観光立国
さらに、話は大いに盛り上がり、サッカーW杯日韓大会は隣国の惨状に比べ、日本会場は各国選手団にもサポーターにも大好評で、その後の我が国の海外からの観光客、大幅増に繋がったという点に及ぶ。
当時の首相は、大会後、観光立国宣言をしている。
世界一と言われる治安の良さ。
諸外国では見られない、日本特有の心のこもったおもてなしの精神。
国中、何処に行っても、ゴミ一つ落ちていない衛生的な国土。
リーズナブルな美味しい食事、やはり欧米に比べ格安な上、設備の整った清潔なホテル。
人間が暮らすのに適した自然環境に気候。
フレンドリーで世界各国のサポーターと平和的に交流する国民性。
これらが、世界の人々の心を掴み、W杯日韓大会(あくまで日本会場のみ)は、大成功だったのだ。
どうでもいいことだが、そこ行くと隣国は、有名な主審買収疑惑に加え、滞在中の他国チームへの嫌がらせも酷いもので、国際サッカー連盟の中では、日本の単独開催にすべきだったという声も多かったと聞く。
「コスタリカは、環境を保護したエコツーリズム、観光立国で成功しています。
やはり、日本もそちらに舵を切るべきではないでしょうか。」
意見を述べる小林さん。
「小林さん、それはそうなんですけど、コスタリカもそこまで行く間に、外圧をはねのけるのに、かなり苦労したようですよ。」
僕は、これでも、大学の学部がそっち系である。
大規模環境破壊の裏には、必ず多国籍組織がいるのは知っている。
理夢ちゃんが聞いてくる。
「中原さん、どないなこっとすか?」
僕のことは、「先生」じゃないのか?まあ、いいけど。
「日本に限ったことじゃないんだけど、国が環境に配慮した観光産業主体にシフトされると、都合の悪い人達も沢山いるんだよ。
例えば、T◯Lや、U◯Jは入場者が減るし、身体に悪い食品は売れにくくなるからね。
税金使って国中で環境破壊ばっかりやってたら、国力も弱まるし、外国から観光客も来なくなって、国はどんどん落ちぶれていくけど、ライバル国にとっては好都合なんだ。
ぴょんぴょんにも、そういう話、出てくるだろ?」
僕なりに答えてみる。
一応、自分だって教員免許を持っているのだ。中学のだけど。
吉岡総司氏の作品は、時折、こういう地球規模の環境破壊についても、小学生の読者にも分かり易く解説する為、国会でも議員の間で話題になっているのである。
「ああ、そうですなぁ。」
納得の女子高生。
さらに、僕に小林さんが追及してくる。
「すると、20世紀最大の環境破壊とされる諫早湾干拓事業の裏にも、外国資本があるとお考えですか?」
「もちろん、僕達が自分自身で解決しなくてはならない問題ではありますけど、その可能性は高いでしょうね。」
そう答えると、
ここで、初めて、ディーンフジオカ添乗員が口を開き、
「中原様、なにか"ボルボ14"に出て来る話みたいですね。」
ちょっと苦笑している。
「ねえねえ、中原くん、ボルボに、”用件を聞いて”もらったら?」
佑夏がボルボの決めゼリフを知っているのは驚いた。
女性で、あの漫画、読んでる人いるのか?
「佑夏ちゃん、ボルボなんか読まないだろ?」
困惑する僕に、
「エヘヘ、雰囲気だけは分かるのよ。」
相変わらず、能天気な姫である。