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王都観光


「主様…まずはどこへ行くのでしょうね」


「わからん。あの奇想天外な動きは読めるようになったときには私たちは常識から外れた存在になってそうだな」


「ですね」


 私たちはそんな話をしながらも主様の後ろを追っていた。人混みの中でも私は主様の魔力とペンダントの所在地で主様の位置がわかるようになっているため存在を見失うことはない。けどやっぱり目視で確認しておきたいし、今はスフィアがいる。私だけが理解できてもスフィアが認知できなければせっかく増えた護衛の意味がなくなってしまう。


「お、屋台によるようだな」


 主様は街中の道にある屋台によったようだ。


「何屋でしょうか」


「ここからだとよく見えないが、煙が立っているから食べ物か何かじゃないか?」


「たぶんワッフルじゃないですかね。王都に限らずアンドレ王国の屋台ではそれが1番一般的なので」


「ワッフルかー。私も小さい頃はよく食べたのを覚えている」


「そういえばスフィアは王都の出なのですか?」


 ワッフルを食べたことがあるということはある程度大きな都市の生まれだとは思うが。


「いや、バイフォレストの近くにある村だ。フィニは私たちよりも長く生きているから、バイフォレストで大合併が行われたことを知っているだろ。そのときに合併に応じなかった村だそうだ。まあ私は成人する前にその村を出ていってしまったから、村についてあまり知らないんだがな」


「そういう村もあったと聞きますね。国は住民を守るためという目的でバイフォレストに住民を移しましたが、いくつかの村は残ったと。そしてその残った村の多くは主に特別な収入があった。スフィアが生まれたという村もその1つでしょう」


「だな。いかんせん70年前の話だから、私が生まれるずいぶん前のことだ。当時の環境はよくわからない。だが私の村はそこそこの規模があったのを親から聞いている。私自身、記憶が曖昧で光景に霞がかかっている感じで鮮明に覚えているわけではないから、いつか行ってみたいなと思う」


「そうですね。いつか一緒に行ってみたいですね。時間があるとき、休暇を使って」


「いいのか?そんな貴重な時間を使って。その…私たちは一応第三軍の序列持ちだし」


「大丈夫です。私は第三軍の副官なので休暇という概念はありませんが、あなたは別です。ある程度の時間なら与えられるでしょう」


「でもヴィエラ様を置いてくのは不安じゃないか?あの人何するかわかんないし」


「まあ信頼できる友達に預けとけばいいでしょう。それよりも主様が買ったのはやはりワッフルでしたね」


 主様が屋台を離れるときに手に持っていたのが見えた。焼きたてのワッフルは美味しいだろうな。


「いいですねー。私は王都で何回か子供たちがワッフルを買っているのを見てますが、主様もそのぐらいの年頃なのだと思うと可愛く見えます」


「たぶんヴィエラ様は不老の年になっていないだろ?なら本来は友達とわいわい遊んで買い食いなんかをする年齢だ。そりゃあ身分によって遊び方の違いはあれど、遊ぶという面では何も変わらないはずさ」


「18歳ですか…。たしかに私も遊んでいましたね」


「珍しいな。フィニも小さい頃は遊んでいたのか」


「珍しいとは何ですか。私だってごく普通のエルフですからね?」


「その能力を持って普通というのか。というか何でお前はハイエルフに分類されていないんだ?私よりも断然生まれ持った能力が上な気がするんだが」


 唐突な疑問。


「わかりません。たしかに私は人よりも強く生まれてきたとは思いますが、ハイエルフになっていないのはまあ何らかの理由があったのでしょう」


「本人でもわからないか。でもそれならしょうがないよな」


「ですね。私たちだって自分のことを完全に理解しているわけではありませんので、その不完全さには目を瞑りましょう」



 雑談をしていると、私たちの視界から主様の姿がいなくなっていた。正確には魔力探知で居場所はわかるが、目視で確認するにはちょっと人が多すぎるな。


「スフィア、話もいいですけど移動しましょうか。本職を放棄しては意味がありませんから」


「同感だ」


 王都は人が多くても街は非常に綺麗だ。王都のどこにいても中心にある王城は見えるし、家々も王家が直接業者に委託して家を造らせているため、一般市民が住む家にしてはかなり豪華だ。流石は王家直属の建築業者。クオリティーが高い。


 それに、王都には近衛が定期的に見回りしていることから治安もいい。おそらく闇商人と一般的に言われる者はいない。つまり裏社会、アンダーグラウンドも存在しないのだ。私のように奴隷となるものがいないのは僥倖と言えるだろう。


 

 主様を人混みから見つけたが、約束通り一定の距離を取る。

 主様の言いつけなので守りはするがなんだか鬱陶しい。なんで主様と距離を置かないといけないんだ。いっそのこと3人で王都を回ればいいのに。


「主様は次どこへ行くのでしょうかね」


「個人的には屋台じゃない普通のお店に行って欲しいな」


「なぜですか?」


 疑問を投げかける。護衛がしづらくなってしまわないか?


「何でって。店に入れば監視する範囲も狭くなるし、もし問題が起こってもその建物吹っ飛ばせば救出できるだろ?立て篭もられても建物ごと吹っ飛ばせば関係ないし」


「あなたには脳みそというものがないのでしょうか?」


「あるわ!」


「あるなら普通はそんな結論にならないはずなのですが。そもそもこんな王都のど真ん中で建物を跡形もなく吹っ飛ばしたら目立つに決まってるでしょう」


「だからなんだよ」


「ですから、建物を吹っ飛ばさなくても別の方法があると言っているのです。交渉するとか、騎士団を呼ぶとか。本当に頭が硬いですね」


「なるほど。たしかに私たちだけでやるもんじゃないか」


「スフィアは少し常識というものを知った方が良いかもしれませんね。いざとなったら教育係に教育をお願いしますか」


「それだけはやめてくれないか。あそこへは2度と行きたくないl


 おや、行ったことがあるのか。軍の教育係とは簡単に言うと序列をはっきりさせるための場所。主に生意気な兵士や何らかの原因で階級が下がった者が送られる。

 

 …まあオブラートに包まず言うと強制的な服従を教え込む場所。私は行ったことがないのでわからないが、巷では名前を出すだけで怖がられる機関だ。私もあまり行きたくはない。


「いざとなったらです。私や主様の話が通じなくなった場合に送ります」


「そんなことはないから話を出さないでくれないか。まじで」


 そんなに怖いなら行ってみてもいいかもしれない。自分の部下への接し方の参考にはなるかもな。


「主様が送りたくないと思うのなら私は送りませんが、意外と主様はそういうバイオレンスなところも好きですからね。そんなに反対しないかもしれません。まあそれが嫌ならあまり舐めた態度を取らないことですね」


「そうすることにするわ」


 主様はその後、アクセサリーの店に入りなんか腕輪みたいのを買ったり、また屋台によって飲み物を買ったりしていた。

 なんだかんだ楽しそうな王都散策だったのではないだろうか。かくいう私も、実はスフィアと一緒にワッフルを買ったのは主様には秘密だ。

 

 まあこういう所にお金を使わないと給料をもらってもどこにも使わないからな。主様は…王族だから基本望めばなんでも手に入るし、スフィアもおしゃれに気を遣っているようだった。たしかにスフィアは絶世の美女と言っても差し支えないほど可愛いしな。品はともかく。


 そうして主様と私とスフィアの3人で王都から出て、第三軍の屋敷へとつながる道で合流した。



どのぐらい王都について書くか迷ったのですが、今回はあんまり書きませんでした。これから何回か王都に行くのでそのときに。

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