森厳騎士団長
バイフォレストに入り、とりあえず中央から少しそれた広場に向かおうと思っていたところ。
「フィニ、とりあえずは騎士団長様を見つけないとね」
「はい」
「その必要はないぞ」
「え、誰?」
「あはは。そんな反応をするな。私はその探し人だ」
「つまり…」
「ああ。私は第8代森厳騎士団長メモリア・フォレストだ。あなたが第三軍軍団長殿で間違いないか?」
「はい。第三軍軍団長、ヴィエラ・アンドレです。この度は我々の誘いに乗ってくださりありがとうございました」
「ああ。気にしなくていいぞ。こちら側からしても腕を試したいという奴らが多くてな。こっちにも利益があったんだ。そこまで気負う必要はない。早速だが、騎士団の拠点で話さないか?ここではできない話も数多くある。ユリ、第三軍軍団長殿を私の執務室に通してやれ。衛兵、馬は宿舎に。頼んだぞ」
「わかりました」
あの子……メモリアに私の手紙を届けてくれた子か。ユリという名前だったのか。ユリさんはメモリアの命令通り、主様を執務室に送ってくれるようで。
「……なあフィニ」
「なに?」
「お前、本当に気配がないな。いい意味で。どれだけ意識制御してるんだよ」
「さあね。暗殺者なら誰でもできる」
「誰でもできても質が違うだろ、お前だけ」
「で、何?」
「いやぁ、久しぶりの再会で心を躍らせているだけだ」
「久しぶりって、まだ2週間でしょ」
「そうだったか〜?私からすれば1ヶ月のように思えたぞ」
「冗談はこれぐらいにして。主様の前では私とメモリアはそこまで仲良く話さない方がいい。私たちから開示する意味もないし、主様が勘づいたらいう感じで」
「了解。改めて久しぶりだな、フィニ」
「こちらこそ、メモリア」
「あ、フィニ。遅かったね」
「すみません。騎士団長様と少しお話を」
主様はくつろぎながらお茶を飲んでいた。
「そっか」
「何回も言うのはあれですけど、森厳騎士団が作戦に乗っていただけると聞き非常に嬉しく思います」
「ああ、こちらこそ。私個人としては第三軍軍団長様と交友関係を築いておきたいからな。失礼じゃなければ礼儀は最低限でいいと思うがどうだ?」
「わかりました。気軽にヴィエラなどと呼んでくれて構いませんよ」
「そうか。では私もメモリアでいいぞ。仲のいい奴からはそう呼ばれている」
そう言ってメモリアが私の方を見てくる。こっちを見るな、仕事だぞ?
「早速だが、これからの作戦を共有しておきたい」
話を切り出したのはメモリアの方だった。
「森厳騎士団からは約5000の兵を率いてタールウェグへと向かう予定だ。いかんせんこのバイフォレストの防衛もあるから大した兵を動員できないのは申し訳ない」
「そ、そんなことありませんよ。第三軍なんかおそらくは300ぐらいしか出せないので…」
ま、そうなるだろうな。そもそも森厳騎士団は規模が段違いだし、何より今までの功績が違う。第三軍なんていう新参者は300集められただけまだマシだろう。
「了解した。質問だが、ヴィエラさんは戦場へ直接出るのか?王女が出るとなれば我々もそれなりの警備を敷かなければならないのだが…」
「直接出ることはありませんよ。皆さんが戦っている間はお留守番です。本当は出たかったんですけどね、そこのフィニに止められました」
「なんですか、私が悪いみたいな」
「いやぁ、そんなことは言ってない」
主様…私がバイフォレストから帰ってきてから生意気というか距離が近くなった気がする。良い意味でも悪い意味でも主人とメイドという関係から外れてきている。
「まあまあ、フィニさんの判断は正しい。私もヴィエラさんが戦場に出るとなれば止めただろうからな」
「そうですか…。その代わりと言ってはなんですが、タールウェグの内部では第三軍の代表としてフィニが出ることになっています。彼女は暗殺者として腕が立つので」
「フィニ殿が。しかしそれではヴィエラさんの護衛がいなくなってしまうのでは?」
主様は首を振りながら言った。
「それは気にしていません。王族として自分の身はある程度守れるよう教育されてきましたから。軽い兵なら制圧することは出来ます」
「ならよかった。ヴィエラさんが戦場で行方不明になったなんて言われれば…ねぇ?」
「ふふ、そうですね。けれど私もそこまでひ弱ではありませんから。作戦を考えた張本人として生きてしっかり戦いは見守りますよ」
「感謝する。そういえば、第三軍の方は近々到着すると伺っているが…」
「おそらくは明日です。と言っても、確証はいまいちありませんけどね。恥ずかしい話、私たちはまだまだ規模が小さい軍ですので他の軍や軍本部にお願いをしなければ人員が足りないのです。今回のように、森厳騎士団にご協力をお願いしましたし」
「なるほど。まあそれはそれでいいのではないですか?規模の小ささは逆にいえば身軽さにもなる。タールウェグの話は第三軍だから引き受けたという側面もあるのですよ。他の騎士団と行うとなれば機動性に欠け、攻めるまでにそれ相応の準備時間を要してしまう。しかし第三軍となら即座に攻めることができ、迅速かつ少ない消耗で陥せると期待しているんです」
たしかに。前も私が主様にお話しした内容と似ているが、メモリアも軍の強みと弱みをはっきりわかっている。数と機敏性、この2点をどう扱うかで上に立つ者の技量がわかる。特に指揮官や軍師においては。
「ともかく、決行は明日、第三軍の兵が着いたらでよろしいですか?」
「はい、それで構いません」
「了解です。それでは話はこれぐらいにしましょうか。ヴィエラさんやフィニさんは旅でおつかれだと思いますし、宿舎の部屋を一室既に押さえてあるので。ユリ、案内してやれ」
「はい。こちらです」
ドアを開けて来るように促される。私たちも席を立って部屋から出ていくことにした。
「早いですがまた明日。失礼します」
「ああ。ゆっくりしてくれ」
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