優秀な人
「主様ー、ふと思ったことなんですけど主様はどれだけ武力に関して自信がおありで?」
「ど、どんぐらいって言われてもなぁ…。なんでも使っていいならどっかの騎士団10人ぐらいならいけると思うけど」
「本当ですか?」
「多分。けど幹部の中では1番弱い自覚はあるよ。だって私以外全員武闘派だもん。頭脳派の私が勝てるわけがない」
「そうですか……。私は幹部の方々全員と剣を交えた経験がありますが、たしかに主様の実力では無理ですね」
「ちょっと。そこはお世辞でも1人ぐらいなら勝てるんじゃないですか?とか言ってよ」
声を真似てくる。地味に似てる。
「いやぁ……主様の魔法が効かない方とか居ますからね。竜鱗騎士団のドラクール様とか。あの方の鱗は物理的な魔法は一切を通しませんから。ほんっとに、2度と戦いたくないですよ……」
「そんなに?」
「はい。ドラクール様はあのご自身の皮膚が天然の甲冑のような感じなので硬いのにあまり重さがないんです。物理攻撃を主とする暗殺者にとっては1番戦いたくない相手ですね」
「フィニだったらどうやって仕留めるの?そういう物理攻撃が効かない相手って」
「動けなくして無効化するか、鱗の隙間を狙うかの2択ですね。前者だと小道具が必須ですけど、後者は後者で時間がかかるしそれなりに労力が必要ですね」
「なるほど。たしかに殺すことだけが勝利条件じゃないか。相手を動けなくする………あ」
「どうしました?」
主様の動きが止まり何か核心をついたかのような顔になる。
「いいこと思いついた。この相手を動けなくするっていうのは言い換えれば八方塞がりにするってことじゃん?」
うーん?動けなくするっていうのは物理的にだがまあいいか。
「そうですね」
「おそらくこれは都市とかに関してもいえて、何か重要な役割を担っている都市を使えなくするのは物理的に壊滅させるか、圧で行動を封印するっていう2パターンが考えられない?私たちが今やろうとしてるタールウェグに関しては前者、物理的な壊滅でタールウェグを落とすっていうのと人間側に危機感を与えようとしている」
「都市の機能を実質的に封印するには圧力を使うしかないよね。例えばそこが商業都市だったら他の都市に出荷するための旅客団とかを襲って他の都市に物資を共有できないようにする。そうすればその都市の商業都市という強みは潰れて、ただの影響力のない都市へと成り下がってくれる。どう?この考え方結構いいと思うんだけど」
「いいですね。いつかその作戦を使えるような時が来ればいいのですが……」
「今のところその目処はないか。でも案としては悪くないから執務室のメモ帳に残しておくね」
「了解です」
やっぱり主様は頭がいいんだなとしみじみ。王族は幼少期から英才教育を受けているがそれにしても主様は頭の切れがすごい。これはアンドレ王国の歴史を見てもこれほど優秀な人がいただろうか。
「こんな方の元に配属されて私もラッキーだな」
そう独り言をポツリとこぼした。
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