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【07】 冷たい結晶華   作者: 石田ヨネ
第二章 調査、華と鋸、フロリストについて
10/28

10 何だよ? その、中島君とかが『磯野、野球しよーぜ』のノリで誘うセックスって

 そのようにしていると、

「そういえば、だけどさ? 何を、話そうと思ったんだっけ? 最初、何か話そうとしてなかった?」

 と、パク・ソユンが、思い出したように聞いてきた。

「ああ……? どうやって調べるか――? じゃ、なかったっけ」 

「はぁ、何? すっかり忘れてたわけ?」

「いや、君のカラーコーンに、つっこんだりしたからじゃないか」

「いや、私のカラーコーンのせいなわけ? まあ、いいけど」

 と、確かに、蔓バラのオブジェの前にそびえる赤いカラーコーンで最初の本題が逸れてしまったのを思い出す。

 ただ、過ぎてしまったことは仕方がない。

 人間、なるべく前を向いているべきであり、

「――で? 最初の本題に戻って、さ? どうやって、調べるか?」

 と、ドン・ヨンファが話を進めるべく、問いを投げかける。

「さぁ?」

「さぁ、ってね……、ソユンも、ちゃんと考えてくれよ。まあ、地味に、調査をしていくしかないだろうけど」

「ぽよ」

「いちおう、今回のガイシャのこと、プロフィールなどは分かっているし……、ソユンも、周辺のインフルエンサーや業界の人間からヒアリングしたり、できないかい? 僕も、関連する友人や知人たちと合って、話を聞いてみるから」

「まあ、いいけどさ……、何か、この結晶華事件っての? 計画を練ってした犯行ってよりは、こう、もっと気まぐれにした犯行のような気がしてきたんだけど」

「気まぐれ、だって?」

 と、ふと思いついたようなパク・ソユンの言葉に、ドン・ヨンファが聞き返す。

「何っていうんだろ? まるで、ナンパでもするかのように、あるいは、マッチングアプリか何かを用いて、気軽にターゲットというか、被害者と接近したというか」

「はぁ、何だい? その、チャラそうな犯人像」

「てか、このSNSの投稿ってのも、犯人は――、フロリストは見てるのかしら?」

 と、気まぐれに話を進めていくパク・ソユンに、

「さぁ? どう、だろうね……? ただ、アーティストであれば、自分の作品が世間でどう評価されているかっていうのは、チェックすべきものだろうけどね。まあ、この犯人をアーティストっていうのは、語弊があるけど」

 と、ドン・ヨンファは答える。

 すると、その間に、パク・ソユンはノートパソコンを手にしており、ポチポチと自身のSNSに投稿していた。

「ん――?」

 ドン・ヨンファは、その画面を見るなり、目を点にする。

 そこに、パク・ソユンが書き込んだもの――

『結晶華事件の遺体と、投稿を見ました。少なからず、『自分も作品になりたい』って書き込む人たちがいるけど、そんな風に思うものなのかしら……』

 と、まず、この投稿まではいい。

 いちおう、中立的というか、客観的な疑問を投げかける程度の、差し障りのないものである。

 しかし、問題は、その次の、パク・ソユンがカタカタと打ち込む投稿。

 それによると、

『もし、犯人、フロリストがこの投稿を見ているのなら、私を作品にしてみる? その代わりに、タイ~ホするぽよー』

 と、書き込み終えるなり、

「ヨシッ、投稿――、ポチっとな」

「ヨシッ、じゃっないって――!? や、やめなって! ソユン!」

 と、ドン・ヨンファは、『ヨシ!』と『ポチっとな』の最悪のコンボをキメるパク・ソユンを制止しようとするも、時すでに遅し。

 パク・ソユンの『タイ~ホするぽよー』とのふざけた投稿が、SNS空間上に送信されてしまった。

 完全に、酒の、たぶん酔ったときのノリの混じった投稿。

 それを見て、

「あ、あ~あ……、」

「しちゃった、ね」

「しちゃったね、じゃないし……。もう、何やってんだよ……。どうせ、酒に酔ったノリで、半分ふざけて投稿したんでしょ?」

「いや、だから言ってんじゃん? ふざけているようでふざけてないかもしれないし……、ふざけてないようで、ふざけているかもしれない、って。それに、お酒は絶対やめたって」

「もう、いい……」

 と、ドン・ヨンファは、完全に呆れてつっこむ気すら無くす。

「まあ、いいじゃん。この時間の投稿だし、どうせ、お酒に酔っての投稿って、皆分かるでしょ」

「はぁ、君の、お酒は絶対やめた理論は、ちょくちょく破綻してないかい?」

 と、パク・ソユンが見せるスマホは、確かに、午前の1時を少し過ぎていた。

「それに、もしも、“フロリスト”がこの投稿を見て、何らかの反応だったりアクションをしてくれるなら……、調査も進むから、結果的によくなくない?」

「まあ、そうだけど、さ……」

 ドン・ヨンファは、何か残余感とともに、空になったワイングラスを置いた。

 そうしながら、再びパク・ソユンの姿が目に入る。

 カラーコーンを抱えたり、回して遊んだりとシュールな光景ながらも、あくまで、世の100人中100人が美女だと認める女の姿――

 それを見るに、“あっちの欲”のほうも、それなりに湧いてくるものであり、

「なあ、ソユン?」

「ぽよ」

 と、ドン・ヨンファは切り出す。

「あっちのほうも、して、いいかい?」

「ぽよ」

 と、パク・ソユンはジトッ……とした目で、相変わらずの『ぽよ』で返す。

 ちなみに、このパク・ソユンだが、極度のマグロであるという……

「いや、だから『ぽよ』って、どっちだよ」

 ドン・ヨンファが、どぎまぎしながら言うと、

「まあ、いいんじゃない? てか、するならするで、はっきり言うぽよ。ソユン、ア〇ルセ〇クスしよーぜ! って」

「何だよ? その、中島君とかが『磯野、野球しよーぜ』のノリで誘うセックスって。てか、ア〇ルのほう――!?」

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