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冷たい結晶華   作者: 石田ヨネ
第一章 発端、展示会場にて
1/28

1 雪を思わせるような白いムラというかシミのある、冷たいモルタルの壁




ここで、状態数Wの自然対数をとった関数にボルツマン定数をかけた物理量をエントロピー(≡S)と定義する。


   S≡kln(W)   (4・23)

   ∴ ΔS=kΔln W


つまり、状態数が大きければ大きいほど、その状態をとりうる確率は高くなる。式 (4・23)は状態数が大きければエントロピーが大きくなることを表している。

 ――中略―― 

熱力学第二法則は、孤立系において変化はエントロピーの増大する方向へ進むことを示している。さらに、絶対温度0Kは物質の運動エネルギーがゼロの状態であるので、状態数は1となる。したがって、S₀=kln W=0となる。すなわち、完全結晶において絶対温度0Kではエントロピー値はゼロとなる(熱力学第三法則)。


**『基礎からわかる 無機化学』(西本右子・小棹理子)より



          (1)



 目が覚めると、ひんやりした場所にいた。

 少し薄暗く、雪を思わせる白いムラというかシミのある、冷たいモルタルの壁。


(ここは、どこだろうか――?)


 と、女は、ℜ半ば眠気が残る頭で思い起こそうとした。

 昨夜の、途中まで無い記憶―― 

 まさか、映画『SAW』のように、何者かによって意識を失わせられ拉致でもされたのだろうか?

 そんな、形状し難い、何か猟奇的なことをされるのではとの想像も過ぎる。

 ただ、そこにあるのはベッドだけで、身体を拘束されているわけでも無いことに気づく。

 すると、


 

「おはよう……」


 と、まだ横たわる女の頭上のほうから、“低く重い声”がした。

「――!」 

 女は一瞬、思わずゾッとする。

 まるで、脳をおもむろに掴み、揺さぶるかのような低周波を含んだ声。

 さながら、猟奇モノのような悍ましさと同時に、どこか、心地の良い優しさのようなものを感じさせる、不思議な声――

 そうして目の前に、そっと現れた者の姿を、女は見た。

 細く見える腕に抱えられた“それ”――

 何か、まるで、美しい装花の束のようだった……

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