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物語の始まり

 衣装を着せたあと、予行練習を行いついに本番の時間となった。予行練習の時から衣装は似合っていたと思うし我ながらいい出来だ。そして何より、主人が気に入ってくれたことが一番の喜びだ。


「主様、そろそろお時間です」


「うん。わかった。フィニも見てくれるんだよね?」


「もちろんです。会場の端の方から見守っておりますよ」


「ありがとね。じゃあ私は行くね」


「いってらっしゃいませ」


 そう言って主人は控室から出て会場となる玉座の間へと向かった。私も主人が行ったのを確認し控室を出て玉座の間へ赴く。



 玉座の間に到着すると、既に大勢の者が集まっていた。全員が式典用の服を着ているが、どれも華やかでない。なぜならこの者達は主役ではないからだ。今回の式典には別に主役がいて、その者達を際立たせるように動く。それがこの貴族社会というものだ。



 では主役は誰か?



 キィーという鈍い音と共に玉座の間の扉が開く。そしてそこから入場してくるのは7人の英雄たち。


『魔王軍幹部』。それが彼らが共通して持っている称号だ。この国には6人の幹部とそれぞれが持つ4つの騎士団、そして2つの軍隊がある。それぞれの騎士団や軍の長は魔王軍幹部という身分を与えられる。シンプルな仕組みだ。わかりやすく単純。

 しかし、各幹部はそのようなわかりやすくもペラペラな仕組みとは違い全員がれっきとした軍人だ。全員が国家の盾であり矛であると自負している。


 そこに今日、新たな幹部が『加わる』。



 これまでの私の説明は半分正しいが半分間違っている。先ほど入場してきた人数は7人。6人ではない。しかし全員が魔王軍幹部という地位だ。つまりどういうことか。今日の式典は、新たな幹部が誕生すると共に新たな軍も作られる。増設されるのだ。


 先ほど入場してきた7人が玉座の目の前に立ち、全員が同じタイミングで片膝をつく。その一糸乱れぬ動きはいつ見ても感心してしまう。


 そして片膝を突いた瞬間ブワァっと青色の炎と共に人影が現れる。


「7人の幹部達よ、頭をあげよ」


 玉座に座るもの、国王様が声をかける。歳は魔族の中では一般的で、150歳を超えたところだ。しかし全盛期ということもありその威厳は保たれている。まさに国王にふさわしいお方だ。


「ヴィエラ・アンドレ。前へ」


 ヴィエラ様。私の主人にしてこの国の王女様。そのような者が今日この場の主役であり新たな幹部だ。


 ヴィエラ様が玉座の前で小さくお辞儀をし、国王から御言葉を賜る。


「ヴィエラ・アンドレ。其方を魔王軍幹部に任命し、第三軍の軍団長に任命する」


 魔王軍幹部の証となる指輪を国王様がヴィエラ様に渡す。


「この指輪に見合うよう、国家の盾として精一杯働かせていただきます」


「うむ。その言葉、忘れるでないぞ」


 よし。ここまでは予定通りだ。そしてここからまた入場門から退場するはず……。


「第三軍の長よ。其方の意気込みを一言群衆に聞かせてくれないか?」


 え、それは予定になかったはず……。国王様がアドリブを入れてくるとは…。いや、しかしこの程度の障壁は越えてもらわなければ従者としても面目が立たない。どうにかうまく答えてください…!


「私、ヴィエラ・アンドレの目標はただ一つです。この世から人間という種族を消し去り平和な世界を築くこと!それが魔王軍幹部としての責務だと信じています」


 会場にいた全員の視線が主様に集中する。国王様も、隣にいた他の幹部も、私も含めて。まるで時間が静止したかのような錯覚に陥るほどに。


 魔族全体の認識では人間という種族は極めて強大であり、魔族が束になったとしてもわずかではあるが人間の方が勝っていると思われている。そのため平和という未来は絶滅を前提としたものではなく講和という先にあるものだと心のどこかで思っていた。

 しかし我が主が掲げる目標はそんなものではなく真の平和だった。争う相手がいない、平和な世の中。それを実現させることがどれだけ大変なのかはわからない。

けれど私は第三軍軍団長の補佐であり、この国を支える『暗殺者』なのだ。


 いつかその目標が現実になるよう全力で努めなければ。


「そ、そうか。どうやら我々は実に頼もしい幹部を得たようだな。下がってよいぞ」


「ありがとうございます、陛下」


 そうして式典は終わり、私とヴィエラ様の人類絶滅までの物語は始まったのであった。




これからはここに感想などを書こうと思います。たまに暴走するかも……

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