後日
数日後。私たちはバイフォレストへ戻ってきていた。バイフォレストへ帰還するときには既に勝報が伝わっていたのかとてつもなく豪華に迎えられた。街は彩られ、軽いパレードが開かれていたのだ。メモリアもそれを予期していなかったからか驚きの表情を隠せないでいた。
そんな中、同じ副官であるユリさんに目を向けると表向きには驚いていたが、裏ではこのことを知っていたような感じがした。いくらユリさんと言えど私の目は欺けないですよ?
というか今更ながら森厳騎士団の副官はユリさんだったらしい。森厳騎士団は複雑で、団長であるメモリアが頂点なのは間違いないが、その下に副団長と副官がいる。違いはイマイチわからないが多分副団長は攻撃面で役立つのだろう。今回はバイフォレストに留まって留守を預かってくれたと聞いている。
伝統的に団長がエルフのときは副団長はダークエルフなので今の副団長もダークエルフでる可能性が高い。
エルフとダークエルフは種族能力的にも、数的にもほぼ同じだ。違うのは肌の色ぐらい。けれどエルフは剣を、ダークエルフは槍を扱っていることが多い。どうやらエルフの故郷である森では大型の魔物が出現するというよりは、中型の魔物が大量に出現するらしい。中型の魔物の攻撃は大型の魔物に比べてリーチに欠ける。だから剣で応戦した方が楽に対処できる。
逆にダークエルフの砂漠では大型の魔物が出現し、出来るだけリーチをとりたかったから槍が発展した。大型相手にはいざとなったら逃げ出すことも視野に入れるため投げ槍を使う技術にも長けている。
ただ、森では槍を使うと木や枝に絡まると言うし、そういう事情もあったのかもしれない。現代でも昔の技術というのは種族の間で受け継がれ、エルフとダークエルフはそれぞれ剣と槍を扱うようになった。おかげで攻めはエルフに、守りはダークエルフにと役割がうまく割り当てられるのだとか。
バイフォレストに帰還してからは早かった。主様とメモリアで共同でタールウェグ陥落の声明を出し、国王様にも事の顛末を書いた手紙を出した。
宴は既に行ったので2回目は遠慮しておくことにした。主様はとても参加したそうにしていたが、1発で退場して宴に参加できなかったのは主様の自己責任だ。今度からは自分が飲めると思った量だけお酒を飲んで欲しいものだ。
ちなみに声明を出し終わったあとはバイフォレストをぶらぶらしていた。表向きは次の作戦への準備ということだったが、実情はそんなことなくバイフォレストの街並みをゆったりと見回っていた。
バイフォレストは正門からまっすぐ道が舗装されており、都市の真ん中には広間と噴水が設置してある。さらにその先へ行くと森厳騎士団の本部と宿舎があり、ここがバイフォレストの心臓部だ。
上空から見て左側が商店街、右側が住宅街となっているが、住んでいて便利なのかは疑問が残る。完全に分かれているといちいち区間を跨がないといけないし、通勤とかも大変そう。けれどこれで不満が出ていないのだから住民的にも運営的にも間違っていない判断なのだろう。
なんだかんだ国王様からの手紙の返答を待っていたら実に1週間が経過し、随分怠けてしまったような。けれど国王様の指示がなければしょうがない。決してメモリアと一緒にいたかったわけではない。そういうことにしとこう。
私たちが国王様の手紙を待っていたのには理由がある。それは手紙にも書かれていたことだが、第三軍の拡張についてだ。タールウェグ陥落作戦の前にあらかじめ通達があったように戦果をあげれば拡張を許可するとあった。そして私たちは実際にタールウェグを落としたので、拡張が認められた。
拡張は援軍に駆けつけてくれた者たちがそのまま入るということになった。その数500。元から居た人数と新たに加わったものを合わせての人数だが、敵地で工作するには最大規模の人数だ。これ以上は二手に分けるか、そもそも人間国へ行かせずに第三軍の屋敷にとどまらせるかしないと人間にみつかりやすくなって隠密行動という主題が崩れ去ってしまう。でもまあそれはおいおい考えれば良いことだ。
そして新しくなった第三軍は再度人間の領土へ向けて出発する運びとなった。私と主様はゆっくり休めばいいと指令を出すつもりだったのだが、死霊騎士たちは強くなった自分達の力を試したいと自ら敵地へ行きたいと言い出したので止めなかった。別に作戦に支障が出るわけでもないので。
というか彼らがどのくらいタールウェグで魂を喰ったかはわからないが、腐ってもタールウェグ大都市だった。少なくとも10万は喰ったはずだ。それを加味すれば、今まで1人あたり2人の人間を殺せればよかったところを4人を相手取っても引けを取らないぐらいには成長しただろう。まあ私は50人でも100人でもまとめて相手できるが。
そんな話はいいとして残る第三軍は私と主様だけになったため、森厳騎士団とお別れをして屋敷に帰ることにした。名残惜しいがいつまでも居候するわけにもいかないし。何よりメモリアに借りを作りたくない。だから行動は迅速だった。さっさと荷物をまとめてその日のうちにバイフォレストを出発することにした。
出発する直前、メモリアやユリさんにといったお世話になった面子に挨拶をした。
「そうか…もういくのか。まだ泊まっててもいいのだがな」
「いや、いいよ。ずっとお世話になるわけにはいかないし」
「うう……メモリア〜!別れても私たちは友達だよ」
「何馬鹿なこと言ってるんですか。メモリアなんかいつでも会えますから」
「メモリアなんかとはなんだ、なんかとは。私だって暇じゃないんだぞ」
「この1週間遊び呆けてた人がよく言いますね」
「うっ。ま、まあ、ヴィエラ。いつでも会いたくなったら遊びに来い。歓迎してやるから、な?」
「うん…わかった」
そう言って主様と私は馬にまたがり、正門が開いた。
「じゃあね、メモリア。また今度」
「ああ。今度会うときには強くなってやるからな。そのときは稽古、受けてくれよ?」
「もちろん。軽く捻ってやりますから」
「ヴィエラもまたな」
「うん。またね」
そう言って馬に鞭を打ち、走らせた。バイフォレストを出た瞬間の空気は、いつもより美味しかったと思う。
これにて第一章が終わりになります。約1ヶ月に渡り御愛読いただきありがとうございました。
第二章も現在執筆しておりますので、是非楽しみにしておいてください!
改めて、ここまで『暗殺者メイド、王女に仕える~主様が無邪気すぎて困っています』をお読みいただきありがとうございました!




