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メタボヤマネ

「沢沿いの広葉樹の森の中にヤマネがいると分かりましてね、だんだんと巣も見つけられるようになりました。巣は、昼間の内に探して見つけておくんです。」


 さらに、東山さんは、ヤマネの巣の状態や、見つけ方も教えてくれる。

 だが、あまり他言したくないのだという。ヤマネに害を為す人間も多いからだ。


 だから、ここでは、あまり詳しいヤマネの発見方法は述べることは出来ない、勘弁して欲しい。

 こちらのカメラマン殿は、僕達を信頼して教えてくれたのだから。


「やっと、五年ぶりに自力でヤマネを見つけられるようになったのですが、その後、霧ヶ峰と八ヶ岳の山小屋からも連絡が来るようになったんです、”中にヤマネがいるから来い”ってね。」


 東山さんの写真集には、山小屋の天井を歩き回るヤマネの姿も収録されている。


「客用の布団の中で、子育てしてるんだそうです。毎日、決まった時間に部屋の中に出て来るのだそうでしてね。

 宿の主人と椅子に座って待ってると、ヤマネが出て来たんですよ!自分のあの苦労は何だったんだ!?と思いました。」


 苦笑する東山さん。


「でも、森をバックにしたヤマネの写真の方が、ずっと素敵ですよ。」


 全員が、水野さんの言葉に同意する。


「先生、写真集に出てる、えらい太ったヤマネは、フクロウやキツネに食べられなかったんですか?ウチ、ずっと心配やったんです。」


 今度は、理夢ちゃんが不安氣な顔を東山さんに向ける。


 写真集には、とてつもなく太ったヤマネが登場するのである。


 隣で、まだお菓子を食べている佑夏を、僕は横眼で見てみるが、ダイエットなど、まるで頭にないかのようだ、なんで太らないの?佑夏ちゃん?


「ああ、あのヤマネはちゃんと冬眠して、春に活動始めるところまで、確認しましたよ。

 体重を計らせてもらったら、他の冬眠前のヤマネの三倍もありました。お腹の毛が擦り切れてましたね。」


「ああ、良かった!」


 東山さんの答えに、理夢ちゃんはひどく安心している、この子、本氣で心配していたようだ、優しい子だな。


「あのヤマネは、一歩、歩く度にフゥー、フゥー、と息を吐いて、周りをキョロキョロ見て、歩くのもやっとだったんです。

 後にも先にも、あんなヤマネを見たのは、一度きりですね。」


 ここで、姫はやってくれると思ったが、やはり、


「東山先生、こんな感じですか?」


 写真集の「メタボヤマネ」を真似て、写真と同じ、木に頭から寄りかかっているポーズをしながら、佑夏はフゥーフゥー息を吐きながら、首と大きく見開いた目をキョロキョロ振り回している。


 美人が、こういう「ヘンな顔」をすると、半端なくおもろかったりする。


「あの、白沢さん、どうして、そんなに似てるんですか?」


 撮影した東山さんが笑い、僕達の笑いで山小屋の夜は彩られていく。





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