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幸せのダンス

どんどん強くなる雨と風。


 しかし、佑夏の「課外授業」は、これで終わりではない。


 「中原くん、手拍子してくれる?」


 そして、彼女は、自らダンスナンバーを歌い、手を叩いて、苺奈子ちゃんをノせていく。


「よ~し!モナちゃん、はじっコらいふのダンスしようね!」


 今度は何と、踊りの時間だ。


「はじっこディスコ」、「はじっこらいふ音頭」、続けざまにに二曲、苺奈子ちゃんと一緒に踊り始める。


 佑夏が歌だけでなく、ダンスもこの上なく上手かったとは、この時、僕は初めて知って、苺奈子ちゃんも大はしゃぎしている。

 これの為か、今日の佑夏は、いつものようにロングスカートではなく、パンツルックがことのほか似合う。


 本当に、よくある「集団アイドル」よりはるかに上手い!

 冗談抜きで、教師なんか辞めて、芸能界を目指した方がいいんじゃ?


 彼女は、もし東京暮らしだったら、確実に、スカウトされてるだろう。


「モナちゃん、ほら、Dancing~!Dancing~!はじっコディスコ!み~ぎ!ひだり~!ま~え!うしろ~!

 あ~!モナちゃん!うまいな~!」


 姫に、子供でも分かるようなリズムの取り方を楽しく教えてもらって、苺奈子ちゃんはすっかりニコニコ興奮し、ピョンピョン跳ね回ってしまう。


 僕も負けていられなくなり、


「モナちゃん、いいかい?足を出すのと、体重移動は同時にやらないんだ。

 全身の力を抜いて!リズムに合わせて動けるよ。」


 合氣道の原理など教えてあげる。

 二人と三匹に囲まれて、幼児殿は、すっかり有頂天に。


 これは、佑夏とも言っていることだが、苺奈子ちゃんは理解力が、すごく高い。


 僕の家には、この子用に絵本など、幼児向きの本が何冊かある。


 その内、折り紙の本を見ながら、複雑な大人でも難しい折り方を、苺奈子ちゃんは、簡単に理解して折りあげてしまう。


 従って、やはりダンスの飲み込みも早い。

 大いに盛り上がってはいるが、もう、この辺にしなくては。


「佑夏ちゃん、そろそろ、明るい内に帰らないと、危ないよ。今日は、ぽん太の世話は、いいからさ。」


 せめて、駅まで送りたいけど、苺奈子ちゃんを一人には、僕はできない。


(おい、ジンスケ、余計なこと言うんじゃねえ。オレは、これが楽しみなんだ。)


(黙れ!ぽん太!状況見て、ものを言え!)


「ゆーかねーちゃん、かえるの~?」


 ああ、やっぱり。苺奈子ちゃんは、今にも泣き出しそうである、こうなるのは、分かってたこと、とはいえ.......。


「モナちゃん、佑夏お姉ちゃんは、お泊まりはできないんだよ。」


 僕は、苺奈子ちゃんの頭を撫で、目線を同じ高さまで落として、これ以上できないくらい、優しく言ったつもりであるのに。


「やだー!!やだー!!ゆーかねーちゃん!かえってダメー!!!」


 台風の真っ只中、ここまで頑張っていた苺奈子ちゃんも、とうとう大声で泣き出してしまうのである。

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