表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
142/280

乗馬天国

 半径は10mもないトラック、ゆっくり一周した後、次の段階に移る。


「佑夏ちゃん、目を閉じてみて。」


「ん?は~い♪」


「そしてね、アリエルの動きを感じるんだ。馬も、佑夏ちゃんの考えてることを感じ取ろうとするから。

 だんだん、二人の動きが一体化してくるんだよ。」


「分かりました~。」


 しばし無言で、佑夏とアリエルは歩き続ける。


「どう、佑夏ちゃん?」


 目を閉じたまま、微笑んで佑夏は答える


「うん!なんだか、蹄の先まで、アリエルちゃんの身体、感じるわ!フワフワ、天国にいるみたい、何だか不思議!」


「よし!もう、目を開けていいよ。サラブレットじゃね、こういう訓練は出来ないんだ。

 それじゃ、外に出るよ。」


「やった~!アリエルちゃん、行こうね~!」


 ゲートを開け、僕がアリエルを引いて、外乗コースに向けて歩きがてら、馬上の佑夏に解説をする。


「最初から、馬を強引に走らせたり、急に止まらせたりする練習ばかりしてると、初めの内は面白いんだけど、すぐ飽きるんだよ。


 一見、地味に見えるけど、こういう、馬と一体化する訓練から入ると基礎ができて、後に繋がるんだ。」


「へぇ~、何だか深いお話ね~、アリエルちゃん~!」


「サラブレットは、外乗は出来ないからね。競争馬だから、グループで行くと、本能で他の馬より前に出ようとするし、ちょっとした物音や、狐や蛇みたいな生き物が横切ると、驚いてパニックを起こすんだよ。」


「そうか~、アリエルちゃんは蛇が怖くないんだね~!偉いな~!」


 そういって、白馬のたてがみを撫でる彼女は、乗馬を楽しむ人、特有の「悪魔祓いから解放された人間」のような生き物への慈愛たっぷりの優しい笑顔になっている。


 美女と白馬に笑顔、いや~、似合う!


「ここは、サラブレットもいるけどね。引退した競走馬を引き取ってるんだよ。

 サラブレットじゃないと、競技会には出られないし、乗馬ライセンスも取れないからね。」


「中原くんはライセンス、持ってるの?」


「一番下の五級だけ。本当は、インストラクターの指導ができるのは三級からなんだけど。

 サラブレットがいなくて、ポニー馬だけで、外乗中心の乗馬クラブだと、スタッフが誰もライセンス、持ってない所もあるね。


 ここみたいに、サラブレットとポニーが半々いるクラブは珍しいんだよ。」


「そうなんだ、中原くん、いい所を見つけたんだね。」


「探し回った訳じゃないんだ。他のクラブで、疑問がある所を消していったら、ここに辿り着いた感じかな?

 ここは、ポニーで外乗の時は、ハミも使わないからね。」


「ハミ?」


「馬の口に入れて、止める時に使う、金属の棒だよ。手綱の先に着けて、走ってる馬を止める時に思いっ切り引くんだ。

 馬は、すごく痛いんだよ。」


「え~!?痛そ~!」


 姫は、ひどくショックを受けたご様子だ。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ