幸せの馬大国
「中原さんと、白沢さんは、馬が好きなんですか?」
佑夏のリアクションを見て、東山さんが聞いてくる。
「ええ、まあ.........。」
「はい、仁助さんが大好きなんです!私、時々、仁助さんに、馬に乗せてもらいます。
天使の名前がついた、ちっちゃくて、可愛くて綺麗な白い馬なんです。
すっっごく楽しいです!」
僕と佑夏が、それぞれ答えると、東山さんは、ご推薦をくれる。
「でしたら、一度、行ってみられるといいですよ。大変、いい所です。
ここから、すぐですしね。゛霧ヶ峰パークロッヂ“といいます。
今では、代替わりして、族長の息子さんが代表をやってますがね。」
ちなみに、佑夏は、人のプライバシーに関することは、決して他者に漏らさない。
ここでも、僕が乗馬クラブに研修に行っていること、本当は内定先の企業ではなく、馬の仕事に就きたいと思っていること、などは一言も言わず、ただ「馬が大好き」という表現にしてくれる。
だから、この子は信用できるんだ。
その佑夏は、早速、スマホで検索してる。
「あそこで、東山は、たくさんの人の温もりと優しさに触れ、どうやったら、身も心も満たされて幸福になれるのか、を学んだように思います。
他のスタッフや、お客様との会話も楽しかったです。
信州の森の中を馬に乗って歩くのは最高ですよ、子供の、初体験のお客様も大喜びしますね。」
「どうやったら幸福になれるのか?」そう聞いて、佑夏のスマホをいじる指がピクッと反応する。
しかし子供に、外乗やらせるのか?ということはサラブレッドではない。
いきなり、馬を鞭でひっぱたいて、速足で走らせ、激痛のハミで止める虐待的なやり方はしてないか?
「初体験の子供に、最初から速足で走らせるんですか?」
これは氣になり、僕が聞いてみると、東山さんではなく、小林さんが逆に質問してくる。
「中原さん、乗馬ライセンスの四級はお持ちですか?」
「いえ、五級だけです。」
「なら、速足はやりません。パークロッヂで速足は、ある程度、基礎が出来ていて、四級をお持ちの人からです。」
僕と、小林さんのやり取りにルミ子さんも入る。
「小林さんも、そこ行かれたこと、あるんですか?」
「はい、何度もあります。パークロッヂの乗馬技術は高いです。一般の観光牧場とはレベルが違いますよ。」
小林さんが、そう言うなら、基礎を重視した馬本位のやり方をしていると見て、間違いなさそうだ。興味あるな。
ここでまた、御大の東山さんが、元スタッフとしての情報をくれる。
「手作りの建物に泊まっていただくのが、また評判いいんですよ。
パン、味噌、ジャムなんかは自家製でね、既製品より、はるかに美味しいです、比べ物になりませんね。
食べ切れないくらいの、食事の量が出てきます。」