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07 【冷たい結晶華】  作者: 非常口どん八
第一章 発端、展示会場にて

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1 雪を思わせるような白いムラというかシミのある、冷たいモルタルの壁




ここで、状態数Wの自然対数をとった関数にボルツマン定数をかけた物理量をエントロピー(≡S)と定義する。


   S≡kln(W)   (4・23)

   ∴ ΔS=kΔln W


つまり、状態数が大きければ大きいほど、その状態をとりうる確率は高くなる。式 (4・23)は状態数が大きければエントロピーが大きくなることを表している。

 ――中略―― 

熱力学第二法則は、孤立系において変化はエントロピーの増大する方向へ進むことを示している。さらに、絶対温度0Kは物質の運動エネルギーがゼロの状態であるので、状態数は1となる。したがって、S₀=kln W=0となる。すなわち、完全結晶において絶対温度0Kではエントロピー値はゼロとなる(熱力学第三法則)。


**『基礎からわかる 無機化学』(西本右子・小棹理子)より




          (1)




 目が覚めると、ひんやりした場所にいた。

 すこし薄暗く、雪を思わせるラ、白いムラというかシミのある、冷たいモルタルの壁。


(ここは、どこだろうか――?)


 と、女は、半ば眠気がのこる頭で、思い起こそうとした。

 昨夜の、途中まで無い記憶―― 

 まさか? 映画『SAW』のように、何者かによって意識を失わせられ、拉致でもされたのだろうか?

 そんな、形状し難い、何か猟奇的なことをされるのでは――? との、おぞましい想像もよぎる。

 ただ、そこにあるのはベッドだけで、身体を拘束されているわけでも無かった。

 すると、


 

「おはよう……」



 と、まだ横たわったままの女の頭上のほうから、“低く重い声”がした。

「――!」 

 女は一瞬、思わずゾッとする。

 脳を、おもむろに掴み、揺さぶるかのような低周波を含んだ声。

 さながら、猟奇モノのようなおぞましさがあるが、同時に、どこか、心地の良い優しさのようなものも感じさせる、不思議な声だった。

 そうして、

 ――ス、タッ……

 と、目の前に現れた者の姿を、女は見た。

 細く見える腕に、抱えられた何か――

 それは、美しい装花の束のようだった。

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