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伝言と友達



 テントから出て、第三軍の元へ向かう。おそらくはマーシャが来ているので彼女の気配を探れば第三軍の元へ行けるだろう。


「ここか」


 少し早いが既に食事を始めている班があった。そこにはマーシャの姿もあり、第三軍の溜まり場なようだ。



「久しぶりにいつものメンバー以外との会話だ。なあ?マーシャ殿」


「ですね。このメンバー以外だと2ヶ月ぶりぐらいでしょうか?」


「かもしれないな」


「お楽しみ中でしたか?」


 わいわい話しているところ申し訳ないが間に入らせてもらった。


「おおー、フィニ殿。お楽しみというよりは皆久しぶりの会話に心躍らせていたのですよ。して何用で?」


「明日の作戦について伝えに。もう耳に入っていましたか?」


「いやまだだ。すまんな、ここにいるのは死霊騎士ばかりだから会話というものが好きなやつが多いのだ。情報共有が後回しになってしまった」


 いい死霊騎士の方だ。


「皆殿、フィニ殿からお話があるとのことだ」


 同胞たちに向けて声を掛けてくれ、死霊騎士含め新しく加わったであろう臨時第三軍の者たちもこちらを向いてくれる。


「見慣れない顔もあるのでいまいちど自己紹介をしておきます。第三軍副団長を務めておりますフィニと申します。以後お見知り置きを」


「メ、メイド……?」


 1人が困惑の反応を示す。


「ああ、普段は軍団長のメイドをしております。それなりに戦闘はできますので心配はなさらなくて大丈夫ですよ」


「よ、よろしくお願いします」


「はい。では先程預かった作戦の概要をお伝えしておきますね。作戦の決行日時は明日夜明け。私たち第三軍はタールウェグ正門ではなく城壁攻めを行います。メンバーは今言ったようにここにいる者たちです。指揮官は私ということになっていますのである程度は指示に従ってください。以上、概略はこんな感じです。何か質問などはございますか?」


 静粛が走る。


「無いようなら私からの話は以上です。すみませんね、談笑の邪魔をしてしまって」


「いや、お気になさらず。上官の話を聞かない団員などおりませぬ」


「そうですか。では明日、頑張りましょうね」


 そう言って私は笑顔を残しながら主様の元へ戻っていった。



※※※


 

「気のせいです。では行って参ります」


 その言葉と共に、フィニは行ってしまった。


「さてと、ヴィエラさん。何気に初めてじゃないですか?私とあなたで2人きりなのは」


「かもしれないですね。いつもフィニが付いていますから」


「ですねー。せっかくですしフィニに関して話しませんか?私も友としてフィニの最近が知りたい。本人はなかなか話してくれませんから」


「…うすうす思っていたのですが、やはりフィニとメモリアさんは友達で?」


「そうですね。私にとって1番の親友であり憧れですよ」


 友達、か。やはりフィニはメモリアさんのところに行っていた説が濃厚か。


「そうですか。私からしても1番本音で話し合える存在ですよ。やることに雑があっても、やるべきことは全て行うんです。そういう点でも、頼もしい副官です」


「そうか。フィニは最近、雰囲気が柔らかくなった気がしますよ」


 メモリアさんのその言葉はどこか昔を見ているようだった。


「それが誰のおかげかは不明ですけどね」


「誰に影響されてでしょうかね」


 とぼけるふりをする。


「「あはは」」


「いくらなんでもわざとらしすぎますよ」


「流石にでしたか。…まあでも、実際私の元に来てから絡みやすくなったというかフレンドリーになりました」


「原因は間違いなくヴィエラさんでしょうね。少し、フィニの昔のことを話しましょう。ヴィエラさんが知っているかはわかりませんが、フィニは殺しが生き甲斐でした。私と初めて会ったときなんか、フィニは戦場にいておびただしい数の死体の山の上に座っていました。その後も戦場で会うたびに毎回彼女の周りには死体が散らばっていて、その顔には笑みがありましたよ。こんなことが何回も有れば私も察しました。彼女は殺しを楽しんでいるのだと」


 本人も言っていたことだ。殺しがものすごく楽しかったと。私は正直、何を言っているかわからなかった。


 昔どこかで聞いたことがある知識が邪魔をして理解したくなかった。とある本で読んだが、生き物は皆、同族他種族関係なく殺すときには心が痛むらしい。特に同族、または似たような形をしている者は。なんでも同じような形をしているとその人の人生が簡単に想像できてしまい殺すのを躊躇うのだとか。

 これは理性でどうにかしようと思うものではなく、本能に刻み込まれているものだと。つまり、殺しに愉悦を感じる者は枷が外れているのだと。全種族に刻まれているはずのおもりが外れている者は根本的にイカれている。それがフィニだ。


「でもそんなフィニが殺しに執着しなくなり、雰囲気が柔らかくなった。つまりは別の趣味を見つけたということだ。それがメイド業、もっと言えばヴィエラさんに仕えるという行為の可能性が高い」


「フィニが…私に……」


「まあ最も真実は本人に聞かないとわからないが」


 今まで私はフィニに依存していると思っていた。それは自覚があり、あくまで一方通行であるものだと。しかしメモリアさんの言っていることが正しければフィニも私に依存している。つまり共生の関係。今まで思いもしなかった。そのようなことがあるなんて。


「まあ、フィニは不憫だと周りに言われてきたらしいが、私はそうは思わない。なぜならあいつは、この世界で1番強い才能を持っている。私も今まで多くの強者と戦ってきたが、フィニがダントツで強く、才能が突出してるように感じた」


「だからフィニには同情しない。同情は相手を自分より弱者だと思っているという前提で行うものだ。私はフィニを弱者だなんて思っていないから同情はしないし不憫だなんて言わない。ヴィエラさんにもお願いしたいんだ。彼女を下に見るんじゃなくて、同格として。友達として接して欲しい」


 メモリアさんは真剣だった。それもそうか。この世界で1番親しい人なんだ。


「大丈夫ですよ。私は既に、フィニの友達です」


「それは良かった……」


「それはそうと、メモリアさんはフィニの友達ですよね?」


「もちろんだ」


「なら、私とメモリアさんも友達じゃなければなりませんね」


「あ、ああ」


「これから私とメモリアさんはただの同業者じゃありませんよ?友達としてです。だから…」


 少し間をもたせて言う。


「敬語なんて、ダメだよ?」


「…わかったよ、ヴィエラ」


「やったー!」



 この歳になって初めてのフィニ以外の友達。今は純粋に嬉しい。精神年齢と肉体的年齢が見合っていないとか言われるが私も嬉しいときは嬉しいのだ。これから会うたびに友達だということを強調させていこう。


 そんなことを思いながら新しくできた友達に向かって笑顔を向けるのだった。




今さらながら、投稿を開始して1ヶ月が経過しました。現時点で86ptもいただけており、反響が大きいことはモチベーションに繋がるのでとても嬉しい限りです。


これからもフィニとヴィエラを見守っていてください。

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