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会談2

 主様とドラクール様をおいて私たち4人は違う部屋へと移った。さっきよりは豪華さのランクがダウンしたが、十分豪華な部屋だろう。いくつかの装飾品があり、心なしかいい匂いがする。高級な香水か何かを使っているのだろう。


 部屋を見渡していると、隣に座っていたスフィアが私の耳に小さな声で言った。


「なあ、どんぐらい待てばいいんだ?」


「さあ?話し合いが終わったら呼ばれるのでそれまでですよ」


「何小声で会話しているんだ?」


 オーティーと言ったか。うるさい奴だな。


「いえ、どのぐらいの時間がかかるかという話です。その間、私たちは特にすることはないですから」


 うーんと唸りながら席に深く座り、状態はナチュラルに。けれど緊張感は残ったままだった。


 その後もどのくらいの時間が経過したかわからないが、沈黙が続いた。私たちはずっと下を向いたり、出された紅茶を飲んだりしてこの気まずさを紛らわしていた。対して原因となったオーティーはずっと私たちの方を見つめていた。言い方を変えれば睨んでいるとも言うが、まあそこは気にしなくていいだろう。


「なあ、お前らならば何か土産でも持ってきているんじゃないのか」


「ありませんけど」


「なぜだ?」


「何故と言われましても…あなたたちに渡す義理はありませんから。この国では受け入れる側が常に負担を負うと言うのが原則です。なにか物を貢ぐと言うのは従属を意味しますが、第三軍にそのような意向はございません」


「ではお前らは我々竜鱗騎士団よりも偉いと?」


「そういうことでもありません。対等だと言いたいのです」


「軍事力を見ても影響力をみても対等なのかさっぱりわからないがな」


「少なくとも私はあなたよりは強いですけど」


 ぼそっと愚痴をこぼした。


「ああ?そんなことを言うならやってみるか?俺はいつでも戦える準備はできてるぜ?」


 椅子を蹴り飛ばしながら立ち上がる。


「はぁ……竜人って頭が悪い奴ほど身体能力はいいですよね、あなたを筆頭に。ドラクールですらもう少し頭を使いますよ」


 私も応戦するように席を立つ。


「騎士団長を呼び捨てなど…!」


「まあまあ。フィニ。落ち着けって。ここで戦ってもいいことないぞ」


「そうですオーティー様。彼女はドラクール様のご友人ですから傷つけてはなりませんよ」


 黙って見ていた2人が慌てて仲裁に入るが、私にはそんなこと関係なかった。


「別にこの男をボコボコにしたって特に害はありませんよ。かえって立場を分からせれるいい機会ではないですか」


「こいつ……!」


 お互いがヒートアップした時、廊下の方から足落ちが聞こえた。


「フィニ、そこまでにしなさい」


「オーティー。お前もだ」


「主様…」


「団長…」


「私は別に竜鱗騎士団と戦いに来たわけじゃないの。交友関係を結びに来たんだよ?」


「ヴィエラ殿の言う通りだ。事実、その目的は果たされたしな。くだらないことでこの関係を崩さないでくれ」


「……ごめんなさい」


「……悪かった」


「…でも主様。許可があれば戦っていいと?」


「まあ……お互いが了承するなら。戦って恨みが生まれないっていう前提の下だよ?」


「ありがとうございます」


「オーティーも同意見か?」


「ああ。こいつを負かさねえと気が済まねえ」


「ならば許可する。ただしこいつは強いぞ?俺でさえ勝ったことはねえんだ。無論、負けたこともないがな」


「それでもいい。やらせてくれ」


「わかった。フィニ、怪我しないぐらいにしてくれよ?」


「はいはい。さてと、許可が出たところで。スフィア、開始の合図をしてくれませんか?」


「え、ここでやるのか?」


「もちろんです。オーティー、あなたもよろしいですね?」


「もちろんだ」


 そう言って腰の鞘から剣を抜く。


「ほら、早くしてください。私は素手でいいですから」


「……じゃ、じゃあ。お互い正々堂々と、始め!」


 スフィアが手を打ち、パチンという音と共にオーティーが動き出した。…が、それよりも早く動き、オーティーが反応する前に彼自身の首、足、腕の関節を打ち、地面に倒れ込ませた。


「こいつの鱗は何のためにあるんでしょうかね」


「知るか。お前の手が堅すぎんだよ」


 オーティーは目を真っ白にして気絶している。これは10分ぐらいは起きないな。


「やっぱ暗殺者師団長っておかしいのかな。仮にも副騎士団長の役職にいる人物が瞬殺された気がしたんだけど」


「いや、この男も弱くはないですよ?私の方が強いだけで」


「まあお前ばナイフを出さなかっただけ情けをかけたということでいいのか?出血させることもできたわけだもんな」


「ええ。実戦だったら初撃で首にナイフを刺して出血多量で死ですから。この男もまだまだ訓練しなければなりませんね、ドラクール様?」


「だからその敬語外せって言ってんだろ、違和感しかねえんだ。ま、オーティーの件は俺がみっちり叱っといてやるからよ。どうせ口喧嘩に発展したのだってオーティーがなんか失礼なこと言ったからだろ?」


「そうだと思いますけど。喧嘩に乗った私にも非があると言えばそうなのですが、基本はオーティーが悪いです」


 私が小声で喋ったからという意見もあるかもしれないが、証人となる男は今意識を失っているので問題ない。


「わかった。まあなんだ。俺とも1戦交えて行くか?」


「嫌です。仮に乗ったとしてもこの部屋が無事では済まないことぐらいわかってるでしょう」


「それもそうか。じゃあお前がアイスエッジに滞在する期間中に凸りに行くから用意しとけよ?」


「はいはい。私を見つけられたらね。それで、私たちが泊まる宿があると聞いているのだけれど」


「ああ、用意しておいてやったよ。ティミー、案内してやれ」


「かしこまりました」


 ティミーと呼ばれた先ほどの受付嬢が背中を向けて歩こうとすると、思い出したような調子で声が飛んできた。


「あ、あと。夕食は俺らと一緒に食べるか、部屋に持ってくかどちらがいい?」


「私はどちらでも。主様は?」


「せっかくだし一緒に食べようよ。フィニとドラクール様は交友関係があるからいいけど、スフィアは今日初めてあったんだよね?」


「直で見たのは初だ。噂でしか聞いたことがなかった」


「じゃあ一緒に食べるってことで。お願いしていいですか?」


「了解した。じゃあ時間になったら竜鱗騎士団の食堂に来てくれ。場所はどうせフィニが覚えてる」


「なんですかその謎の信頼は。覚えているのでいいですけど」


「よろしくな」


 髪をその大きな手でわしゃわしゃと撫でてくる。こいつ肌が触れ合うということに抵抗がないな。


「わかってますよ」


 私はそれに対して少し仰け反りながら距離を置く。


「ティミー、行ってこい」


「はい」


 今度こそ会談室を出て、私たちが泊まる宿の方へ案内された。



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