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屋敷の見回り

 屋敷を一巡して思ったことはかなりシンプルな屋敷だということ。シンプルに越したことはないが、もう少し捻りがあってもいい気がする。これではあまりにも防衛面で不都合がありすぎる。

 出来るだけヴィエラ様に死んで欲しくないし防御は硬くしておきたいというのに。


「主様、荷物は運んでおきましたが部屋のレイアウトはどうしますか?」


「大丈夫、それぐらい自分でやるからフィニはやりたいことやってていいよ。屋敷の警備、任せたよ」


 どうやらヴィエラ様は私のことをよく理解していたようだ。


「おおせつかりました」


 ヴィエラ様から屋敷の改造が実質的に認められたので本格的に取り掛かっていく。


 

 まず最初にこの屋敷に来て思ったことは柵が低すぎること。屋敷は一周ぐるりと柵で囲まれているがその柵に防衛機能はあってないようなものだ。まずはそこから強化しなければ。


 一度馬車に戻り引っ越す時に箱に詰めた小道具を手一杯に抱えてくる。それらの中から柵の強化に適しているであろうワイヤーを残してワイヤー以外の道具を地面に置いてしまう。

 

 手に持ったワイヤーはどうするかというと柵のすぐ下に輪っかを作るような形でいくつも並べておく。


 これらは侵入者を絡めとるための『罠』だ。ワイヤーはそれぞれ魔力を読み取る感圧板のようなものにつながっていて、侵入者がその魔力探知に引っかかるか感圧板を直接踏んだ時に罠が発動する。


 感圧板につながっていたワイヤーが感圧板からの指示を受け取って対象を捕獲するため、仮に対象が驚くべき反射神経を持っていたりすると逃げられてしまう。だがそこまで腕の立つ暗殺者がいるのか、という疑問は残るが。


「ふぅ……」


 何十分もかけてようやく柵の周り全てにワイヤーをはることができた。これで少しはマシになるはず。



 そういえば、こんなことをしている間主様は何をしているのだろうか。


 気になり、屋敷の中に戻って主様の部屋に向かう。


 屋敷の表の戸を開けると、目の前にはちょっとしたリビングのようなスペースがある。ここはおそらく団欒の場というか雑談するスペースになりそうだ。


 そんなリビングの隅には階段があり、2階には住人の居住空間がある。私と主様の部屋は階段を登って左の方にあるが、今は右側の部屋たちは使われていない。というかここに住む人が私たち以外にいない。これから軍の規模が大きくなったら住人も増えるのだろうか…。


「主様、部屋に入ってもよろしいですか?」


 ノックをしつつ応答を待つ。


「いいよー」


 少し待ってると気の抜けた返事が返ってきた。そしてその返事と共に部屋の中に入る。


「失礼します。主様、部屋の整理は終わりましたか?」


「んー、まだまだかなぁ。ねぇねぇ、この本とかどこに置けばいいと思う?」


「とりあえずはこの棚にしまっておけばよろしいのでは?」


「それも考えたけどなんかしっくりこなくて」


「ではいっそ床に散乱させておけば?」


「嫌だよ。本が傷つきそうだもん」


「もう。本のことは一旦やめにしましょう。既にお昼時なので昼食にいたしましょうか」


「わかったー」


 そう言って私たちは1階食堂へ向かった。


「私もこの屋敷の構造を完璧に把握しているわけではありませんが、おそらくこの空間は食堂でしょう。キッチンとも隣接していますし、基本ここで朝食などを取るということでよろしいですか?」


「うん。それにしてもこの食堂広いね。何人分の席があるんだ…」


「この屋敷が建てられた目的は軍の宿泊施設ですからね。何十人と座れる食堂があってもおかしくありませんよ」


「今この屋敷にいるのは2人なんだけどね…」


「まあまあ。そこはおいおい住人も増えていきますから。今は気にしなくていいと思いますよ。私はキッチンで昼食を作って参りますので何かあれば言ってくださいね」


「了解」




「あー、美味しかった。やっぱフィニの料理は美味しいね」


「私が作れるのは一般的な家庭料理だけですよ。特別な調味料も使っていませんし」


「そっか。じゃあ早いけど私は自室に戻るね」


「いえ、そんな時間はありませんよ?」


「え、どういうこと?」


「午後からは第三軍に配属された兵士たちと顔を合わせるんですから今からでもその時に何をするか考えますよ」


「えー、面倒だよー」


「では主様は部下との初対面で信頼を失いたいですか?」


「それは……もっとやだな」


「でしょう?じゃあちゃんと考えましょうね」


「うん……。…そういえば聞いてなかったんだけど第三軍ってどんな隊になるの?具体的なイメージが全然つかないんだけど」


「どうでしょうかね……。主様の思い描く隊の像と異なるかもしれませんが、第三軍は多種族が在籍する連合軍となります」


「たしかに、第三軍が特定の種族ばかり集まる軍だったらどこか別の騎士団とか軍の下位互換になっちゃうもんね」


 この国には主に6つの種族が共存して過ごしている。エルフ、獣人、竜人、死霊、悪魔、吸血鬼。この6つの種族は6柱なんて呼ばれていた時代があるほど人口の占める割合が大きい。

 今もそうで、この6種族(ダークエルフを含む)が占める割合は95%をゆうに超えている。それぐらい存在は大きいのだ。


 そして、その6種族は騎士団又は軍を持っている。エルフ、獣人、竜人、死霊は騎士団。吸血鬼、悪魔は軍だ。そのため我ら第三軍が何か一つの種族に特化したところでそれはどれかの騎士団や軍のオマージュとなる。


 なので第三軍の特徴は多種族という点にある。具体的な割合などは未だ不明だがまあそれも1時間後にはわかっていることだ。


「おそらく暗殺者が多数来るというのは予想がつきます。それ以外は私にもさっぱりです。申し訳ございません」


「いいよ、気にしなくて。こう言っちゃなんだけど下す命令はもう決まってるから。重要なのはその任務にどれだけの適合が見込めるか、この一点に尽きるね」


「そう…ですか」


「そうだ。先にフィニには作戦の全貌を伝えておくね」


 

 ………作戦の概観を聞いた後、外からガタガタと鎧が擦れる音がした。もしかしたらもう着いたのかもしれない。


「主様」


「分かってる。そろそろ外に出る準備をしようか」


「はい」


 鏡を見ながら主様の服装を確認していく。正装を着させて、ネックレスなどの装飾品も持たせた。ついでに言うなら魔法発動のための媒体となる短剣も腰に刺してもらう。


 実は主様は魔法の腕が立つ方で、王国の抱える魔法研究所などに篭っていた時期もあるほどだ。そのためある程度の敵なら自力でも倒せるとのこと。

 実際、私が見たことのある魔法使いでも強い部類には入る。けれど一流の暗殺者を撃退できるかと言われれば答えはノーだ。


 まあそもそも、魔法使いと暗殺者は魔法使いにとって相性が悪いのも関係しているが。


「主様、おそらく『第三軍』の者が全員揃いました」


「わかった。ここからは真面目な『お仕事』の時間だからね。頑張るよ」


「はい。側で応援しております」



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