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出発

「……主様。夜分に申し訳ございません。森厳騎士団からお手紙が届いています」


 蝋燭を持って主様に森厳騎士団に関してお伝えにきた。


「う…うん……?」


 目をゴシゴシとしてなんとかこちらにピントを合わせようとしてくる。


「森厳騎士団からお返事です。喜んで参加させてもらう、と」


「…わかった。準備は明日…いや今日?わかんないけど日が出たらやろう。まだ眠い……」


「……わかりました。ではまた起こしにきます」


「う………」


 うん、という言葉がぎりぎり出てこずに寝てしまった。


 まあいいか。私もかなり眠いし自室に戻って再度寝ることにしよう。


※※※


「主様、今朝の件ですが…」


 時刻は9時。私も主様も十分な睡眠が取れた…はず。主様はいいが、私は少し眠いかもしれない。


「あー、森厳騎士団だっけ。フィニの読み通り参加してくれるから非常に嬉しいよ。私たちもそろそろバイフォレストに向かったほうがいいのかな?」


「そうですね。ここからバイフォレストまでは約2日。そこからさらにタールウェグに行くには約3日かかります。なので開戦は約1週間後になるかと。現地活動班にもこのことは既に伝えてあり、タールウェグ近郊で合流する予定です。我々はバイフォレストで森厳騎士団と意思疎通を図るとともに、第三軍に一時的ではありますが参戦する兵たちを迎え入れます」


「わかった。荷物は?」


「寝巻きを持って行っていただければ。服はあるとかさばりますし、魔法で洗浄できるはずです」


「了解。準備が出来次第表に出るからそれまでにフィニも準備しといて」


「かしこまりました」


 私は既に準備を済ませてあるが、実は私の方が荷物が多い。副官であるため地図や水分、食料なども私持ちだし、私は小道具を重ねて戦う暗殺者なのでその小道具がかなり多い。これでも厳選したつもりだが軽く主様の荷物の4倍はありそうだ。といっても主様は小さなバッグに着替えが入っているだけといえばそうなのだが。


 私はそれらの荷物を外に持って行き馬の背に乗せ、紐で固定する。


「フィニー。あれ?今回は馬車じゃないの?」


「普通に考えてバイフォレストまで馬車で行って帰りはどうするのですか。もっといえばバイフォレストまでの最短経路は整備されていないので馬車は使えません。って、主様。失礼ながら馬は乗れますか?」


「い、一応。乗れはするぐらい」


「………それでは困りますね。しょうがないので私が先導します。主様が乗る馬には私の馬をついて来ればいいように指示しますから、主様はただ馬に乗っていればいいです。けれど、それなりのスピードを出しますからくれぐれも振り落とされないように」


「わ、分かった」


 主様は荷物を馬に軽く乗せ、杖は足を乗せる部分の近くに適当に紐で固定しておいた。


「では主様。念を押しますが絶対に手綱を離さないでください。絶対ですよ?」


「了解」


「それでは参ります」


 馬に手綱を強く当て、走るよう命令する。馬は手綱が自らの体に当たる強さでどのような行動をするべきかわかる。国によって違うが、アンドレ王国では弱く当てると歩き、強く当てると走るように調教されている。後は細かなバリエーションがあるが、まあ大抵の乗馬技術はこの2点を抑えられてれば十分だろう。



 パカパカと気持ちのいいリズムを刻みながら青空の下馬で走っていく。先ほども言ったが今はそれなりのスピードを出しているため体で風の音を感じる。


「フィニ…早くない?」


「早くしたいとおっしゃったのはあなたじゃないですか。一度スピードを落としますか?」


「い、いや大丈夫。私がちゃんとすればいいだけだから…」


「そんなに無理をしなくていいのに…」

 

 ぼそぼそと喋った私の言葉はその風の音でかき消されていく。



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