿泊費、乗馬料金は、どちらも並といったところ。
一応、今の持ち合わせで、何とかなりそうだ。
「中原君、婚約者の言うことが聞けないの?佑夏ちゃんが、これだけ言ってくれてるのよ。」
水野さん、あなたは関係無いでしょう?
すると、再び、東山さんまで、
「中原さん、○○県から、またお出掛けになるのは、大変ですよ。
せっかく、白沢さんも、こう言っているのですし、明日、行かれてはいかがですか?
馬が好きなら、必ず、いい経験になります。」
「わ、分かりました。佑夏ちゃん、じゃあ、明日、行ってみようか?」
「やった~!電話予約だけみたい、今、かけてみる!外乗も付けるね。」
結局は、押し切られてしまい、佑夏は廊下に出て行く。
しかし、ここで、彼女に対し、初めて、僕は疑念を抱いてしまう。
付き合ってもいない男と二人で泊まり?今回のヤマネツアーのような、団体旅行ではない。
まともな女性のすることではないよ。
潮崎一馬氏という相思相愛の男性がいながら、一体、どういうことだ?
いくら、この後に僕には別れを告げるつもりだとしても、それじゃ、フッた男と浮気じゃないか?
他の男と二人で泊まりなどと、潮崎氏に申し訳ないとは思わないのか?
また、これだけ引っ張っておいて、一緒に宿泊までして、僕には「潮崎さんと一緒になるから、さようなら~。」などと、言うつもりだとしたら、いくら僕を異性として意識しておらず、ただの友達だと思っているからといって、あまりに配慮に欠ける行為と言わざるを得ない。
これでは、僕と潮崎氏に対する二重の不貞ではないか。
だが、潮崎氏については神野翠は僕に言った、「まだ分からない。ちゃんと、佑夏の氣持ちを確かめたのか?」、と。