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幸せのプラグ

「中原くんが言う通り、きっと、武蔵は、いつも普段から、後悔しないような、物の考え方、してたのよ。

 不幸じゃなくて、幸せのプラグを立てるみたいな。」


 姫が、日本史上、最強の武芸者を「評論」する。


「反対にね、ちょっとしたことなんだけど、”不幸のプラグ”みたいなものは、自分自身で作ってるのよね。

 嘘をついたり、差別をしたり、拗ねたり恨んだり。

 

 それとね、こっちから問い合わせたメールに、もう必要無くなってから、返信が来て、そのまま無視したり、こんな些細なことでも、不幸に繋がっていくのよ。

 

 そんな時だって、”もう解決しました~、返信ありがとうございます~”って、お返事するだけでも、”幸せのプラグ”は立っていくわ。」


「あ~、そうだね、思い当たることあるよ。」


 言われてみれば、佑夏の言う通りだ。


「出たくない電話にも、ちゃんと出て、自分の意志をきちんと伝えたりするのも、幸せのプラグを繋ぐのに、大事なんだと思うわ。

 営業の電話なんかは、出なくていいと思うけど、ふふ。

 

 アランも、嫌いな人にも、ちゃんと心を向けること、って言ってるの。

 人を嫌って、避けたり、無視したり、こんなことでも不幸のプラグは、どんどん大きくなっちゃう。

 人を憎んだり、恨んだりするのには、すっっごく大きなエネルギーを使うから、もう、それだけで何もできなくなるのよ。

 周りも巻き込んで、自分も人も不幸にするよ。


 どんな人にも、しっかり、言わなきゃならないことは言って、毅然とした態度で接すれば、それで済むのにね。

 それがきっと、アランの言う、゛幸福の義務゛で。

 

 あ、ごめんなさい、私ばっかり、いっぱい喋っちゃって.......。」


 本当に納得の佑夏の言葉。


「そんなこと無いよ。もっと聞きたいくらいだな。」


「ホント!?嬉しいな!あ、中原くん、私、お茶淹れようか?お庭のハーブ、摘んでもいい?」


 こうして、今日も、お湯加減、濃さ共に最高のお茶の時間となる。

 佑夏が来るのは分かっていたから、僕も100均で僅かばかりのお菓子は、買って来てある。


 佑夏は、持って来た梨も、一緒に剥いてくれる。

 彼女の地元は、県内一の梨の産地である。

 ちょうど、今が収穫期だ。


 近所の農家が地元の付き合いで、安く分けてくれるのだという。


 何だか、スーパーの店頭に並んでいる梨より、ずっと小ぶりでは、あるが、すごく甘い!


「佑夏ちゃん、この梨、何?メチャメチャ甘いよ!」


「エヘヘ、そうでしょ?゛南水゛っていうのよ。とっても美味しいの!

 私も、子供の頃から大好き!」


「へ~、南水ね~、初めて聞いたよ。」


「流通量が少なくて、JAなんかには、卸してないんだけど、ウチは毎年、もらえるのよ。

 ちっちゃいから、持ち運びも楽々で~す。」


「こりゃ、マジで美味い!クセになりそうだ。」


 姫は、去年はブドウを持って来てくれた、やはり地元名産だ。


 極上の南水を頬張りながら、ハーブティーをいただく至福の時間。

 佑夏は手当たり次第にハーブを摘んで来ているのではなく、採り頃を見分けている氣がする。


 そうでなくては、こんなに美味しいお茶にならないと思う。


 これも、持って生まれた才能とか、そういうことでなく、幸せのプラグを繋ぐ、彼女の誠実な生き方があればこそ、ではないだろうか?

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