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第1話 事始め

夜のビルの屋上で、少女は眼下に広がる光景を何の感慨もなく見下ろしていた。

 やがてその闇に吸い込まれるように足を踏み出す。

「待って!!!」

 いつの間にか少女の背後には女が立っていた。

 少女は一瞬ピタリと足を止め、背後をちらりと見やるが、

 声の主を知っているが故に驚きも何もなかった。

 再び自身の為そうとしていた事に意識を向ける。

「アンタが死んだらお母さんどれだけ悲しむと思ってるの!?お願いだから―」

 その言葉は少女に最後の決断を促すのに十分な挑発だった。

 そうとも知らず、まくしたてる母親の言葉はもはや耳には入らない。

 少女は母親の方へ向き直ると、見せつけるように地を蹴り、背後の闇へと身を預けた。


「アンタなんか産まなければよかった」

 そう言われて育ってきた。なのに今、母親は真逆のことを言っているのだ。

 きっとそんな言葉で斬りつけたことすら忘れているのだろう。

 だからこそ許せない。罵ったことは都合よく忘れ、死んだら悲しいなどと並べ立てる目の前の存在が。どうせそれも自殺なんて世間体が悪いから言ってるだけ。心からの言葉だなどとは絶対に信じない。もう、何も。


 少女は闇に吸い込まれながら、ずっとそんなことをぼんやりと考えていた。

 それはとても長い時間にも思えたし、一瞬でもあった。不思議な時間だった。

 そしてドンという嫌な音が夜の街に消えた。

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