幸せのぬいぐるみ
な!?な!?な!?何も、こんな日に来なくたって!?一体、何考えてるんだ!?
だが、ともかく佑夏はびしょびしょだ、身体を拭いてあげなくては。
「ゆーかねーーーちゃーーーーん!!!!!」
大喜び、大はしゃぎで姫に駆け寄る苺奈子ちゃん、それどころじゃないよ。
玄関に入る前に、既にたたんでいた傘を佑夏から受け取り、傘立てにさし、レインコートを脱ぐのを手伝って、風呂場にかけてくる。
レインコートの下に、姫は小さめのバックパックを背負っているのが見えた。
「ジンシュケにいちゃん、モナも、おてつだいする~!」
働き者の苺奈子ちゃんは、チョコマカ、チョコマカ動き回り、小さな身体で濡れた廊下を一生懸命に雑巾で拭いてくれる、ハンパない可愛らしさだ。
「ごめんなさ~い!ありがと~!」
やっと、中に上がることができた佑夏が、苺奈子ちゃんを抱き上げながら、お礼を言っている。
「佑夏ちゃん......、何で........?」
呆然とする僕に、まるで台風など意に介さず、いつものように、姫は微笑みながら、
「だって、モナちゃんと、お約束したもんね~♡」
苺奈子ちゃんを、「高い高い」してあげて、幼児殿はキャッキャッ言いながら、喜んでいる。
「い、いや。まず、入って!何か暖かい飲み物、淹れるから。」
佑夏を、僕は部屋に促す。
「は~い、お邪魔しま~す♪」
僕がドアを開け、佑夏は苺奈子ちゃんを抱いたまま、部屋に入ってくれるが。
どうしたらいいんだ?
ココアを淹れながら、僕は考える。
この暴風雨の中、佑夏を外に放り出すのか?そんなことできるか!
しかし、まさか「泊まっていってくれ」とも言えない。
こんな時、車があれば、送っていけるが、僕も母も免許さえ持っていないのだ。
思案に暮れながら、ココアを持って行くと、既に佑夏は髪を拭いたタオルをたたみ、苺奈子ちゃんと三体のぬいぐるみを手に、ニコニコ笑いながら遊んでいる。
「ジンシュケにいちゃ~ん!ゆーかねーちゃんにもらったの!」
三体のぬいぐるみの内、二体を持っている苺奈子ちゃんが、嬉々として僕に佑夏の「作品」を見せに来る。
姫の背中のバックパックに入っていたのは、これだったんだ。
これが、佑夏と苺奈子ちゃんの約束の品、サ〇リオ風のキャラクター、「はじっコらいふ」佑夏手製のぬいぐるみである!
相変わらず、本物より上手くて、センスも抜群だ、苺奈子ちゃんが死ぬほど喜んでいるのも、無理はない。
僕はよく知らないが、何やら数十種類のキャラがいる中、佑夏は、苺奈子ちゃんの大のお氣に入りである、「はいいろくま」、「かもめ」、「みけねこ」の三体を選んで作ってくれたのである。
れっきとした、これでもかというくらいの、丁寧な手作り。
工場で大量生産されたぬいぐるみとはレベルが違う。