お嫁さんとボディーガード
8月になり、家族で海に行った。ブルーベリー狩りにも行った。動物園にも行った。ナッツさんは仕事の休みの度に(日曜日は定休日、他の平日に1日休みがある)私達を遊びに連れていってくれる。他の平日は1日中寝ていたり家の中でじっとしていたりと休息もきちんとしているようだった。
お盆は、父母のお墓参りがあるから、花を買ってお線香やローソク、マッチなどを買って家族を連れていった。遠方から弟や妹も来ていたようで花など供えられていた。二人共まだ独身で仕事が忙しく、なかなか会わない。祖父母はまだ4人とも生きていて、父や母が亡くなった時大層悲しんでいた。
9月になった。9月10日は私の誕生日で、ナッツさんは子供達も含めて宇宙の空間に連れていってくれて、きれいな景色を見せてくれた。ケーキは子供達と手作りしてみた。
幼稚園では【おみこしワッショイ】というのがあり、園児達が自分達でおみこしを作り、幼稚園のグラウンドを練り歩く、というものだった。
平日の昼間だったので、私だけ見に行って、ナッツさんにはムービーをとって後で見せる形になった。
春花も春乃もはっぴを着て、自分達で作ったおみこしを背負って、元気にグラウンドを練り歩いていた。おみこしは、紙粘土や、色画用紙などで作成されていて、かわいかった。
ところで、私は幼稚園のクラス役員になっている。働いてないお母さんに声がかかりやすいそうだ。
10月になった。
幼稚園で、将来何になりたいかという話になり、
春花はお嫁さん、春乃はお姫様を守る人(つまり、ボディーガード)と答えたようだった。子供達が教えてくれた。
今の所、まんまだ。もともと、連れてきた時から、春花には対になる人がいたし、春乃はお姫様を守る為に作られたからだ。
まだ2人には将来あの子達がどうなるのかは伝えていない。何だか伝えれない。まだ良いだろう。
私は最近朝の新聞配達をし始めた。ずっと働いていたからか、少しは働いていないと落ち着かないのだ。
今はナッツさんが一緒に暮らしているし、私が配達をしている間は子供達はナッツさんが見ていてくれている。
最近、弟妹達に結婚したことをメールしたら、父母の今月の1周忌の時に一緒に食事でもしようと返信がきた。祖父母も集まるそうだ。
お金もないし、父母も亡くなってまだそんなに経っていないし、籍だけ入れたし良いかなとも思ったが、ナッツさんとバイトとは言え模擬結婚して子供達もできて家族になったけじめとして、写真館で皆で写真を撮ったら良いかなと思い、ナッツさんに聞いたら快く了承してくれた。
春花や春乃を連れて4人で写真館に行った。子供達は写真館にある気にいった服を着てもらうことにして、私とナッツさんは洋風か和風かどうしようという話になった。
私、素焼豆子の外見は、ずんぐりむっくりである。顔は普通だと思う。背も158㎝とそこそこだ。だから、ウエディングドレスがあまり似合わない。ドレスより料金が少し高くなるが和風の衣装にしようと思った。ナッツさんもそれに賛成してくれた。
打ち掛けの柄は色々綺麗で目移りしたが、鏡で合わせてみると自分に似合うのは白だった。頭には綿帽子をかぶった。ナッツさんは黒の紋付袴を着た。なかなか似合ってきた。
春花は着物を着て、(七五三祝いの着物があった。)春乃は薄いピンクの足元まで丈があるひらひらのドレスを着た。4人で写真を撮った。
近くの神社でポーズをとって何枚か撮った。神社で撮影、ウエディングフォトをした。私も思ったより楽しかったし、春花と春乃も女の子だからか、綺麗な衣装を着て嬉しかったようでテンションが上がっていた。春花は市松人形だったからか、水色の着物がすごく似合っていた。春乃はお姫様みたいだった。心なしか、うっすら気品もあった。
子供達は、七五三祝いもあったが、女の子は3歳と7歳だが、今回の5歳で七五三祝いの写真とした。
7歳のお祝いは、可愛い入学式用のスーツを着て、神社にお参りに行こうと思う。
父母の1周忌で皆で集まった。私達家族4人、弟妹、祖父母4人で食事会をした。写真館で出来た写真の4人で写った写真を一枚ずつ、弟妹や祖父母に渡した。彼らは、私の新矢やハンド君との結婚直前の破局を知ってるので、今回の子連れの結婚には何も言わなかった。今度こそ邪魔されずに幸せになって欲しいと思っているようだ。私は気が付かなかったが、私の様子がかなりおかしかったのだろう。
2度あることは3度ある。
宇宙人のナッツさんの過去の彼女と名乗る女性ががある日、自宅に訪ねてきた。
ナッツさんは仕事、子供達は幼稚園に行っている時だった。
私は近くの喫茶店に行き、彼女の話を聞いた。
ナッツさんは今まで多くの人形、クローン等の子育てバイトを地球人の女性と共にしてきた。
人形、クローンもそれぞれ幸せになる権利はある、そういう目的があるためだ。
その当時はその女性がナッツさんと付き合っていてナッツさんのバイトが嫌だった。嫌だということを彼に話しても、仕事としてこなしているだけだと言われるだけだった。そうこうしているうちに波長が合わなくなって、別れた。そんなナッツさんだが、私豆子に対しては特別な感情を持つようになってしまったらしい。(ナッツさんの元カノ談)
ナッツさんは今までは、『地球で働く』や、バイトのパートナーと『一緒に暮らす』などなかったらしい。
ナッツさんの元カノはもうすぐ他の男性と結婚するらしい。とても綺麗な人だったので、当然だろう。
その前に私に会いにきたそうだ。
元カノさんの名前はエリスというらしい。
元カノは帰って行った。
ナッツさんにも、一応エリスさんのことは話しておいた。
それを聞いてもナッツさんは、そうなんだ…みたいな反応だった。
ひょっとして、新矢達をそそのかしたのは、エリスさんかも?とふと思った。
幼稚園のお遊戯会に、ナッツさんと一緒に見に行った。『おおきなかぶ』の劇で、春花は猫の役で、春乃はネズミの役だった。配役は1人だけでなく、1つの役にも何人かいる。
おじいさん、おばあさん、孫、犬、猫、ネズミがカブを抜こうと引っ張る姿は、なかなか可愛くて面白かった。
そして、10月31日はハロウィンの日だ。子供達は幼稚園で色画用紙で色々作り仮装をしてお菓子を食べてきた。
春花は色画用紙で帽子を作り、魔女になった。春乃はカボチャのお面を作り、カボチャのお化けになった。
段々と寒くなり、11月になった。
春花と春乃から、幼稚園のグラウンドで幼稚園の先生が焼き芋を焼いて園児みんなに食べさせてくれたという話を聞いた。
「すごくおいしかったよ。」2人は口々に話してくれた。今は子供達の幼稚園行事の影響もあって、季節を感じさせてくれる生活を送っている。
ところで、春花と春乃にも幼稚園で友達ができた。秀紀君という男の子で、少し体型はポチャッとしている穏やかな子供だった。お遊戯会のおおきなかぶで犬の役をやっていたようで、その時に仲良くなったらしい。
お友達ができて良かった。そう思った。
11月も中頃になると、北海道はみぞれが降ったりした。
春花も春乃も初めて見る空からの雪に興味津々だった。雨の時はそうでもなかったので人形の館や研究所では雨は降っていたのだろう。そこの場所は気候も温帯というか、温かな地域だったのかもしれない。
ある日の幼稚園に春花と春乃をお迎えに行って(幼稚園は家から歩いて通える位近いのだ。)歩いて帰っている帰り道の時に、空から小さな粒が降ってきた。
「あっ」
春花も春乃も立ち止まって上を見た。地面のアスファルトは今は雪は積もってなどいなく、連日気温が上がり雪が雨として降っていたために溶けていた。しかし、寒さは雪の降る寒さに突然なることもあり、今、まさに空気が冬の「雪が降るぞ~」という合図を示す外の空気になっていた。
私は心配なのでいつ寒くなってもいいように、春花と春乃の2人には冬のジャンバーを着させていた。手袋も紐をつけてジャンバーにくくり付けていた。
上からちらほら、そしてどんどん白い丸い小さな粒がパラパラ落ちてくる。
どんどんその白い粒が地面に降りてくる。その粒が少しずつ少しずつ大きくなっていっている。粒が直径1㎝くらいになって雪になって降ってきた。みぞれっぽかったのが雪に変わった。降っている1㎝位の雪が徐々に更に大きな雪の大きさとなってしんしんと降ってくる。こりゃあ冷えるなあと思い、春花と春乃に歩みを促すが、手をつないでいる手を振り払い、2人共じっと空を見上げていた。2人の口からは寒い息が吐き出されていて、2人の顔も、ほっぺたも冷たく冷えていたがそんなことはおかまいなしだった。
2人は長いこと寒くなった外にいたので少し風邪をひいた。家に帰ると寒いと言い出して咳をしだした。
子供用風邪薬をナッツさんに買ってきてもらおうとスマホにメールをした。
私の朝のアルバイトの新聞配達も順調だった。私は新聞販売所から新聞配達専用自転車を借りて配達しているのだった。新聞配達専用自転車は冬でもみぞれでも雪でも楽々進み、最近ではそういうのは珍しいらしく、大体自分で自転車を調達するしかない。自分で普通の自転車を用意するなら、雪が降る時期には冬用にスノータイヤに交換をしたり、自転車自体すぐ壊れるのでしょっちゅう足の留め金のところの交換をしたり、自転車を、幼児を前や後ろに乗せるために丈夫に作られているものを用意するしかないのだそうだ。(配達する新聞を沢山自転車に積むため)ベテランの他の販売所で働いたことのある人から聞いた話だった。
そうこうしているうちに12月に入りクリスマスの時期になった。
家で子供達に絵本を読んであげていた。
サンタクロースの絵本だった。サンタさんが12月24日に沢山のプレゼントをそりに乗せてトナカイさんに引っ張られてプレゼントを届ける話だった。
「家にもサンタさんが来るかな。」
クリスマスツリーをナッツさんが買ってきてくれて、それに私と子供達で飾り付けをしてクリスマスを楽しみにしていた。
そんな中、二人共はサンタさんにお手紙を書いていた。
それで12月25日の朝、お便りはなくなっていた。