大都会の実態
東京には、なんの憧れも、微塵も持っていない僕は、見たまま、ありのままの印象を話す。
「なんか、東京はどこに行っても人が溢れてて、少しでも空いた土地や建物があれば、すぐに高値で取引されて、新築の新しい建物がどんどん建っていくイメージがあったんです。
でも、実際は廃墟も多いし、人がまるでいないゴーストタウンみたいな区域も多く見られました。」
唯一の東京都民である山田さんは、何の反応も示していない。
「ホンマに、金かけて、開発や言うて自然破壊するんやったら、街中の要らへんもの壊して、緑地にして欲しおすなぁ。」
ルミ子さん、リンゴ二つ目。止まらなくなってる。だって、コレ、美味いから。
「そうですよね。
それで、車内で、佑........白沢さんが、スマホで調べたんですよ。
そしたら、元々、日本軍の施設だった所が、戦後、アメリカ軍に接収されて、今じゃそのまま廃墟になってるみたいで。
軍用のパラボラアンテナも、撤去されてないそうですね。
東北地方で、そんなの、無いですよ。」
僕の話に、小林さんが回答してくれる。
「中原さん、仰る通り、そこはF市が、“平和の森“として、緑地化して保全しようとしたんです。
しかし、土地を管轄している国が応じないんですよ。」
ふぅ~、と場にため息が出る。
「結局のところ、行政に期待しても無駄なのです。
小宅知事に意見書を提出しても、徒労に終わります。
廃墟、廃ビルを緑地化し、環境保全しながらも収益化できる企業などが現れれば、追随する経営者も出現するのではないでしょうか。」
小林さんが、自分の意見を述べた時、
「ああ!!」
という声が。
全員で、一斉に声の主を見ると、なんと夕食時から、今まで、一言も喋らなかった山田さんである。
し~ん、としてしまう室内。
しばらく経ってから、ルミ子さんが氣を取り直すように、
「中原さん。話、変わりますけど、今しか聞けへんさかい、聞きます。
白沢さんに、何あないに、遠慮してるんですか?」
「は?」
なんだ、そりゃ?
すると、水野さんまで、もう僕への「敬語・さん付け」は辞め、すっかり、お姉さんモードになって、
「そうね。中原君、佑夏ちゃんが、あんなに尽くしてくれてるのに、何だか、固くて他人事みたい。
佑夏ちゃん、一人で空回りして、かわいそうよ。
まだ告白もしてないのよね?どうかしてるわ。」
え?え?え?
なんで、こんな話に?
それでも、何とか、僕は反撃を試みる。
「い、いえ。白沢さんは、俺だけじゃなくて、誰にでも優しくて、親切な人ですよ。」
(ニャハハ!始まったな!ジンスケ、孤立無援だ!三人がかりだぜ!頑張れよ!)
また、デブな怪猫の声。
東山さんと、添乗員と、女将さんは、笑って成り行きを見守ってくれている。