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雑談と紋章

「うん!わかった!」



 そうして私たちは日が暮れるまで重力魔法で遊び、さまざまなことをした。

 

 その上で分かったことは3つ。


 一つ、重力魔法は本当に主様オリジナルの魔法だということ。


 二つ、重力魔法を本気でかけられると身動きが全く取れないこと。おそらく並みの暗殺者や兵士ならばそのまま潰れてしまうだろう。


 三つ、重力魔法を重力を軽くする方向にかけた場合、身体能力が飛躍的に上昇すること。それを利用すれば私と主様のコンビではそうそう負けない。




「ああー今日も疲れたなぁー!」


 談話室(リビング)のソファーに倒れ込みながら大声ではしゃぐ主様。


「疲れた人が言うテンションじゃないと思いますね」


「だってもうお風呂入ったから。知ってる?お風呂ってね、疲れを癒す効果があるんだよ?」


「もちろん知ってますよ、けれどお風呂でも馬鹿は治せないようですね」


「ちょっと、私が馬鹿ってこと?」


「だって事実でしょう、普通の人は私をメイドとして使おうなんて思いません。そもそもなぜ私を護衛として任命したのですか?」


 これは任命された時からずっと思っていたことだ。私は二つ名としてはそこそこ名の知れた暗殺者ではあったが、素顔を知るものは少なく本名を知っているものはいなかった。ましてや、暗殺者師団の教官を務めていたときも私が『赫の暗殺者』なんて通り名で呼ばれていたことを知っているものはいなかったはずだ。


「んー、なんとなく、かな」


「なんとなくと言われても……」


「あれじゃん。私たちが初めて会ったのって、地味に王城とかじゃなかったでしょ?覚えてる?私が魔法を試そうと森に行ったときに、たまたまフィニに出会った。そうだったでしょ」


「そういえばそうでしたね」


 詳しい経緯は知らないが、主様と会ったのは確かに森の中だった。そこは王国の近くにあるひっそりとした森で、王都の近くにあるが人は意外にも立ち寄らない人気のない森だ。そんなところを私が暗殺任務から帰ってくるときに通ったのだが、そのときにたまたまヴィエラ様に会った。


 懐かしいことだ。


 最初見た時は反射的に臨戦態勢に入ってしまったが、ヴィエラ様はそこまでの脅威ではないと判定し攻撃するのはやめておいた。いかんせん昔のことなのでヴィエラ様はまだかなり幼かったのだ。10年ほど前なので…ヴィエラ様はまだ8歳とか。

 そんな歳からひとり魔法に明け暮れていたとは……。なぜ誰もこの人に魔法以外の知識を叩き込もうとしなかったのか…。お陰で今、私が大変なのだが。


「その森であった瞬間、なにか運命みたいなのを感じたの。こう、ビビッと。その経験を覚えていたから、護衛に任命したって感じ」


 その後の再会は……いつだっただろうか。王城に用事があったときに会ったのは覚えている。たしかそこで出会い、いきなり護衛に任命された。


 思い返せば無茶苦茶な任命方法だ。


「では出会い頭にいきなり護衛に任命してきたのはどういう意図があって?」


「運命みたいなのを感じた人は嫌でも忘れないでしょ?」


 疑問を疑問で返された。まあ確かに直感的に思ったことは経験上忘れにくい気はするが。いわゆる本能の相性ということだ。そういう理由で私を選んだのだろう。


「では私をメイドとして扱うことにした理由は?」


「んー、それにはね、深い理由があるんだよ」


「と、いうと……」


 真剣な顔で主様を覗き込む。


「心の中の私がフィニを面白くしろって!」


「なんですかそのふざけた理由は…」


 少しでも期待した自分が馬鹿だった。この人に真面目なものは期待しない方がいい。


「でも実際そうじゃない?フィニって初対面の時からかなり堅い印象があったから少しでもフレンドリーというか、親しみやすい雰囲気を持たせたほうがいいかなって。あとは単純に護衛という立場でもメイドとしてならいやでも私から離れられないじゃん」


 なるほど。まあ筋は通っているしそこまで深掘りする必要はないか。


「そういうことでしたら私は貴方様に尽くさなければなりませんね。お世話係として、護衛として」


「それって前者が何割?」


「8割ほどですかね」


「お世辞でも5割がよかった……」


※※※

 

主様が寝た後、私は1人、考え事をしていた。窓を開けて月の光や夜風に当たりながら考え事をする。


 考え事の内容は第三軍の紋章についてだ。簡単な言葉にするとマーク、目印、デザイン。そんなものだろうか。


 何か大きな集団においては、やはり目印となるものが必要だ。目印さえわかっていればどこの集団かもわかるし、イメージもつきやすい。


 森厳騎士団は森がモチーフとなっている紋章で、そこには国家の剣であると意味の剣と鎧が描かれている。鎧はおそらく森厳騎士団が使っている少し緑っぽい黒と白が混じったものが由来となっているだろう。剣は騎士団長が持っているエルフに伝わるとされる伝説の剣がモチーフのはずだ。


 獣王騎士団は狼、狐、猫の3種の獣人が意匠化されたものが紋章となっている。彼らはバランスの良い騎士団で、狼の腕力、狐の頭脳、猫の素早さが良い感じに噛み合っている。付け加えるなら、別に獣王騎士団にこの3種の獣人しかいないというわけではない。ただ紋章としてわかりやすくこの3種が取られただけであり、実際はこの国1番の大騎士団だ。


 そしてやはり死霊騎士団も骸骨の紋章が目立つ。彼らは骸骨、死霊、その他諸々で構成されているが、全員の共通点はアンデットということで紋章は骸骨となっている。


「さてどうしたものか……」


 騎士団の意匠の特徴を思い浮かべてみても、やっぱり各軍の所属している者たちの共通点から紋章が作られているのは明らかだ。そういう面では第三軍は共通項に乏しくなかなか良い案が浮かばない。



「いや、でも待てよ……」


 少し考えていると、1つの共通点が思い出された。 


 昼間やったように、今のところ第三軍に共通しているのは各人の意志が同じことだ。つまり、我々が抱いているのは主様への忠誠心ということになる。


「もうこれで良いのでは…?」


 ぶっちゃけ、これ以外にいい共通点がわからない。主様に言ったら「重い」とか返される景色が安易に想像できたがこれでいいだろう。


 そうと決まれば、ちゃっちゃと紋章を作っていきますか。



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