県会議員、大暴れ!
まだ、何も言っていない内から、もう分かっているとは、察しが良く、話が早い。
しかし、それだけ目につく問題なのである。
それは、一言で言えば「セクハラ」。
残念だが、男性の場合、たまに女性に触る目的で入って来る人がいる。
「え?もう分かるの?凄いね。」
驚く僕に、
「私も、これ以上、放っておけないと思ってましたから。」
事も無げな千尋。
この話の「主犯」は、この六月に入門したばかりの県会議員、下田欲蔵氏(62)。
普通、合氣道で、初段、黒帯となり、袴着用が許せれるのは、個人差はあるが、早くても三年はかかる。
だが、下田氏の公式HPのトップページには、合氣道着の袴、黒帯姿の自分の画像がupされ、「合氣道の修行に打ち込んでいます。」みたいなことが書いてある。
有権者へのアピールの為に始めたのだろう。
にも関わらず、この人の稽古態度は決して褒められたものではない。
というより、最悪である。
まず、全く、合氣道に取り組むつもりが無い。
稽古中、ずっと一人の女性にベッタリ付きまとい、口説いたり、身体に触ったり、呑みに誘ったりしている。
議員という立場上、大っぴらに、風俗やキャバクラに入り浸る訳にはいかないのだろう。
お触り目的であっても、「合氣道に行く」と言えば、奥さんの目も誤魔化せて、有権者への印象もいい。
考えたものだ。
「鈴村さんには、しばらくの間、武山さんと組んで欲しいんだ。」
「はい。私も、そのつもりです。」
僕から、言われるまでもなく、千尋は既に心得ている。
何しろ、この子は後に、怪猫ぽん太をして、「佑夏より聡明」と言わしめる、立派な武芸者なのである。
まだ若い女の子とはいえ、心意氣が違う。
セクハラの「被害者」は40代の独身女性、武山小夜子さん。
三年前に入門した武山さんは、とても熱心に稽古する人で、入ってからというもの、メキメキ、猛スピードで上達し続け、黒帯まで、あと一歩のところまで来ている。
この人は千尋とは、大変、仲がいい。
真剣に、合氣道に打ち込む者同士、ウマが合うのだろう。
バツイチなのか、元々、シンママなのかは知らないが、この女性には、引きこもりの息子さんがいる。
そこで、下田氏は、経済的支援をちらつかせ、武田さんに関係を迫り続けているのである。
何しろ、下田氏ときたら、大手ゼネコン出身で、県会議員五期連続当選を誇る、県議員連の中でも、大物中の大物だ。(そして、本人はそれを鼻にかけている。)
金なら、唸るほどあると想像される。