到着
少し書きたくなったので1日2話投稿してみました。
「ん〜……」
大きく伸びをしてあくびを1つ。太陽が地平線の方から少しずつ出てきているため寝ていた時間は6時間弱と思われる。
「結構寝たなぁ…」
師団時代の自分が見たらなんて言うかな。怒られそう。
「主様…起きていますか?」
テントに入って様子を確認する。
「うん……起きてる…」
「そう言いながら二度寝に突っ走るのやめてください。バイフォレストに着いたら宿で寝れるのですから昼間の時間に体力が持つならそれで十分ですよ」
「分かったよ…ご飯置いといて。食べとくから」
「……メイドがこう言うのもなんですけどご自分でやられては?主様が抱きかかえてるバッグ、そこに食糧入ってますし。私目線、主様が朝食をこっちに投げて欲しいぐらいですけどね」
「……分かったよ。私もわがままじゃないからそんぐらいはする。いつもフィニにやってもらってばかりで申し訳ないし」
「ありがとうございます」
「何がいい?なんか色々入ってるけど」
「干し肉を2つ。あとは大丈夫です」
「ん」
バッグからガサゴソと干し肉を取り出しこっちに渡してくる。
「ちょ、投げないでくださいよ」
「いいじゃん別にー。フィニも食器とかシンクに放り投げてることあるし」
「そ、それは…。……まあいいです。対外の時にその煩雑さを表に出さなければそれで」
「流石に大丈夫。こう見えても私、王族だから。対外関係はバッチリ」
「そうでしたね…」
「……それにしてもこの食べ物、なんか美味しいね。これ何?」
「ちょ見せてください」
「いいけど」
食べかけだからいまいち原型が掴めていないがおそらくはあれだ。
「それは私の軽食ですね。本来は主様が食べるものではないのですが……」
「何でできてるの?」
「色々です。肉とか野菜とか、とにかく栄養補給をしなければならないときに重宝します。遭難したりしたときに持ってるといいのです。さまざまな食べ物をまとめてるので大してかさばらないのに栄養価は非常に高いです」
「へー。それにしてもそんなに食べ物をまとめてるなら味が不味くなりそうなものだけどね」
「美味しくはありませんよ。甘さで誤魔化しているだけで」
「たしかに言われてみれば相当甘い」
「……主様、この甘さで舌が気づかないとはかなり鈍感ではありませんか?もしかしてこっそりお菓子などを食べていませんよね…?」
じっとりとした視線を主様に送る。
「ま、まさかそんなことはないよ…!あは、あはは……」
「はぁ…、その反応は食べていますね。基本は私が出したもの以外は食べないでくださいよ。外部から貰ったものであれば毒味などを私に通してからで。許可は出しますから」
「ほ、本当?」
「はい。ただし、そのお菓子などをどのようなルートで入手しているかをお教えくだされば、ですけどね?」
「うぅ…。お菓子食べたいけど言いたくもない…」
「早く決めてください。言わないならお菓子は禁止です」
「……適当に街でもらってくる」
「街で?いつですか?」
「フィニが外出してるときとか」
「………これは護衛失格でしょうか。主人の外出に気づかないとは」
「そ、そんなことはないよ」
「そうですか?ならば主様が今後控えてくださると嬉しいのですが。というか、言ってくだされば私も一緒に行きますよ。おそらく主様は外出がしたいのでしょう?お声をかけてくださるなら許可は出すと何回も言っているじゃないですか」
「…うん、ごめんねフィニ。心配かけて」
「いいえ、わかればよろしいです。本っ当に今後は声をかけてくださいね?無断で外出をした際にはなんらかの罰を加えることも考えておきますね」
「罰って。フィニがそんなことするわけ…」
「お忘れですか?私はこう見えても暗殺者師団の長を務めています。変わり者の多い師団をどうやってまとめているか、ご存じありませんでしたか?」
「分かったからその顔やめて。お願いだから。フィニのその冷酷な目を見てると体の芯から凍ってく感覚になるよ……」
「それはそうと、もう朝食は済みましたか?済んだのなら早速出発したいのですが」
「ん、了解。もう行っちゃおうか」
テントを片付けて荷物を再度馬に乗せて馬に跨る。
「主様、昨日と同じように飛ばします。くれぐれも落馬しないよう」
手綱を握り、馬に指令を出すとヒヒーンというけたたましい声と共に森をかけていき、ものの数分で草原へと出た。
「ここが…草原」
「そうです。主様は初めてですか?」
「うん。本とかでは読んだことあったけど…生は迫力が違うね。文字通り一面の原っぱだ」
ここの草原は広く、作ろうと思えば都市を1個作れるぐらいだ。しかし面倒だというのと単純に走っていて気持ちのいい場所があってもいいのではないかという意見から草原は本来の姿のまま保存されている。
「主様の笑顔を引き出すのはこの大草原もでしたか」
それにしても、主様はよくお笑いになる。無邪気に笑い、日々の疲れを癒してくれる。私は好きだ、そういう姿が。
※※※
「……主様、目の前が見えますでしょうか?」
「…あれ、バイフォレスト?」
「そうです」
「うわぁ……噂以上の大都市だね。王都以外の都市に行くのは滅多にないから新鮮だよ」
「そろそろ到着です。正面から入るので準備を」
「はいよ」
タールウェグの正門はもうすぐそこだ。ぶっちゃけ正門から入ることはあまりないのでちょっと緊張していたり。
「止まれ!」
衛兵が8名、流石の警備態勢だ。そして全員がダークエルフ。つけている紋章からみて森厳騎士団の者で間違い無いだろう。
「所属と要件を伝えろ」
少し威圧的な声。威圧的というよりかは警戒している方が正しいか。
「第三軍所属、副官のフィニと申します。そして後ろにおられる方が第三軍軍団長様でございます。要件は先についている手紙でご存知かと思いますが」
「第三軍か…。門を開けろ。通してやれ」
「ありがとうございます」
「門を通ったら中にいる騎士団員に案内してもらえ、騎士団長殿まで案内してくれるはずだ」
「はい。主様、馬から降りて入ってくださいますか?街の中で馬に乗っていると目立ちます」
「はーい」
主様は馬から降りて街の中へ入っていく。私もそれを追うような形で久しぶり(2週間ぶり)にバイフォレストに入るのであった。
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