馬かサッカーか
「猫達が 団子になりて 冬来たる」
と、一句詠みたくなる季節だ。
去年同様、ぽん太と楓が、猫団子になって、丸まっている。
佑夏と苺奈子ちゃんと、台風の夜を過ごしてから、一か月。
11月ともなれば、東北地方はすっかり冬になっている。
だが、同時に乗馬のベストシーズンの始まりでもある。
馬は、暑さには弱いが、寒さには強い。
僕は、中学時代、馬の道に進むか、サッカーを選ぶか、岐路に立たされていた。
学費免除のスポーツ特待生の推薦で、私立高校なら大丈夫だ、と、サッカー部の顧問の先生は言ってくれた。
しかし、途中でサッカーに挫折してしまえば、私立の高額な学費は、とても払えない。
だが、何とか、月謝だけでなく、高校の学費まで無料で面倒みてくれる、他県のJリーグユースのセレクションに残ることができた。
行くならこっちだ。
うまくいけば、高校生でプロ契約できるし、選手としてデビューできなくても、大学へ推薦で行ける上、スタッフになってクラブに残る道もある。
サッカーのレベルも高い。
だが、やはり、諸費用が、我が家にとっては高額過ぎる。
悩んだ末、結局は、バイトしながら、自分で授業料を払い、普通高校に通うことを選んだ。
僕は馬と自然が好きで、そちらの道を取ることにしたのだ。
その後、大学に進めば教員免許も取れる。
高卒よりは、役に立つだろう。
高校に馬術部は無く、この頃から、乗馬クラブにボランティアで通い、代わりに無料で馬に乗せてもらっていた。
華やかさこそ無いが、自立した充実した高校時代だったように思う。
それでも、毎年、冬になると思い出す。
寒さの厳しい、東北地方の冬の新聞配達は、本当に辛かったことを。
吹雪や大雪の日は、配達が終わらず、学校を丸ごと休んだこともあり、休みまでいかなくても、いつも、疲れて登校前には既にクタクタだった。
どれだけ成績に影響があったかは、説明するまでもないと思う。
しかも、他のバイトとは違い、新聞配達は定期テスト期間も休めないのだ。
そんな折、あれは、高二のちょうど今頃だったか、いつも新聞配達している途中に出会う、猫の親子の仔猫が、親猫に見捨てられていたのを見つけた。
親が諦めたくらいだ、もう助からないのは分かっている。
しかし、身体にウジがわいて、苦しんでいる仔猫を、そのままにしておけず、病院に連れて行くことにした。
今月の授業料の支払いはまだ。
しかし、給料日前で金欠などとは、言っていられない。
幸い、今日は日曜日で、学校は休みである。
仔猫にたかっているハエを払う、いったん家に連れ帰って応急手当をしてあげなくては。