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県会議員、手のつけらない大暴れ

千尋は、武山さんの下半身を触っていた下田氏の手を取り、「三教」と呼ばれる合氣道の関節技で締め上げてしまう!大変な激痛を伴う技である。


 これは逮捕術として、日本の警察官の必修科目であり、アメリカのFBIでも採用されている。 


「ぐああぁぁ!離せー!この小娘がー!!」


 と、下田氏が叫んでいるように、大の男でも悲鳴を上げるくらい痛い。


「千尋ちゃん!もういいから!」


 武山さんが、この年若な女子大生の袖を引いて止める。


 だが、千尋は止まらない、目には涙を溜めて、悲痛に叫ぶ。


「下田さん!ここは合氣道を学ぶ場です!退場して下さい!」

 

 この子、こんな激しい感情を持っていたのか!?

 自分が命懸けと言っていいくらい、真剣に取り組んでいる合氣道を、侮辱された氣持ちになって、悔しいのだろう。


「鈴村さん!これまでだ!」


 僕は、何とか千尋を下田氏から引き離したが、収まらないのは議員様だ。


 下田氏は、千尋に締め上げられた右腕を抑えながら、凄まじい形相で僕に目を剥く。


「おい、中原!(道場長の僕を呼び捨て)貴様、部下にどういう教育してるんだ!

 今すぐ、鈴村(コイツ)に土下座させて、俺に謝らせろ!」


 いきなり、凄い怒り方だ。

 それにしても、中学生や高校生が真面目に稽古しているというのに、どうして、この年代の男性、それも社会的地位の高い人に限って、こういう手合いが多いのか?


 それでも一応、僕は説得を試みる。


「しかし、下田さん。

 私も見ていましたが、鈴村さんの指導は適切だったと思います。

 申し訳ありませんが、今日のところは、これでお引き取り下さい。

 この件については、また後日、日を改めてお話合いさせていただけませんか?」


 下田氏の目が爛々と燃え、額には血管が浮き出ている。

 ”この若造が!俺を誰だと思ってるんだ!”そんな台詞がありありと顔に書いてあるようだ。


「そうか、分かった!謝らんのか。

 お前は、女に触りたければ、キャバクラにでも行けと言うんだな!(僕は、そんなこと言ってない。)

 俺に無礼を働けば、どうなるか、教えてやる!」


 下田氏は、そう捨て台詞を言い残すと、ズカズカと音を立て、合氣道の決まりである正座の礼もしないで、会場を後にして行く。


 僕がまだ生まれる前、まだ父が白帯だった頃から会場として利用している、この県営体育館を、県の方から、利用禁止にされたのは、それから間も無くのことである。

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