ダンジョン攻略1
「ここが最先端なのか…?」
スフィアがおもむろに言った。
確かに周りを見ても特に強そうなモンスターどころかその影すらないが、まあ転移石が言ったんだ。ここが最前線で間違いないだろう。
「大抵、ダンジョンは安全地帯というものが存在しています。それがここなのでしょう。気を緩めていると一瞬で持っていかれますからね。そもそも私たちはここにいるモンスターの強さを把握していないのですから気を緩めてはなりませんよ」
「わかった。とりあえず進んでこう」
意外にもダンジョン内は明るく、何か松明や光系の魔法を使わなくても良かった。おそらくは光る鉱石がそこら中に散らばっているからだとは思うが、どうなんだろうか。
私が壁や地面などを観察して不思議に思っている間、スフィアは早速何体かのモンスターと遭遇していた。
しかし私はそれほど興味はなかったし、そもそも見なくても1、2撃で剣を振るう音が止まっている時点でお察しだった。意外にもまだまだ難易度は低く、私も安心してみていられる感じだ。
「スフィア、順調ですか?」
「ああ。このままだったら行けるが、まだ気は抜かないぞ。油断は禁物だろ?」
「ええ。殊勝な心がけです」
その後も何回か接敵したが、しっかり剣を構え、相手の動きを捉えて弱点を刺すことができていた。ちなみに接敵したモンスターはアンデッド系と虫系のモンスター達で、まあ弱点がわかればすぐに倒せる系統だ。
アンデッドは肋骨のあたりが弱点で、そこを剣で薙ぎ払えば簡単に破壊できる。そして虫系は弱点というかなんというか、柔らかく脆いのが特徴。そのため攻撃を当てられれば倒すことができることが大半。しかし小さかったり、すばしっこかったり、なんだか捉えづらいのが嫌な点。
「なんだかんだスフィアも成長したよねー」
主様が小声で言ってくる。
「同じことを思っていました。これほど成長できているのなら、やはり私たちに会う前は良い教官を持てなかったのでしょうね」
「スフィアの能力は素人目の私でも惹きつけられるもん。立ち振る舞いも大人っぽくなったし、剣の腕も前とは別人レベルで変わってる」
「このあたりのモンスターなら楽に勝てそうですね。問題は、次の階層に行ったあたりからです。ダンジョンには区切りがあって、中ボス層の後は簡単になるんですよ。しかしそのあとはだんだんと難易度が上がっていき、最終的にはボス層へと至ります。その1番簡単なところがここでしょうね」
「なるほど。じゃあスフィアも油断してらんないんだね」
「そういうことです」
「おーい。次の階へ行ける階段があったぞ!」
少し距離が空いてしまったため、手を振って呼んでくる。
「順調ですね。素晴らしいです」
「そうか⁈成長してるか⁈」
「ええ。けれど次で負けてはなりませんからね」
「わかってるって」
そう言って軽いステップで階段を進んで行った。階段は土っぽくてやはりダンジョンは自然の産物なのだなと改めて思った。未だにダンジョンは起源などが不明で、私たちが感知していないだけでこの世界には1000を超えるダンジョンがあると言われている。そしてその全ては自然産、人工的なものは存在しない。
そもそもダンジョンは地下何百メートルとある大きな洞窟のような物なので、人工的に作るには無理がある。洞窟とダンジョンとで違う点はやはりモンスターの湧き具合。洞窟は主に鉱物目当てで行く場所なのであまりモンスターには出会わないが、ダンジョンはどの階層にも最低10体は湧き、洞窟とは全く別の形態がなされている。
「私たちも進みましょうか」
「うん。そうしよう」
そういった点でも、ダンジョン攻略はユニークで楽しいものなのだ。
体調を崩してしまっていたので期間が空いてしまいました。あれ、それにしても長くない……?もっと早く投稿すれば良かったと後悔しています。




