表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
153/280

森の盗人

「ヤマネは、そんなに簡単に撮れるものではありません。確率は10回行って、一回撮れれば、いい方です。」


 ええ~!?そんなに撮れないの?東山さんの告白に、顔を見合わせる僕達。


「ボーナスも退職金もありませんし、動物カメラマンになりたいなんて人は少ないですよ。」


 本当に決死の覚悟で、危険を冒して、大自然の風景を撮ってる人もいるよな。

 ロシアでの撮影で命を落とした、月野和夫さんへの印象を聞いてみたい、だが、今はヤマネの話だし、後にすることに。


 水野さんがフォローする、この人は横浜(とかい)でストレスを抱えながら、給料で暮らす生活に疲れているから。


「でも、東山先生、頑張ったおかげで、今は、こんな素晴らしい、素敵な生活をされてるじゃないですか。」


 山田さんも加わる。


「東京で、お金で生活するのも、大変ですよ、ほとんどの人は生活が苦しくて、お金に困ってます。」


 すると、東山先生は、ちょっと故郷の話を入れる、出身地は著書に掲載されていて、僕達は知っているよ。


「私は、滋賀県の出身で、琵琶湖の湖畔で育ってまして、一度も都会暮らしはしたことがありませんし、ずっと自然の中で生きたいと思っています。


 お金を求めて、森を離れたいと考えたことは無いですね。


 専業で撮影だけで生活できるようになったのは、最初の写真集の”霧ヶ峰の子ギツネ”が出てからです。」


 ここで、宿の女将さんが口を開く、


「写真集が出るまで、大悟さんは、この山小屋で他の仲間と一緒に働いていたんです。」


 そして、先生は当時を回想し、


「近隣の山小屋で働いていた仲間が、何人か出版社に就職したんです。

 そのツテで、何とか本を出すことが出来ました。

 本来、出版には何百万円も自己資金が必要で、それが無かったら、とても無理でしたね。」


「東山先生、それはご自身で引き寄せた運です、お人柄の賜物でしょう。」


 小林さんが微かに、笑顔を見せる。


「ありがとうございます、でもね、森では恐ろしい者に出くわすこともあります。」


「オバケですか?」


 東山先生の語りに、佑夏が突っ込み、同時に理夢ちゃんを見て、姫はニコっと笑う。


 見られた女子高生は、キャッ!と悲鳴を上げ、両手を胸の前にくっつけているが、東山先生が言いたいのは別だった。


「それもありますが、夜中の一時頃に、森で三人組の男を見たんです。手にはスコップを持っていました。」


「高山植物の盗掘ですか?けったいな奴らですなぁ。」


 ルミ子さんは、憤る。


「はい、そうでしょうね。ちょうど、紙とペンを持っていましたから、”何の為のスコップだ?”と書いて、通り道に貼っておきました。

 次の日、行ってみると、丸めて捨ててありましたよ。」


 そんなこと、やっていても、財は為せないのに。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ